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自動車運転支援

 本日は、私が外来で行っているもう一つの中心的な業務の「運転再開支援」についてです。

 対象としているのは、脳卒中後に運転再開希望がある方、軽度認知低下疑いでかかりつけ医から相談があった方などです。本日は、脳卒中後の運転再開に向けた手続き等のご紹介をしていきます。

◯ 現在の、病気後の運転再開の流れについて

 皆さんも免許更新時に問診票を記載すると思います。その中に、「過去5年以内に病気になったことがありますか?」のような質問項目があります。脳卒中など特定の疾患を罹患した場合は、そこにチェックを入れる必要があります。

 そうすると、「医師からの診断書」を求められます。
その診断書を作成するために、医療機関などでの評価が必要となるシステムです。医師から運転再開可能の診断書を作成していただけたら、免許センターあるいは最寄りの警察署に行き、臨時適性検査を受けて合格となれば運転再開となります。

ここで大切なのは、医師からの診断書が全ての決定因子ではなく、あくまで「公安委員会(警察)の判断」が最終的な決定となります。医師からの診断書はあくまで警察の判断材料だと思ってください。

◯ 高次脳の人は見た目にはわからないからチェックを入れなくてもバレない?

 患者様にも実際に聞かれることなんですが、「高次脳機能障害は目に見えないから見た目も変わらないし、質問表にチェックを入れなくてもバレないのでは?」
 「なぜ今免許証は手元にあるのに運転できないの?」

おっしゃる通りなのですが、現在はとてもグレーなゾーンがあります。

平成26年度?くらいから、制度の改定がありました。
そこでは、免許更新時の問診票にチェックを入れない、いわゆる虚偽記載の罰則がとても重くなっています。

また、正式な手続きを経て運転していない場合、事故を起こした際の任意保険が降りない可能性があります。
元々、契約時には心身ともに健康であることを条件に保険も組んでいるため、その前提が崩れてしまうからです。

色々と不満に感じる部分も多いかもしれませんが、ルールですのでぜひ医療機関での評価をお勧めしたいところです。

◯ 医療機関で行う評価

私たちが運転を考えていく時の能力は、「認知・判断・操作」です。

横断歩道に歩行者がいる・・・・認知
横断歩道を渡りそうだから速度を落とそう、あるいは止まろう・・・・判断
実際にブレーキを踏む、アクセルを緩める・・・・操作

この三つの能力が、落ちていないかを机上の評価で見ていきます。
また、徐々に増えてきてはいますが、机上評価で問題視された事柄が、実際の操作でどのように影響するかをDS(ドライビングシミュレーター)を利用して判断している機関もあります。

机上での評価が概ね問題ない方は、この時点で運転再開となっていく方もいますが、机上評価だけでは判断しづらい方に関しては外部の機関(自動車学校)と連携して実車評価を行います。

◯ 実車評価

 机上の検査のみあるいはDSだけでは判断しづらい時に実際の車を運転してもらい評価を行います。
 DSとは違い、視野も一気に広がり、周りも自分も動くため評価側もしっかりとした評価が可能です。
 机上評価で、判断速度が低下していた人が歩行者への反応はどうか、信号への反応はどうか、等を確認していきます。
 また疲労は、運転技能を鈍らせる要因にもなるため、終わった後には疲労感も尋ねますし、運転し始めと終盤の運転の質にも注目しながら見ていきます。

◯ 運転支援について

 運転再開の判断は本当に難しく、何人経験させていただいても判断に迷います。
 それは、運転は机上評価のみでは測りきれない点、当事者たちの生活もかかっている点があるからです。
 運転に対する価値観や必要性も十人十色のためこうならばこうといった判断は難しい物です。

それでも最近、高齢者の事故も増えてきていますし「運転したい」という気持ちだけでなんとなる問題でもありません。
 自動運転も数十年先の話ですし、それよりも公共交通機関の発展、免許返納した方への優遇措置、など社会がより良い方向へシフトしていくことを願うばかりです。

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