2015年10月 抜管、食事、同病者の訃報(入院10日目、手術から9日目)

6:50起床。37.0度。4:00頃に一度目が覚めて、6:00前からまた少し寝た。
朝食前に階段往復のついでに屋外(敷地内)のコンビニで水2リットルボトルを買ってきた。

8:00、朝食。今日から食べられる。
メニュー:五分粥250グラム、かぶのみそ汁、白菜とひき肉のきざみ煮、ひきわり納豆、やわらかバナナ、ヨーグルト、たいみそ
久しぶりに口から食べたら汗をかいた。やわらかい食べ物ばかりなのに、あごが痛い。食べるのも体力を使うんだな。
飲み込むことには問題なし。もともと左側の歯ばかりで噛んでいると指摘されていたのだが、もとの習慣通りに左側の歯で噛むと、傷口の糸にからまる感じがして食べづらい。舌はやはり使いにくい。
とはいえ、全体的にはさほど問題は感じなかった。
すべての食べ物が小さくきざんであり、柔らかく煮てあったので食べやすく、おいしかった。口から食べる楽しさを味わう。
まわってきた看護師に聞かれて、残さず食べたと話したら「すばらしい」とほめられた。残す人もいるのだそう。
薬はカプセルをそのまま服用。

9:30、診察室で朝の診察。
朝食を食べられたので、鼻のチューブを抜管。
医師グループのサブリーダー的なテキパキした女性医師の指導のもと、点滴など何かとうまくいかない若い男性医師(いまや、夫と私との間では「ぽんこつくん」という愛称になっている)が抜くことになった。心配だ。
女性医師から「ゆっくり抜くと気持ち悪いから、ある程度のスピードでするするっと抜いてね」と、するするっと抜く身振りつきで伝えられた直後、彼は私に「はい、ゆっくり抜きますよー」と言った。「え?ゆっくり?話聞いてた?おい・・・」と思ったら、本当にゆっくり引き始めた。管の感触が不快すぎて、思わず私も管を引っ張る手振りで自分の手を上下に振り、「早く抜いて!」とアピール。
見かねた女性医師が「いや、もっと早く!するするっと!」と、結局彼女がやり終えた。
ゆっくり管を抜かれると、鼻の奥からのど、胸のあたりをぬるぬると逆流するなんとも嫌な感じがする。するするっと手早く抜いてもらった方が、不快な時間が短くて済むのに。これじゃ指導するのも大変だろうな・・・と会社員目線で二人のやりとりを見ていた。
たった今まで鼻、食道、胃の中にあったチューブには、いろいろまとわりついていて、女性医師が手早くまとめて廃棄した。

抜管を終え、今日から会話とはみがきをふつうにしてよいとのこと。ベッドの枕元の壁に貼られていた「会話禁」の貼り紙をはがしてよいと言われた。
ベッドに戻ってから、チューブのとれた顔で「会話禁」の貼り紙を掲げておどけて笑う写真を自撮りして、夫と兄に送った。ばかばかしい写真になったので、入院以来何度かメールをやりとりしていた同僚二人にも送ってみた。

村上春樹『職業としての小説家』を読み終わった。思っていたよりもずっと早く読了。

12:00、昼食。
メニュー:五分粥、かき玉汁、銀ダラの煮付け(身が細かくほぐしてある)、キャベツに(細かく刻んである)、うずら豆煮(ピューレ)、のりの佃煮

昼食後、夫と電話で話す。
昨夜、天野貴元アマチュア棋士が舌がんで亡くなったという記事を読んだ。舌がんが見つかった時にはステージ4で、腎臓にも転移したという。30歳だった。
知らない人だったけれど、自分よりも若い同病者で、しかも棋士(どういうわけか棋士という職業を選ぶ人が気になる)という人物の訃報に目が離せなくなり、消灯後なのに延々と記事を検索した。
私の場合、初期浸潤がん・ステージ1の状態で見つかったことは、本当に奇跡的・幸運なことだったんじゃないかと思う、というようなことを話した。

13:00、昼の検温。37.1度。
食事を全部食べていることや、カプセルで薬を飲んだことなどほめられた。
「何あっても動じなくて・・・ありがたい。笑」と言われた。自分ではそういうつもりはないけど、スタッフルームのすぐ近くの部屋にいるため日々聞こえてくる高齢の患者と看護師のやりとりを思い起こすと、そういう風に映るのかもな、と思う。集約型の診察室で顔を合わせる患者の中ではかなり若い方に入るし、全身状態がよいので、口の中以外は病人らしくない。となれば、要求することも拒絶することも少ない患者と映るのかもしれない。病期や年齢が違えば、看護師のもつ印象もまた違っただろう。

15:00、夫の母から見舞いの件で連絡。
私から提案した日程だと都合が合わないそうで、私が仕事に復帰する前に、食料などをもって自宅にくるとのこと。そうしてもらうことにした。
夫の父も電話口にでて「よくがんばりました」「よかったよかったよかった」と繰り返していた。

シャワーと階段往復を済ませる。

18:00、夕食、薬、検温37.3度
メニュー:五分粥、玉ねぎみそ汁、なす利久煮、長芋梅煮、ソイの風味煮、たくあんづけペースト

19:00、夫が見舞いにきた。
セブンイレブンで買ってきたお弁当を食べる夫と、デイルームで日本シリーズ第4戦を見る。ソフトバンクが5-0で勝っている。ヤクルトがチャンスをいかせず残念。ふだんはスポーツを見る方ではないけれど、日本シリーズの特別感、お祭り感はいいなと思う。つい分の悪い方を応援する。

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