見出し画像

運動イメージを臨床へ

麻痺側の動かせない理由は様々で、最も考えやすいのか「運動単位の動員の異常」です。

いわゆる、随意性の低下や筋力低下のことです。

急性機の段階では、この問題が多いのかもしれませんが、回復期や維持機では症状が安定し、そこではない問題が多く混在してきます。

※正直、1年経過しなければ症状は安定しません。

それ以外の問題として本日は「運動イメージの損失」に着目してお話しさせて頂きます。

運動イメージとは?

【運動イメージの定義】
↪︎明確な運動行動の表現が一切の運動表出を伴わずわにワーキングメモリー内で内的に再活性された動的な状態である

つまり、「手をあげる」という動きに対して、肩の関節の動く感覚や、体重の移動など、外部からの感覚入力が存在しない状態でも、記憶や予測される運動感覚に基づいて運動を想起することができます。

なぜ、この過程が必要なのか。

脳卒中患者に対しての運動イメージの必要性

運動麻痺を呈した脳卒中患者の異常な運動パターンが表出されるということは、『期待される運動感覚に基づいて運動イメージが想起できない、また行為が予測制御できないという病態』を呈していると考えることができます。

そう考えた時、運動イメージは運動実行直前までの脳内における予測に伴う心的情報処理過程であり、運動実行と類似した運動関連領域の神経機構が賦活されると考えられます。

脳卒中患者が運動を学習する際には、『運動発現前の脳内の予測(遠心性コピー)と実際の運動による感覚フィードバックの照合が不可欠であり、運動イメージは運動発現前の予測を意識化させる』のに有効です。

その為にセラピストが観察しなければいけない点を挙げます。

 視覚イメージと運動イメージを区別できるか

 運動イメージを麻痺側と非麻痺側で比較する事が可能か

 運動イメージの早期により異常な運動パターンを制御する事が可能か

たとえば…
麻痺側の異常な運動パターンを非麻痺側で再生させることで、麻痺側で生成された運動イメージに対する患者の自覚を評価する事が可能

 認識可能な感覚な感覚の1つを予測(運動イメージ)させ、セラピストによる感覚フィードバックとの比較/照合作業を求め、患者が適切に運動をイメージできるかを評価

臨床への考え方

臨床的には、麻痺側と非麻痺側における実際の運動実行と心的な運動実行との時間が一致しているか否かを評価する事で、麻痺側における運動イメージの正確性を把握しておく必要があります。

つまり、運動イメージの正確性が比較的保たれていると判断できれば、『運動発現に向けた筋収縮を伴う課題設定』を考慮すればいいことになります。

逆に、運動イメージの正確性が損なわれていると判断できれば、

頭頂連合野を中心とする体性感覚情報に適切に注意を向け、それを認識する情報処理過程に問題があるのか

前頭連合野を中心とする認識した体性感覚情報から運動実行に必要な筋感覚を想起する情報処理過程に問題があったのか

といった視点で、脳卒中患者の脳の情報処理能力を観察していく事が重要です。

おわりに

このように、イメージさせた運動と実際の感覚の比較/照合により運動前野/補足運動野/小脳といった運動イメージと、頭頂連合野といった感覚フィードバックに関与する情報処理過程の関係性を評価していくことが、『根本的な問題の解決』に繋がると考えます。

また、運動イメージという遠心性コピー情報を評価し観察することは、運動を意識化させるだけでなく、感覚フィードバックと照合させることへの気づきを生じさせることになり、運動の学習には必要不可欠な過程であることをセラピストは把握しておく必要があると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?