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デザイン思考とデザインプロセスは違う〜『デザイン思考の道具箱』奥出直人 著
先月読んだばかりの本です。
著者:奥出直人(慶応大・院・メディアデザイン研究科 教授)
タイトル:デザイン思考の道具箱 イノベーションを生む会社のつくり方
ハヤカワ・ノンフィクション文庫 早川書房
初版発行:2013年(ハードカバー版は2007年)
軽いおさらいのつもりで読んだのだが、読み終えて、
「デザイン思考ってそういうことだったのか!」
と思った(笑)
デザイン思考とデザインプロセスは違う
デザイナーの仕事の仕方をその他の事にも応用するなら、わざわざ「デザイン思考」などという大仰な固有名詞を作らなくても、「デザインプロセス」で良いじゃないか、という意見がある。
恥ずかしながら僕もそう思っていました。すみません。
とはいえ、「デザイン思考」を、「(デザイン以外にも応用することを前提とした)デザイナーの仕事のやり方」と(勝手に)定義するならば、デザインプロセスと同じ、という認識で良い。
しかし、「デザイン思考」をIDEOやスタンフォード大のdスクールが提唱した特定の方法とするならば、明確に違うのだ。
デザイナーがおこなうデザインプロセスは、我々がわざわざ「デザイン思考」と呼んでいる活動と同じではない。デザイン思考にはコラボレーションが必要なのだ。デザイン思考は、特定の問題を解決するためにさまざまな背景を持った人たちがコラボレーションをおこなっていく方法なのだ。
太字はわたくし。
デザイン思考ではデザイナーの他に、エンジニア、マーケター、文化人類学者など多様な人がチームを組む。あるいは、営業販売、商品開発、製造などの多様な部門の人がチームを組む。多様な人々がチームを組むことが重要なポイントで、これが組織としての創造性が高まる仕掛けである。
フィールドワークへの文化人類学の影響
一昔前から消費者調査にエスノグラフィ(民族誌)が採用されているが、そのいきさつがコンパクトに解説されている(第4章「経験の拡大」p160~161)。著者が使っている方法は現象学的社会学(エスノメソドロジー)と言い、アメリカの社会学者、ガーフィンケルがフィールドワークの方法として確立したものだ。
第4章「経験の拡大」では、フィールドワークの心構えと方法が解説されている。
まず心構えに付いては、「師匠/弟子モデル」という用語も面白い(p170~)。調査対象を「師匠」と思い、調査者はその弟子になった気で調査する。
調査終了後すぐに記録(エスノグラフィ)作成に取り掛かり、「濃い記述」を心掛ける。記憶が鮮明なうちに、自分の経験を全て言語化することで記述が濃くなる。
ちなみに「濃い記述」を提唱したのはクリフォード・ギアツだそうで、僕にとっては懐かしい名前だった。もう十数年以上前にギアツの「ヌガラ」(19世紀バリの劇場国家)を読んだことが思い出された(中身はほとんど忘れた)。
続いて、実際の記録作成の方法が述べられる(p177~)。
調査者は複数のイベントやユーザーを観察することで、彼らの間に共通する仕事のパターンを見つけることができる。基本的なパターンを理解することで、彼らの日常生活を支えるシステムを解釈することが可能になる。仕事のパターンを特定の見方にしたがって具象化したものをワークモデルという。
次の「5つのワークモデル」が図や写真入りで解説される。
フローモデル
シークエンスモデル
アーティファクトモデル
文化モデル
物理モデル
※詳細は本を読んでください(てへ)
これはエスノグラフィの具体的な作り方になっていて、デザイン思考を実践しようとする人にとって、とても参考になるはずだ。また、デザイン思考に興味のない人にとっても、情報の整理の仕方として見れば、やはりとても参考になると思う。
おわりに
その他いろいろ示唆てんこもりなので、多くの人に一読を薦めたい。
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