今日は、高次脳機能障害でもよく見られる、「半側空間無視」の症状と、訓練について簡単にまとめます。

◯ 半側空間無視の定義

「大脳半球損傷の反対側に提示された刺激を報告したり、刺激に反応したり、与えられた刺激を定位することの障害」と言うのが一般的である。

無視は、右半球損傷患者に多いとされているが、左半球損傷でも起こりうる。
発生頻度はさまざまな報告があるが、右半球損傷者の4割り程度と高次脳機能障害の中でも頻度が高い症状である。

右無視患者は、失語もあり評価が難しいが重症度はあまり変わらないとの報告がある。

◯ 半側空間無視の症状

「左側の障害物にぶつかる」「食事で左側にあるものを残す」「道に迷う」などの症状が見られる。

発見は簡単であるが、本人は「左足が上がらずつまづく」、「食事が少ない」など、無視を直接早期させない表現をする場合がある。
これは、大抵の無視患者は自分の症状に気づかず、日常生活で遭遇するさまざまな不都合と無視が結びつかないためである。

◯ 無視の訓練

① Top-downアプローチ
  視覚や聴覚などの手がかりによって自発的空間探索を促すものである。

② Bottom-upアプローチ
  動的な刺激により、無意識に無視側へと注意を向けさせる。

これ以外にも、t-DCSやrTMSなども応用されている。

リハの効果は、即時効果は得られているが、長期的、改善効果、個別療法の有効性に関しては確立されていない。

脳卒中ガイドライン2015では、「視覚探索訓練、無視空間への手がかりの提示、プリズム適応による治療などが勧められる(ウグレードB)」が、どの治療より効果的であるかに関するコンセンサスは得られていない。

◯ 運転への影響

無視は生活面でも問題が生じるが、運転場面では直接リスクにつながるため慎重な評価が必要である。

運転場面であるのは、BITなど無視を検出するための検査では引っかからないが、VFITやDSなど、高レベルな検査では問題として浮かび上がって来るケースである。

本人に自覚があれば代償できる可能性もあるが、往々にして自覚が乏しいケースが多い。

一方で自転車には乗ることができてしまうこともあるのだから、高次脳機能はよくわからない点が多い。

そもそも、無視なのか盲なのかも判別する必要があるがいずれにせよ慎重な評価が必要である。


 

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