臨床の思考(歩行と半側空間無視の関係)
「左足が動かないんだよね」
症例(以下A氏)は特に麻痺症状が無く、早期退院になったそうですが、自宅での転倒が多く、左足を引きずりながら屋内を伝え、もしくは杖を使って歩いている方でした。
何が問題で、A氏は左足を引きずるようになったのでしょうか。
右半球損傷により失われる機能
右半球損傷を呈した方に対して、まずは「左半側空間無視」を疑うと思います。
この半側空間無視症状に対して、臨床では机上の検査(BIT)だけで評価をすませてしまう方が多いですが、右半球損傷による半側空間無視が出ない方は稀です。
根本的な問題に至ってないケースも多いですが、何かしらの麻痺症状を認める方に対してはこの「左半側空間無視」は存在します。
なぜ、臨床ではこの症状を見落としてしまうのか。
一つは「左半側空間無視」を視覚情報の変質(左側が見えていない)と考えてしまうパターンです。
右半球損傷による症状を以下にまとめます。
【右半球損傷による失われる機能】
▶︎ これまで空間で行っていた経験
☑︎ 自己中心座標
↪︎ 自分の中心の基準が空間を構築する
☑︎ 物体中心座標
↪︎ 物体に対しての自己の空間を構築する
▶︎ 空間処理と右半球の関係
☑︎ 空間に対しての言語の概念と実際の運動
☑︎ 身体運動における情報交換
☑︎ 物体操作における情報交換
▶︎ 言語で見られる問題
☑︎ 空間の言語の消失
☑︎ 身体における言語の辻褄合わせ
視覚的な要素より、自分があってその空間があると言う認識が崩れることが最も右半球損傷では見られる症状です。
視覚的にも左への注意が向かない症例も多いと思いますが、自分の基準や物体を含んだ空間の情報処理が困難になる方が圧倒的に多いです。
むしろ、ここを解決すればかなり動きが良くなります。
ただ、その介入が全くされていなかったり、「麻痺がない/机上検査も問題ない」ケースが退院すると、A氏のような自宅に帰ってからどんどん悪くなった…パターンになってしまいます。
A氏が抱えた問題点
なぜ、彼は運動麻痺や感覚障害がないのにも関わらず、左足を引きずるのか。
引きずっていることにも気づけているのに…
1つは、左足という概念はあるが、空間と身体との統合ができず、右足だけで処理しようとした結果、左足が遅れてしまっていることが考えられます。
左側への空間がわからない為、着座の場面でも左足は正中軸よりかなり離れた状態でも、右足と右手でどうにか座る、などの動きが見られました。
この場合、どのような訓練を選択すればいいのでしょうか??
▶︎左足を振り出すための筋を促通させる?
▶︎鏡を使って身体のズレを認識させる?
▶︎視覚で代償させて、左足の遅れを常に注意するよう指導する?
どれもその場しのぎです。
方法は様々ですが、1つは以前紹介した両足の行為がこれに当てはまります。
右足を基準に左足の位置関係を構築すればいいだけです。
その際、空間で学習を進めると、空間で空間を作るというなかなかややこしいことが起きるので、接触情報を基準に、足裏に接触させたなにか細長いもの(認知神経ならカーペットを使用)を真っ直ぐなのか、斜めなのか、それを分かったのは何故か、なにを基準にしているのかまで落とし込めれば、行為の変化は容易です。
この中に、上肢や体幹が合わせることで、より細分化された行為を獲得できます。
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