隣室から聞こえる音

俺の部屋の隣には男が住んでいる。
彼が出す音はデカい。
大胆な男なのだろう。
例えばレンジの扉を閉める音。
バタン！と豪快な音を出してくれる。
その前にその扉を開けるわけだが、その音もこれまたデカい。
デカいデカい繋がりで、アソコもデカいのだろうか。
知らねーよ。
エアコンを付ける「ピッ」という音も聞こえる。
これは彼は関係無いですね。
単に壁が薄いだけという事実。
鉄筋コンクリート構造なんですけどね。
よく木造より鉄筋の方が音漏れはマシと言うけれども、実際に住んでみると、そこまで大きな違いは感じない。
むしろ「木造の木の方が音を響かせなくて静かなのでは?」と思ってしまうくらいだ。
鉄筋の方が音が響きやすいと感じている。
あとは彼のくしゃみ。
奴のくしゃみの音はデカい。
やはり豪快な男なのだろう。
テレビを見ている時の発声もデカイ。
多分、野球を見ていたのだと思うが、恐らくホームランでも出たのだろう、「よっしゃー！」という、まるで拡声器で叫んだかのようなボリュームの雄叫びを披露したこともある。
やっぱ男だな、あいつは。
屁の音もよく聞こえる。
「ブッ」。
別にデカい音では無いのだけれども、そこはやはり鉄筋の壁。
鉄の筋とコンクリートの固さに音が響いてしまうようだ。
窓を閉める音もデカい。
あれは明らかに叩きつけている閉め方。
「バタン！」「ガンッ！」「ダンッ！」「バンッ！」
よくもまぁそんなに閉め方の音にレパートリーがあるもんだ。
ちなみに反対側の部屋からは、そんな騒音は何も聞こえてこない。
唯一聞こえるのは歌声。
反対側の人は、外から帰ってくると、開口一番、歌い出す人なのだ。
それが異様に上手い。
曲目は高級クラブで歌われているような、高音域の流暢なメロディ。
何の曲かはわからないが、とにかく優雅な歌声なのだ。
かたや屁の音、かたや優美な歌声。
まったく面白いマンションだぜ。

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