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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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2019年12月の記事一覧

サンタ側に回った子供

サンタクロースは存在しない。 親からそう聞かされたのは、僕がわずか7歳のときだった。 3人もいる子供を騙しつづけることは事実上不可能だと、両親は考えたらしかった。僕たち兄弟は同じ部屋で寝ていたから、こっそりプレゼントを置いておこうにも、誰か一人でも目を醒ませばすべておじゃんだ。さらに、それぞれの欲しいものを買いそろえるだけでも大変な労力がかかるだろう。親の立場で考えてみると、しごく納得がいく。 だが、7歳の僕はそうもいかなかった。 「もしかしたら、いるかもしれないじゃ

ロンドンの街頭でチラシ配りをすると悟りが開ける

現金が20ペンスくらいになってからわたしは初めて自分の残酷な状況に気づいた。 友人宅に遊びに行くバス代すら持っていないこの身を、家の片隅に転がっていたオンボロのチャリに乗せて慣れない道を走り出すと雨、容赦ない雨にさらに自転車のブレーキが壊れているしタイヤも空気が入っていないことに気づく。 グーグルマップ的には15分で着く予定の道のりをほとんど一時間かけて友人宅へ到着、明日のギグに向けてDJの特訓を行いながらもわたしの頭の中は明日からの生活についての不安で満載であった。 とに

内見で父がバグった話

私が東京でひとり暮らしをすることについて、賛成してくれたのは父だけだった。 母は真っ向から反対はしなかったものの、私とふたりきりになる度に「友達おらんと寂しいやろ」「〇〇ちゃんも△△ちゃんもみんな地元残るって」という切り口で説得を試みてきた。 私は、「〇〇ちゃんも△△ちゃんもみんな持ってるって言ってもゲームボーイ買ってくれなかったくせに」と反論した。18歳の私は結構クレバーだったのだ。 祖父母は、「東京には狼がおる、危ないからアカン」の一点張りだった。 私は「岐阜にも熊お

20歳から見たら40歳は完成して見える

私は今年47歳になります。40歳を超えてから、自分の年齢が分からなくなるぐらい、自分の年齢に興味が無くなりました。 来年48歳で、歳男などと言われてますが、私が20歳の時に見た40歳を超えた大人は、完璧に完成された大人で、確固とした地位を気づき、人生哲学を持ち、若者たちを導いていける威厳すら感じていました。 ちょっと悪く言うと、「完成しきったオジサン」「これ以上伸びないオジサン」というイメージがありました。自分たちとは全く違う世界に生きている「大人」だと思っていました。

写真が好きではなかった。けれどわたしが女の子に映る、唯一の方法にも見えた。

向けてほしくなかった。 その視線をへし折ってしまおうかと思った。透明人間にはなれないから、誰の視界にも入らずに生きてしまおうかと思った。それがわたしを守る唯一の方法な気がして、だからこそわたしは顔出しもせずにこうして言葉だけを書き続けている。 全てを言葉で解決させたかった。 自分という鏡を誰にも見せることはない。 写真。それにわたしを映すことが怖かったのだ。 " わたしは一生、写真に勝てない。" これがわたしの精一杯の強がりだった。SNSを始めて、わたしは多くの写真

誰よりもダサいセーターを着よう!英国クリスマスシーズンの謎イベント。

ビデオの中の彼女はカメラが宝物だと言った【エッセイ】

6歳、娘の宝物。 それはばあちゃんから貰ったお古のカメラだそうだ。今、ビデオの録画越しに娘の声を聞いている。 ビデオカメラを回しているのは妻だ。今日は幼稚園の参観の日だった。私は仕事で不参加であったので帰宅後こうしてゆっくりと動画を観させてもらっている。 みんなの前でしっかりと発表ができている娘の姿を見ると随分と成長したように感じる。 カメラの記録画像にはアジサイの花や、飛行機が写っていると言う。 そして、ビデオの中の6歳の娘は、、 「なかでもお気に入りはパパとマ

一目惚れした1Kに一目惚れした先輩を泊めた冬の話

社会人なりたての夏、初めての一人暮らしを始めたのと、長期戦になる恋が始まったのは、まったく同じ時期だった。 会社に一本で行けるという理由だけで選んだ、三田線沿線の駅近くの1K。独立洗面台、築浅、南向き、2口コンロ、オートロック、広めの部屋…。わがままな条件をすべてクリアした部屋に、一目惚れして即決した。 もう一つの一目惚れは、4つ上の、OJTの先輩。仕事ができて、面倒見が良くて、しっかりしてるけど仕事以外で見せる抜けているところが好きだった。人懐っこくて世渡り上手な後輩を

ウイグル自治区で公安警察から「重点旅客」に認定され熱烈歓迎をうけてしまった話

これまでのあらすじある日突然Twitterで知らない人から誘われて、なぜかウイグル旅行に行くことになった限界社畜OL・砂漠。しかし、空港に現れたのは、社会主義旅行を通じて人を社会生活からドロップアウトさせる謎の秘密結社「うどん部」だった。空中浮遊が特技の中国オタク・尊師、小柄でツインテール姿のちょっぴりエッチな美少女・レーニン。そんな怪しすぎる仲間たちとの珍道中に、中国公安の魔の手が迫っていて……!? (これまでの詳しい話を知りたいかたは前回のnoteへ) 公安から謎の「