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カスハラ問題だけではない吉田恵輔監督、松坂桃李/古田新太主演「空白」

「空白」見てきましたが、思いの外、つらい映画でしたね。
冒頭から、ずっとつらい。

私自身、自分の仕事に対して、それなりに「やりがい」を見出して、「今後は、こうしていかないとなぁ」と漠然と考えながらやっていますが、正直、やりたかった仕事というわけではなくて、「やらなくては、生きてけねーし」というイヤイヤとは言わないまでも、「これが人生だね」という諦念というか義務感というか、そんな感じは多分にあります。
(「遊びを仕事に!」とか言っている人は、いいね~)

そして、松坂桃李さん演じる店主と同じで、人付き合いは上手ではないです。

そんなこともあって、自己主張が強いタイプの人とトラブルが発生すると、「こっちの方針は、こうだから!」と戦うことよりも、「とにかく場を収めないと」という発想が優先することが多く、松坂桃李さんを見ていて、「あぁ、分かるなー」と、嫌な共感を抱くことが多かったです。

いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を扱っているので、仕事をしていれば、どうしても相手と揉めることはあるわけで、他人事とは感じられず身につまされる作品でしたが、しかし、そういう個人的な小さな枠を超えて、現代社会、特にネット上にて、おのれの正義を棍棒に、延々と戦っている光景が思い起こされもしました。

どうやって相手を論破して、マウンティングを取るかに終止する戦いは、時に問題の本質から遊離しているように見えることがあり、「なんだかなー」と、やるせない気持ちになります。

映画では、相手をねじ伏せるのではなく、自らの足元を見つめ直すことで光明が見える展開でしたが、さて、現実では、怒りや不満をぶつけてくる人に向かって、「そうは言っても、あなたにだって落ち度があるでしょ?」とは言えないわけで(まして、お客様相手では)、改めて「どうしたら正解なんだろう?」と考えさせられました。


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