見出し画像

タレントプールの詳細な定義と個々のアプローチ方法

企業側の採用手法においてダイレクトスカウトなどのダイレクトリクルーティングや、従業員からの知人紹介などのリファラル採用が注目されています。どちらも選考に進んでもらうためには企業側からの継続的なアプローチが必要になってきますが、それを実現するためにはまずタレントプールとして候補者の情報を管理することが重要だと思います。

僕が採用を行う中で具体的に取り組んだ内容を踏まえて、タレントプールの運用や活用をノウハウとしてまとめます。

一般的なタレントプールの定義について

タレントプールで検索するといろんなページが出てくるのですが、シンプルで分かりやすいものを抜粋します。

将来的に採用する可能性がある候補者をリスト管理しておくことで、採用枠が空いたタイミングや候補者が転職を考えはじめたタイミングで応募を促します。

以下は引用元記事です。

ただ実際にタレントプールを始める際、どのような人を対象に含めるのかや、それぞれのアプローチはどうやるかを最初からイメージするのは難しいかと思います。

僕のタレントプールの具体的な定義について

以下のような経緯のある人をタレントプールに加えるようにしていました。

1. カジュアル面談で興味を持ってくれた人
2. 内定後に辞退した人
3. 最終選考フェーズでお見送りした人
4. 勉強会等で接触かつ、かなり話し込んだ人
5. 仕事内容について詳細を把握している知人

それぞれの詳細な定義と、活用(アプローチ)の仕方について書いていきます。

1. カジュアル面談で興味を持ってくれた人

[定義]
ダイレクトスカウトなどでカジュアル面談に来てもらった後、すぐには選考に進まない人達です。
パターンとしては、転職活動本格化前に他社も広く見ている途中のケースや、スカウトにピンポイントで反応してくれたけどまだ転職をするつもりはないケースなどがあります。

[アプローチ]
候補者が転職活動を本格化するタイミング(選考を始めるフェーズ)になった際に自社が漏れないようにすることが重要です。アプローチを途切れず取り続けることで、面談時のイメージが薄れてしまうことや、「今更選考したいと言い出しにくいな」ということを避けることが出来ます。
まずはカジュアル面談の1週間後に転職に関する活動状況をヒアリングします。その後は活動の様子を見て2週~1ヶ月毎にコミュニケーションを続けましょう。

自社の話だけに固執しないで他の会社の印象や迷っている事について聞いたり、一個人としてコミュニケーションをするほうが良いと思います。間違っても他社のネガティブな情報などは吹き込まないほうが良いです。

2. 内定後に辞退した人

[定義]
自社から内定を出した後に他社で決まってしまったり、現職の引き止めで残ってしまった人達です。内定辞退により選考は一旦終了するので、引き続きコミュニケーションを取っても良いかどうかを本人や仲介エージェントに必ず確認を取るようにしてください。

[アプローチ]
候補者が次回の転職活動を考えたタイミングで真っ先に検討対象に入れてもらえる関係性を築いておくことが中心になります。新しい転職先で活躍してもらえているほうが自社採用時のメリットが大きくなるので、活躍していることをポジティブに伝えて決してネガティブなニュアンスを含めないように注意します。
他社入社日もしくは辞退の3ヶ月or半年後に最初のアプローチを行います。現在の仕事内容や一緒に働くメンバーの雰囲気などをヒアリングします。他社で決まってしまった場合は本当の辞退理由をこのタイミングで聞くと答えてもらいやすいです。
その後は年度や四半期の変わり目など、自社の組織やサービスなどにアップデートがあったタイミングでお互いの情報を交換するようなコミュニケーションを定期的に行います。勉強会や自社イベントなど他の参加者も居るようなオープンな場にお呼びしてコミュニケーションするのも参加しやすいので良いと思います。

直接的に転職を促したりアピールをしなくても関係性さえ出来てさえいれば、まず検討はしてもらえると思うので焦らずじっくりコミュニケーションしましょう。

3. 最終選考フェーズでお見送りした人

[定義]
選考フェーズの後半でスキルや経験が合わなかったり、現在のチーム環境にマッチせず選考から落としてしまった人達です。見送った理由を本人に具体的に話せるほど選考を通して良好な関係が築けている場合に限定したほうが良いです。内定辞退と同じように選考は終了なので、引き続きコミュニケーションを取っても良いかどうかを本人や仲介エージェントに必ず確認を取るようにしてください。

[アプローチ]
選考後の仕事や経験を通して選考時にマッチしなかった部分が変わったり、自社側の状況が変わってマッチすることをお互いに情報交換しておいて、次回の転職検討に繋げてもらうことが目的です。
選考後6ヶ月~1年など選考について記憶が薄れるぐらい十分な期間を空けた後に最初のアプローチをします。その後の仕事内容や自社の組織やサービスの近況について情報交換をします。直近開催するイベントなどがあれば誘ってみて懇親会で話をするのも良いと思います。
その後も間隔は長めで良いので定期的に情報交換をするようにしておきます。


4. 勉強会等で接触&かなり話し込んだ人

[定義]
勉強会やカンファレンスイベントの懇親会などで接触して、~30分ぐらい話し込んだ人を対象にします。交換した名刺の情報以外に、イベントへ参加した理由や現在どのような仕事をしているのかなどが聞けるとその後のアプローチが非常に楽です。

[アプローチ]
採用目的で会話したわけではないので急いで人事に繋げたり面談を組んだりせず、実際に話した人を中心として徐々に接触するメンバーを増やすようなアプローチを取ります。
まずは接触した人からイベント後にSNSなどで繋がってもらい、簡単に挨拶だけしておいてもらいます。
その後は自社で開催するイベントや類似するイベントがあるタイミングで参加しないか誘ってもらいます。一緒に参加したイベントの懇親会などで他のメンバーも入れて話をして関係を深めながら、徐々に人事や責任者など一緒に働く人達とのコミュニケーションにつなげていきます。

基本的にはイベントで出会った人は、イベントを使って更にコミュニケーションを深めるようにしたほうが良いと思っています。

5. 仕事内容について詳細を把握している知人

[定義]
メンバーの知人のうち、現職の仕事内容についてメンバーがヒアリングして把握できている知人のみを対象とします。転職意向度合いなどはあまり重要視しなくて問題ありません。

[アプローチ]
形式的な面談や面接は避け、ランチや飲み会などのコミュニケーションを行い、お互いの理解を深めるアプローチを取ります。
まずはメンバーからヒアリングを兼ねてランチや飲み会を設定してもらい現在の業務内容や自社の業務内容や状況などを情報交換するようにします。
その後は徐々にメンバーを増やしつつ、人事や責任者など一緒に働く人達とのコミュニケーションにつなげていきます。

注意点なのですが選考に合格(内定)することが確信出来るまで選考を匂わせないことです。一番まずいのは選考に入った後に落としてしまうことです。紹介してくれたメンバーと知人の関係性や紹介可能な母集団へ大きな悪影響を与えてしまいます。面接しなくても内定を出せる程度までコミュニケーションを重ねましょう。

採用に繋げるのが難しいタレントプールの定義

採用媒体や幾つかの採用管理システムがタレントプールを機能として備えている場合、タレントプールの定義に含まれるモノが他にもあるのですが、いくつかは採用に繋げるのが難しいなと感じるものもあります。

例としてあげます
* 企業からの情報発信をOKしてくれた人(フォロー, ファン, ML登録など)
* 過去の勉強会イベント等の参加者

相手のデータが少ないのでアプローチの中身が薄くなりがちです。またリスト上にそういった人が混ざってしまうと管理が煩雑になってしまいます。本質的なタレントプールとは別物として捉えたほうが良いと思います。

個人情報保護の観点から不採用者の情報管理

不採用や選考辞退された方へその後のアプローチをする場合、選考時に収集した情報は破棄しなければなりません。その上でアプローチに必要な情報は改めて本人の同意を得た上で収集するか、SNSなどのオープンデータから収集できるものに限定していきます。

具体的に破棄するものとしては、履歴書や職務経歴書などの受領物、住所や電話番号やメールアドレスの個人情報などです。選考を行う中での評価情報などは基本的に削除対象に含まれないのですが、病歴などの機微な情報が含まれる場合は個人情報になるので該当箇所を削除するなどしたほうが良いと思います。

以下は個人情報保護法の運用で関係ある部分を抜粋したものです。

不採用者の個人情報など、採用活動の上で必要とされなくなった情報については、写しも含め、その時点で返却、破棄又は削除を適切かつ確実に行うことが求められる。

網羅的な情報は厚生労働省の解説ページをご確認ください。

最後に

タレントプールで重要なのは継続的なアプローチですが、短期的な結果を求めるのではなく数年単位の中長期的に成果を出すことが必要になってきます。実際に最初のアプローチから最終的に採用に至るまで1年半ぐらいかかったことがありましたが、これでもまだ早い方だったのかなと思います。

長期のコミュニケーションを経て採用した方は組織的なミスマッチも小さく、また入社後の1on1などのコミュニケーションが円滑な傾向があると感じました。中長期的な組織設計をする上でタレントプール採用は非常に有効だと思います。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?