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80代マダムたちに励まされ

節分の夜、帰宅した相方から、こんな話を聞いた。

ある日、私立学校をいくつも経営する財団の理事長を務めている85歳のご婦人が、老人ホームや私立の職業訓練校を経営している72歳のご婦人に、「あなたはまだ若くていいわね。私がもしあなたの年だったら、今よりもっとたくさん仕事ややりたいことをすると思うわ。若い内にたくさん働いてね」と言ったそうだ。

相方は72歳のご婦人から、その話を聞いたという。

先月誕生日を迎え40までのカウントダウンが始まった私は、85歳のご婦人の言葉に、うなだれていた背中をバシッと叩かれたような気がした。

なぜなら私は年明けからずっと、いや、3年前の出産からずっと、体力や気力が随分落ちてしまったことを実感すると共に、「今から何か新しいことや中断していたことを始めたって、もういろいろと手遅れなんだわ」と弱気になり、がっくりと肩を落としていたからだ。

このご婦人たちの話を聞いた後、フランスの、あるマダムの言葉を思い出した。それは、作家の辻仁成さんが主宰するウェブマガジン「Design Stories」に掲載された、フランス在住のバヤッド玲子さんのエッセイ「大家さんと私のフレンチ寺子屋」に登場したマダムのひと言だった。

バヤッド玲子さんは2018年に家族でフランスへ移住。2020年、ロックダウンの最中にやっと見つけた新居で、同じ敷地内に暮らす80代の家主夫婦と親しくなり、ある日こんなことを言われたのだという。

夏のある日、マダムがやってきて私に言った。
「ところで、あなた日中も家にいるけど働いてるの? 日本にいた時は何をしていたの? とりあえず、CV(履歴書)見せて」
なかなか返事が返せなかった。拙いフランス語のせいじゃない。自分が何者かをちゃんと伝えられない。
「まだ40代、喋れないからって留ってるなんてもったいない。やりたい事をやりなさい。フランス語の勉強ももっとやって」
お節介マダム。でも久々にパーンと脳みそと心をはたかれたような、痛快な喝。(中略)
2度目のロックダウンを機に、私はマダムからフランス語を習い始めた。

久々にこのエッセイを読み返し、私は再び80代のマダムに、バシッと背中を叩かれたような気になった。

だからって、中断していたことを今すぐ再開したり、生活を大きく変えたりすることは難しい状況なのだが、今暮らしている韓国で、もっと自分らしく生きられるように。やりたいことを自由にやれるようになるために。今できることから少しずつでも始めようと、あらためて思った節分の夜。

明日、2月3日は「立春」。二十四節気(紀元前の中国で生まれた太陽の動きに基づいた暦)では春の始まりであり、1年の始まりとされる日らしい。

新たな始まりを迎える前に、熱いハートを持ち続ける80代の女性たちの言葉に触れられたこと。それはもしかすると「未来の自分からの励まし」が、時空を超えて届いちゃったのかも...なんて!

がんばれ私。諦めるには、まだ早い。




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