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地獄を見てるのかと思った(7)

突然の内定取り消しから一か月。
あたしの状況は全く変わっていない。

気づいたことがある。

この一か月、ネット、ハローワーク、使えるものは使って就活をしていた。
コンビニ、清掃、スーパーのレジ係、新聞配達
俗に「誰でも出来る」と言われている仕事は、ろう者であると断られてしまうということ。

こうなってしまっては手も足も出ない。
アルバイトで食いつなぐという方法は、ろう者であるあたしには到底難しいということが分かった。

これはどうにかして、正社員、もしくは契約社員のような形をとる就労形態を選ばないとどうしたって「仕事を得る」ということは難しい。

もうひとつの気づきは

障害者雇用求人を出すも「聴覚障害がある」と話すと面接すらできない企業が存在するということ。
2021年3月1日から法定雇用率が2.3%に引き上げられ、対象となる事業主の範囲は43.5人以上となった。
そのため、従業員43.5人以上45.5人未満の事業主は障害者雇用率をすこしでも上げようとしているのか
ハローワークを見ると障害者雇用の求人は三年前に転職活動をしていたときよりも増えていた。

おそらく考えが甘いのだろう。

それまで障害者雇用に関して考えもしていなかった事業主の「障害者像」というのは、音声の日本語でしゃべることが出来て、自分の言っている音声をすぐに理解し業務を遂行できるものであって

その範囲に聴覚障害者は含まれていないようだった。


ハローワークで印刷してもらった求人表に、観光局の障害者雇用でパソコンや事務仕事の求人があった。

あたしは
電話は難しいがメールやリレーサービスによる通話は可能であることを伝え、ハローワークの職員に「ここに応募したい」と伝えた。

職員は電話を取り、観光局に問い合わせを始めた。
ひとしきり話をし電話を切った職員は
紙にペンを走らせる。

《海飯観光局は応募はできませんでした。耳が聞こえない方が業務をしてもらうイメージがわかないとのことでした。》

イメージ?
そんなことイメージできずに
…障害者雇用求人…する?

この事業主は障害者雇用をなんだと思っているのだろうか。


この後どんなやり取りをしたのかは覚えていない。

《私の方で求人を準備したので、こちら見ていただければと思います》と職員はつづけ、私はその求人に問い合わせをしてもらい履歴書と職歴書を送るようという指示を会社から受け

ハローワークを後にした。

すっかり日が落ちるのが早くなり
見とれてしまうほど紅い夕陽に向かってこぼれる涙をそのままにあたしは車を走らせた。







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