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手のROM治療【浮腫手】

脳卒中後の浮腫は、筋肉の収縮が阻害されることによって筋ポンプ作用が欠如し、静脈およびリンパ還流が低下する事が主な原因とされています。

特に、浮腫は拘縮を引き起こす可能性が高く、上肢機能の回復の阻害因子とされます。

本日は、浮腫手の改善に向けての知識と介入ポイントを説明致します。

浮腫手を起因とする拘縮

骨格筋の伸張性は、筋膜の主要構成成分であるコラーゲン繊維の線維網(網目状)の配列変化によって生み出されます。

骨格筋が弛緩するとコラーゲン繊維は様々な方向へ走行し、伸張の際には伸張方向にほぼ平行となります。

しかし、水/糖質/アミノ酸/ミネラル類などの骨格筋は線維化を呈し、コラーゲン繊維の配列変化が円滑に行えなくなります。

つまり、浮腫が存在する時期に骨格筋の伸張性や柔軟性は低下し、拘縮が発生しやすいです。
 
また、浮腫が軽減されている時期には重度の拘縮を呈している場合が多い事から、浮腫が拘縮の発生初期段階に大きく影響を及ぼしていると考えられています。

したがって、発症初期の段階から関節周囲軟部組織の伸張性や柔軟性を改善し、筋ポンプ作用の促通と可動域の確保を図ることが重要です。

浮腫手の解剖学的解釈

疎性結合組織で満たされている手指の皮下腔/伸筋腱下腔に浮腫が貯留すると、手背の皮膚および、伸筋腱が緊張し、球関節であるMP関節は過伸展します。
 
その為、指屈筋腱は緊張され、可動性に大きいPIP関節は掌屈傾向をとり、鉤爪様変形になります。

これらの事が起因となり深部軟部組織(関節内/関節包/関節靭帯/筋/腱)には瘢痕癒着が起こると以下の問題が生じます。

① MP関節伸展拘縮
② PIP関節伸展/掌屈合併拘縮
③ 母指内転拘縮
④ MP関節伸展では総指伸筋/側腹靭帯の持続 的な緊張から、虫様筋/骨間筋の弾力性低下と指背腱膜のバランス障害
⑤ 深横中手靭帯の短縮
⑥ Wing tendonと基節骨の癒着
⑦ 掌副靭帯軟骨板の癒着瘢痕
⑧ 浅/深指屈筋の瘢痕
⑨ 母指内転筋の収縮から中手骨間の可動性低下

手の介入ポイント

以下、手指の介入ポイントを挙げます。

☑︎ 筋長、筋/骨のアライメント、皮膚/筋の粘弾性など、変位した上肢の構造をできる限り修正し、様々な対象物に適合する手の構造へと改善する。

☑︎ 手/上肢の活動に協応した姿勢コントロールおよび筋連結を再構築する。

☑︎ ハンドリングでは、運動の方向/量/タイミング/スピードが予期しやすいように明確に伝え、対象者がセラピストの誘導に追随できているかどうか確認しながら進める。

☑︎ アクティビティや道具操作などを利用しながら、運動行動がイメージしやすい治療場面を設定し、対象者の表情や言動、持続性等の変化を確認する。

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