リカンベント

リカンベントという自転車がある。
知ってる？
仰向けに寝そべったような格好で漕ぐ自転車。視界が低いからスピード感を味わえそうだし、姿勢も保たなくていいから楽そうだ。
俺は思った。
車でもそうしたいと。
リカンベントタイプの車。
いいじゃないか。
運転席がまるで歯医者のリクライニングシートみたいに倒れている。
そこにゆったりと寝そべって、ハンドルは...
ハンドルの位置が難しいな。
腹のあたりにあっても回しにくそうだし、かと言って頭の斜め上あたりにあったら腕が疲れる。
うーむ...
そうだ、そもそもハンドルを回して曲がるという概念を捨てよう。
フェラーリのパドルシフト見たいものがあって、それを左に引けば左に曲がっていき、右を引けば右に曲がっていく...みたいなのはどうだろう。
いや、iPadでリアルタイムの景色を表示して、それを指でくりくり動かして曲がる、なんていうのも面白そうだ。
でもパッドの反応が急に悪くなったらやばいな。
曲がってる最中に急に指でなぞっているのが反応しなくなって、壁に激突とかしたら困るな。
そもそもリカンベント式だと後ろが見えないな。
ミラーで見ることはできても、振り返ることができない。
無理して首を起こして後ろを振り返れば、寝違えたみたいになってしまうかもしれない。
今、実際に車の中でシートを倒して寝そべっているが、試しに後ろを振り向いてみたら、結構辛い。
というわけでリカンベント式の車に未来はない。
未来どころかそもそも誰もそんな車を作らない。
全く俺は何を考えているのだろうか。
呑気なもんだ。
その前にダッシュボードで前が全く見えない。
発進できない。

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