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002|「素材実験由来のプロトタイプ」by秋田公立美術大学柚木研究室
100ミリ角の立方体に込められた素材実験の結晶。
秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻の柚木恵介研究室が進める「100⁴ Material Lab.」の一部を紹介いたします。
100⁴ Material Lab.とは
![ロゴ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73000186/picture_pc_037e9674496fac17ca0eaaf39b2345cb.jpg?width=1200)
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この画像を見るだけでワクワクしませんか?
「はい」とお答えいただける方は、きっとクリエイティブ関連の方々ですね(笑)。ぜひ、この素晴らしい活動を知っていただきたいと思います!
身の回りにあるような素材に少しの加工を加えるだけで、見る人にその素材の新たな可能性を伝えてくるような「100mmx 100mmx 100mm の素材標本キューブ」たち。私はひとめでその魅力に引き込まれました。
柚木研究室の「素材実験由来」アプローチ
私たちデザイナーもデザインを進める時には、まず論理的にアイディアを広げることから始まり、その後プロトタイプと呼ばれる「失敗する要因を知ることで、成功する条件を見つける」実験を繰り返していきます。
この研究室のアプローチも同じ考え方に基づいておられ、とても共感を持ちました。
<公式サイトより抜粋>
Material × Action
Material Lab.では、扱う素材と行動を書き出し分類します。変化する素材の表情だけに執着しすぎると、いくつもの行動が重なり複雑化していきます。それらを実験段階から常に明確にしておくことで、自分自身も他のメンバーも再度トレースすることができるからです。一つの素材でも、候補に無かった行動を採用したり、幅を広げるためにもこれらの分類が役に立ちます。
Try & Error
このプロジェクトは、失敗を何度も経験します。失敗から手順や道具を見直し、環境を整えまたチャレンジします。こうして失敗を恐れず、徹底的に仮説と検証を繰り返すことで、素材特性、構造理解、素材特有の表情などを少しずつ見つけ出せるようになります。その小さな発見に目を向け、強調し、新たなレシピを確立していった先に、プロダクトやアートへの応用が見えて来るはずです。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73000825/picture_pc_9b5cd6a2a428c999e0901abbf3c940a3.png?width=1200)
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73000841/picture_pc_761671f7ecb41b937cbbd4eed93513f3.png?width=1200)
セレクトした素敵なプロトタイプ
数多くある素材標本キューブの中から3つを厳選して紹介しようと思います。
この「サンプルコレクション」なら受注生産でご購入いただけますよ!
#002−01
Material × Action : LEGO (ABS) × Heating
![画像13](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75854721/picture_pc_c194abdac6d2a58853b9b3b5bbd9ddac.jpg?width=1200)
<公式サイトより抜粋>
LEGOを立方体に組み上げた後、ドライオーブンで加熱。
加熱することでABSが柔らかくなり歪みが生じるが、LEGOの素材の質の高さとジョイント部の精度の高さから歪みが生じてもブロック同士が外れることはない。また表面に艶が生まれることで高級感が生まれた。歪ませる前の形状をデザインすることで、独特な艶感と歪み感を持ったプロダクトへの応用の可能性を感じている。
ブロックという「製品」をあたらめて、「素材」として再認識することができた作品。「歪みながらも接合しているカタチ」と「表面の艶」が素晴らしいです。
研究室では、この実験を応用した一輪挿しも作成されていました。
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75854755/picture_pc_89831760c48aab3b9c230b9be91bd742.jpg?width=1200)
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75854822/picture_pc_1252591d2ee9f1a5d91466df75de76e9.jpg?width=1200)
![画像15](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75854838/picture_pc_518d068b9a4f5b26ee854f2a0a07ddb9.jpg?width=1200)
#002−02
Material × Action : Wood × Sandblast
![画像15](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75854886/picture_pc_ebaa2f162c64314716c6339f33a4f1cd.jpg?width=1200)
<公式サイトより抜粋>
100mm角の柱材にサンドブラスト加工。
フローリング等の平面に施されることの多い浮造加工を立体に応用。木目の柔らかい場所のみが削れ、硬い部分は残っていく事ためより強く木目を感じることができる。節やクラックなど本来製品作りにおいて敬遠されてしまうような要素も、家具などへ応用することで、量産できるが一つ一つ異なる木の魅力を持った木製プロダクトに展開できると考える。
驚きの「超浮造(うずくり)加工」。
木目の陰影を美しく愛でるための加工方法ですが、ここまで深いものを見るのは初めてのことでした。一般的な浮造加工は、カヤなどの草の根を束ねた道具や、ナイロンブラシを取り付けたホイールサンダーを使うようなのですが、この研究室が行った手法が「サンドブラスト」。細かな粒子を圧縮エアーで飛ばして対象物を削る技法を使うことで、硬い部分のエッジを残したまま、ここまで深い削り込みを可能にしています。
![画像15](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75854928/picture_pc_ff1ed9041876e46d2d11dde9d4aaa37e.jpg?width=1200)
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75854957/picture_pc_4755e449b17bacf9155cdbb4ea94073b.jpg?width=1200)
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75854984/picture_pc_1b1dcd9bc7cf78d61139ca4cf74470d1.jpg?width=1200)
#002−3
Material × Action : Corrugated Sheet × Heat Cut
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73001636/picture_pc_ffa7ff2daf0717d944b27af137e78c2d.png?width=1200)
<公式サイトより抜粋>
波板をロール状にしヒートカッターで切断。
熱で切断することにより、切断面が溶着される。波板の作り出す隙間は美しく、凸形状にロールを押し付けた状態で溶着することによりロッキングチェアなどに応用できると考える。
第一印象は「キャベツの断面」。
とても有機的で美しい印象を受けました。作り方をお聞きしてみると、上記の説明の通り、とても単純明快。しっかりと融着するまで固定するのに、かなりの力が必要かと想像しますが、それだけの加工方法でこんな造形ができることに驚きました。
花立てやペンスタンド、家具の脚などにも応用できそうな加工方法です。
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75855018/picture_pc_a22a5d86493abaaf5fb588bb1364c4bd.jpg?width=1200)
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75855068/picture_pc_dbb6cdf5ea5ecf52ce8072d28c4dac3b.jpg?width=1200)
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75855089/picture_pc_7a6d9a135ef2322c126616812e56b8ee.jpg?width=1200)
柚木恵介先生の想い
まず公式サイトの抜粋をそのままご紹介いたします。
"思い立ったらすぐ作る"
それを合言葉に、私たちは身近に存在している素材へあらゆるアクションを加えては試行錯誤を続けてきました。時には近所のホームセンター、はたまた大学キャンパス内では誰も見向きもしないようなものを漁り、想像力を膨らませては失敗と発見を繰り返しています。私たちの研究「100ⁿ Material Lab.」では、まず100mmx 100mmx 100mm の素材標本キューブを作ることを目指します。アクションを加えた素材の、特有の表情や変化を保ったまま立方体に維持できるかが課題です。
なぜこんな実験を行うのでしょう。
私たちの生活は、ナノメートルの隙間から目に見えない波長まで、あらゆるものがデザインされていると言っても過言ではありません。特に、生まれた時から物質に恵まれている学生たちにとっては、「こんなものがあったらいいな」と思うものの多くはすでに市場にあるように感じます。(いいデザインかはさておき)思いついたら既にあった。それが最初のハードルになっていてもおかしくありません。では、作り方はどうでしょう。よく知られた手法だとしても、デザインの分野ではまだ認知されていない可能性が大いにあります。子どもたちの遊び方や料理の作り方、化学や農業の世界では当たり前のプロセスも、別の業界では新しくなり得るかもしれない。つまり、誰もやっていないレシピに気がついたり、全く別の文脈からつくりかたを転用することができれば、案外身近な素材でも新しい魅力を作ることができるのではないでしょうか。なにも表情の面白さや美しさだけでなく、結合や保持、立ち方そのものを取り入れることもできるはずです。そういった可能性を実験の中からわずかでも発見し、新しいプロダクトデザインを考えることが「Ma teri al Lab. 」の主旨です。また、最近ではプロダクトデザインの分野だけでなく、美術教育やアートの基礎実技としてもこの研究を活用し始めています。素材が持つ面白い表情を維持しながら立方体の成立を目指すことで、①審美眼 ②立体造形感覚 ③治具に対しての意識 ④少しばかりのウィット、これらのことが少なくとも鍛えられると考えられます。「こんなこともできるのでは?」「別のもので試してみよう。」出来上がったものや失敗したピースを見てそう思えたら、もう次の一歩目が始まっているはずです。柔軟な発想と素材の可能性を模索する、私たちの研究を是非ご笑覧頂けたら幸いです。
秋田公立美術大学
ものづくりデザイン専攻プロダクトデザイン准教授 柚木恵介
このサンプルコレクションを運営する株式会社Yの三宅もデザイン系の大学で非常勤講師をさせていただいているのですが、柚木先生の想いと取り組みにとても共感いたしました。
思いついたアイディアをネットで探してみると「思いついたんですが、すでにあったんです。。。」というように落胆している学生の姿によく出会います。よく話を聞いてみると、その人ならではのこだわりがあったりして、その特徴を伸ばしてあげると違うものになったりするのですが、その伸ばし方、ずらし方が学生立ちには分からないんですよね。
柚木先生のこのアプローチを学んだ学生たちは、この悩みを持つことなく、どんな既存商品も「別のやり方があるんじゃないか?」と考えるチカラを身につけられるのではないかと感じています。
柚木先生、応援してます!!!
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プロダクトデザインやモノを作り出すお仕事をされている方々には、とても興味深いに違いないこの実験の結晶。とても嬉しいことに交渉の結果、この3点は受注生産で作っていただけることになりました。手元において今後のインスピレーションにされてはいかがでしょうか?
ご興味を持たれた方は、ぜひYオンラインストアにて詳細をご確認ください。
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秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻 柚木研究室
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※公式サイトは現在クローズされております。
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