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左片麻痺の世界(麻痺側と世界の関係が崩れる)

右片麻痺と左片麻痺では何が違うのか。

代表的なものが「半側空間無視」です。

「自分は大丈夫、左側もしっかり見えている」とおっしゃる方は多いですが、私が臨床で経験した左片麻痺を呈している方の殆どは、右半球損傷に伴う「何らかの半側空間無視に起因する問題」を認めます。

左片麻痺は、単純に左側が見えにくくなるわけでは無く「世界と自分の左側がかみ合わなくなる」ことが問題になります。

このかみ合わないものが「目で見る情報(視覚)」が本人ではなく他者から発見しやすい為、「半側空間無視」と呼ばれる反対側が視覚的に認識できない症状と、捉えてしまう方が多いです。

この記事では、「左片麻痺の後遺症を回復させる為の知識」を当事者とその家族に向けて解説させて頂きます。

はじめに

右麻痺と左麻痺は症状が全く異なります。

「腕が動かし難い/足首が動かない/ものが持てない」など…

運動麻痺と呼ばれる問題はそれほど変わりはありませんが、右麻痺の身体が動かし難い原因と、左麻痺の身体が動かし難い原因は異なります。

なぜなら、右半球(左側を司る脳)と左半球(右側を司る脳)は役割は違うからです。

その違いを左片麻痺を中心に説明します。

自分の身体と世界の関係を構築できない

外向性と内向性という言葉があります。

左片麻痺では外向性が強まる傾向が強く、目に見える情報に固執することが非常に多いです。

そもそも、人は自分の身体にいくつもの基準を作り、その基準を元に外部世界と自分自身との関係を作ります。

例えば、机にコップを置き、目を閉じた状態で右手を使ってコップを取ってみて下さい。用意に取ることが出来ると思います。

なぜ、目を閉じた状態でこれが出来るのでしょうか。

答えは、コップ(外部世界)と自分自身(右手)の関係を脳の中で構築してくれたおかげです。

この構築とは…

自分とコップとの距離を肩関節の方向、肘関節の距離、前腕/手首/指でのコップの形状に合わせた形、など、無意識の間に、コップを持つ為に必要な自分の身体へ注意を向ける」ことを意味します。

しかし、左片麻痺では、コップと自分の必要な身体への注意を向ける事ができません。

なぜなら、自分自身の注意は向きにくく、外部環境の情報しか脳に行かず、やりたい動作自体には脳から手に命令を送れない、もしくは、身体のどこに注意を向けていいのかが分からなくなります。

これが左片麻痺の病態です。

左片麻痺は左側のすべてに情報に意識が向いていないと考える

左片麻痺は外部世界の左側を無視し、自分が無視していることを知らない状態です。

ここまでは大げさですが、自分が気づけていないことに気づけていないという問題はかなり深刻に捉えてください。

左半身が上手く動かせないのは「筋肉が足りないせい、体力が足りないせい、しびれているせい」と考える方は多いですが、脳卒中後遺症は脳が問題です。

細かく言うと、「右半球」の領域の脳の問題です。

右半球損傷に伴う左片麻痺の病態を理解しなければ良くなるものも改善しません。

それを打破する為にも、まずは『麻痺側上下肢-体幹は注意しにくい』ことを自覚しなければいけません。

どの関節が意識しにくいのか、動かし難いのか、どの方向が動かせないのか、または動くのか、など、試行錯誤の中に回復の糸口があります。

そこが前提にあって初めて自主トレが生きてきます。

要点のまとめ

まずは自分の傾きを知れ

左片麻痺を呈している利用者様で姿勢の偏りが無い方は1人も見たことはありません。

そもそも、後遺症が無い時でも左右対称の方はいないでしょう。

しかし、左片麻痺を呈している方は例外なく「右側への姿勢の偏り」が見られます。

なぜなら、左半身で外部環境の情報を構築することが苦手なので、全て右側で済ませてしまおうと、脳の中で勝手にプログラムされているからです。

これを解消させる為にも、この傾きを座位姿勢から修正する方法をお伝えします。

傾きの改善が回復のスタートライン:自主トレ編

① 状態チェック

まず、座った姿勢からお尻の重心を左右に移動して、身体の状態をチェックします。

この時…

など、身体の状態をチェックします。

脳からお尻に指令が届いていないと、お尻に力は入らず、フニャフニャしたり、骨ばってしまうはずです。

このような状態が自主トレ後に無くなれば、行った自主トレは上手くいった証拠です。

② 動きにくい原因を探す

次は左右の違いを通して原因を確認します。

まずは、麻痺側で感覚チェックです。

この時、外側に入っていると麻痺側にうまく体重が移動出来ていない証拠です。

次に非麻痺側でも感覚チェックです。

など、人によって分かる感じは違うと思いますが、非麻痺側と麻痺側では、何が違うか、体重の乗せ方はどうなのかを左右比較して確認します。

③実践

非麻痺側のお尻と足の感覚に意識を向けて、その感覚をカタカナであらわしてみましょう。

私の場合、お尻の内側にあるグリグリが「グ〜ッ」となりながら、内ももの内側に「ジワ〜ッ」と体重が載る感覚があります。

次に、太ももの内側から外側へ広がっていくので「ベタ〜」ではなく、
「ジワ〜ッ」という擬音がしっくりきます。

つなげると…
☑︎お尻は「グ〜ッ」
☑︎ふとももは「ジワ〜ッ」
という感じです。

このカタカナに正解はありません。
ご自身のしっくりくる感覚を大切にして下さい。

その感覚が分かったらそれを麻痺側でも再現します。

私の場合なら、お尻に「グ〜ッ」を意識して、その後に太ももに「ジワ〜ッ」と体重を乗せてみます。

お尻の内側にあるグリグリした骨が「グ〜ッ」となることを意識しながら、太ももの内側から「ジワ〜ッ」と体重が乗っていき、太ももの内側から外側に「ジワ〜ッ」と広がっていくのを意識しましょう。

④リハビリ後のチェック

最後にリハビリ前と状態の比較をしましょう。

という状態であれば、上手くいっている証拠です。

続けていきましょう。

最後に

脳卒中後遺症は改善します。

何度でも言いますが「脳卒中後遺症は死なない限り改善」します。

不自由な身体に嫌気を指すのは当然です。

諦める方も多いと思います。

ただ、知ってほしいのは「脳卒中後遺症は改善」するということです。

改善する為には、正しい知識と方法を知る必要があります。

1人でも多くの方に、この記事を読んで頂き、回復する為の手助けになることを祈っています。



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