片麻痺の亜脱臼【アームスリングは悪影響??】
片麻痺の亜脱臼の治療として、まず思い浮かぶのが三角巾やアームスリングと呼ばれる「上肢を固定する道具」だと思います。
しかし、本当に使用するメリットがあるのかを考えてみましょう。
アームスリングで亜脱臼は軽減しない
スリングを必要性がないと主張する研究者の技術を以下に挙げます。
Hurdらは『スリングを用いて治療した群と、用いなかった群を比較し、両群間に関節可動域、痛み、亜脱臼の点で明らかな相違は認められなかった』と報告している。
friedlandは『スリングによってそういった変形を予防、改善、治療あるいは軽減することがないので、亜脱臼を防ぐ、あるいは矯正するために痛みが生じていない肩をスリング指示する必要はない』とする報告に同意している。
shephersは『レントゲンを用いた研究で有効と判定されたスリングは見当たらない』と強く主張している。
アームスリングの悪影響(6つの悪影響)
Semansはスリングの悪影響について、「スリングで腕を身体に縛りつけることで」以下のような事が生じつと述べています。
☑︎ 病識欠如や身体運動全体からの機能的な解離を助長する
☑︎ 腕の(屈筋)痙性パターンを強める
☑︎ 寝返りを打つ、椅子から立ち上がる、麻痺側の手でものを固定し非麻痺側の手で行うなど、腕を使って姿勢を調節したり支えたりする事ができなくなる
☑︎ 歩行指導時に、代償的な腕の振りを防止し、麻痺側から誘導しにくくなる
☑︎ 識別力のある外受容器と固有受容器からの入力が失われるので、脊髄視床路の入力が不均衡になり、そのため知覚過敏が生じる
☑︎ 動かさないことから静脈うっ血とリンパうっ滞が発生しやすくなる
加えて、Taubが述べている「使わないことの学習」が容易に進行します。
まとめ
ネガティブな要素しか記載されておらず不安を煽るような記述ばかりでしたが、結論を言うと
「別に肩を支えるものを使わなくても正しい操作とポジショニングが出来れば問題にならないよ」
と伝えたいのだと思います。
実際に管理できずにぶら下げたまま(高次脳機能障害が強いなど)できると、関節包や靭帯に伸張がかかり、肩の随意的な働きが起こしにくくなる場合も容易に想定できます。
しかし、文献ベースで見るとスリングをしなくてもしても、有意差がなく、むしろつけることの悪影響を考えると、今一度、スリングをつける必要を考え直す必要があると思います。
今だと、吊るす式ではなく、肩だけを保護し、肘の伸展位を作るスリングもありますので、そちらも参考にして頂ければ幸いです。
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