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ぶん回し歩行を運動学で考える

軽い麻痺の方でも、代償動作として出やすい「ぶん回し歩行」は人によって様々な要因で起きます。

本日は、ぶん回しの代償方法を上半身と運動学の視点を考えて説明していきます。

当事者とそのご家族に向けて投稿します。

ぶん回し歩行とは?

片麻痺患者の歩行では…

麻痺側の股関節を外側に広げて、足で床に縁を描くように足を降り出す

ことを専門的にぶん回し歩行と言います。

このぶん回し歩行は、見た目は殆ど変わりませんが、細かく分析すると、人それぞれで方法が異なります。

本日は、体幹の使い方からわかる3つのパターンを紹介します。

❶ 腸肋筋によるぶん回し歩行

 ※ 上記のリンクは筋肉のことが分かりやすく記載されています。

腸肋筋は骨盤から背中に付着している筋肉で…

ができます。

この場合、片麻痺患者は麻痺側下肢を降り出す時は…

『麻痺側の腸肋筋を使って骨盤を引き上げる』

ことで、ぶん回し歩行を行います。

❷ 腰方形筋によるぶん回し歩行

※ 上記のリンクは筋肉のことが分かりやすく記載されています。

腰方形筋は、骨盤から肋骨(第12)に付着している筋で…

ができます。

この場合、片麻痺患者は麻痺側下肢を降り出す時は…

『麻痺側の腰方形筋を使って骨盤を引き上げる』

ことで、ぶん回し歩行を行います。

腸肋筋と違うのは「胸の辺りが下方に動かない」ことです。

それ以外の作用は、ほとんど一緒です。

※ 胸郭の下制は起きない

❸ 広背筋下部繊維によるぶん回し歩行

※ 上記のリンクは筋肉のことが分かりやすく記載されています。

広背筋は、骨盤から肩甲骨に付着している筋で…

ことができます。

この場合、片麻痺患者は麻痺側下肢を降り出す時は…

『麻痺側の広背筋を使って、麻痺側上肢を
背中の方に引き込みつつ、骨盤を引き上げる』

ことでぶん回し歩行を行います。

これらの代償は2つの筋肉の筋緊張が低下することで起こる

ここまではぶん回し方向の3パターンを説明しましたが、そもそも、なぜそのような代償パターンが出現するのでしょうか?

ご存知かも知れませんが、脳卒中後遺症により出現する症状に「運動麻痺」というものがあります。

※ 詳しくはこちらをご参照下さい。

運動麻痺は、簡単に言うと『使いたい筋肉に命令を送れない状態』を言います。

ぶん回し歩行は、脳から足を降り出す時に必要な筋肉に命令を送ることが出来ないことで出現します。

その筋肉が…

腸腰筋(大腰筋/小腰筋/腸骨筋)

多裂筋

と呼ばれる筋肉です。

どちらもリハビリをした方が良いですが、ぶん回し歩行のパターンが分かれば、そこを中心にリハビリを行えば、より早い段階で効果が出ると思います。

次に、この腸腰筋と多裂筋の運動麻痺に伴う見分け方を説明します。

腸腰筋の筋緊張が低下している方の見分け方

腸腰筋の筋緊張が低下していると…

歩行の時に、麻痺側で支える段階では股関節は伸ばす方向に働き、麻痺側を一歩前に出す段階では、股関節を伸ばす反応から曲げる反応に切り替えます。

その時、股関節を伸ばす反応にブレーキをかけて、曲げる方向に股関節を動かす筋肉が「腸腰筋」です。

しかし、腸腰筋に運動麻痺が生じると、股関節を伸ばす方向に対して、ブレーキを掛ける事が出来なくなり、股関節を曲げる方向に動かせなくなります。

その結果…
腰椎を麻痺側に傾けて(腸肋筋)、骨盤を持ち上げる(腰方形筋)』方法で麻痺側を前に振り出します。

なので、腸腰筋の筋緊張の低下に伴うぶん回し歩行の見分け方は…

上半身を非麻痺側に傾け、骨盤を持ち上げる方法で脚を振り出す

パターンの方は、腸腰筋の運動麻痺に対してリハビリが必要になります。

多裂筋の筋緊張が低下している方の見分け方

多裂筋の筋緊張が低下していると…

歩行の際に、腰を伸ばす反応や、骨盤を前傾させる反応が乏しくなり、前傾姿勢になります。その状態では、脚を振り出す為に必要な股関節を曲げるスペースが狭くなり、脚を前に出せなくなります。

脚を前に出す為に、肩関節〜骨盤についている広背筋と呼ばれる筋肉を使って麻痺側肩関節と肩甲骨を背中の方に引き込ませることで、振り出すスペースを作ります。

その結果、
身体は麻痺側に捻じりつつ、骨盤を持ち上げる』方法で麻痺側を前に振り出します。

なので、多裂筋の筋緊張の低下に伴うぶん回し歩行の見分け方は…

麻痺側の上半身を背中の方に引き込み、骨盤を持ち上げる方法で脚を振り出す

パターンの方は、多裂筋の運動麻痺に対してリハビリが必要になります。

おわりに

ぶん回し歩行には、3種類のパターンがあり、それぞれ代償しやすい筋肉と、運動麻痺の影響を受けている筋肉がある事が分かったと思います。

代償している筋肉は硬くなりやすく、運動麻痺の影響を受けている筋肉は働かせにくいです。

次回は…

☑︎ 代償している筋肉の緩め方

☑︎ 運動麻痺を受けている筋肉の使い方

を紹介します。

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