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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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2018年12月の記事一覧

メンヘラへの処方箋

あいつ、メンヘラだよな。 そう、誰かが発する言葉を聞くと。 心の奥底がきゅうと痛くなる。 メンヘラ。 この言葉が一般的になったのはいつからだろうか。 元々はメンタルヘルスから来ていることなどはここで特筆することでもないだろう。 が、昨今、あまりにもメンヘラという言葉を皆が多用しすぎな気がするのだ。 ここでは、本格的に通院の必要な人は除かせていただきます。それはメンヘラではなくてちゃんとした病名があると思います。 メンヘラと言われるものを因数分解すると、それはワ

「幸せだけど、たのしくない」? 夫婦のかたちを考える

「このままじゃ、パートナーとして好きって気持ちを失っちゃう」 夫にそう伝えたのは天皇誕生日の夜、みんながそわそわするクリスマスイブイブ。ふたりでストーブにあたりながら赤ワインをあけているときだった。 ◆   ◆   ◆ 2018年は、てんやわんやな一年だった。 まず、赤ちゃんから幼児へ猛スピードで変化する娘との生活は、はちゃめちゃに幸せだった。 腰がすわった、笑った、食べた、歯がはえた、ハイハイした、指さしした、つかまり立ちした、積み木できた、しゃべった、意思疎通で

【旅レポ】沖縄の名物おばあに会いにいってみた

「あんた、この2年、大丈夫だったんか?」 「顔の見えんあいだ、どうしているのか、ずっと心配しておったさ」 節くれだった、よく使い込まれた職人特有の、つめたく乾いた手が背中に触れている。 心配顔の老婦人と、その友人のご近所さんに、小さいテーブルをはさんで詰め寄られる。予期せぬ歓待に、心のうちの絶対に揺らぐことのなかった箇所が思わずゆるむ。 何十年も時を止めたようなその店のしつらえは、ここに始めてきた時と何も変わらない。黄色くくすんだ電球の色にすべての調度品は溶け、過去の思

【旅レポ】沖縄で知らない人と旅をしてみる〜旅、付いてこられてもイイですか?〜

「あなたお酒は飲む?」 「一滴も飲みません。」 「じゃあタバコは?」 「やりませんね。」 「じゃあ、ギャンブルもしないわね。」 「ええ。」 「あなた、結婚に向いているわ。あなたが結婚するとき、私を絶対に呼んでね。約束よ」 そういっておばあさんは私の手を握りしめる。まるでその手の先に確かな未来があるとでもいうように。私があいまいに笑っていると、だめよ、絶対結婚しなさいねと念を押す。きっと傍目には、おばあさんと孫のかわいらしいやり取りに見えただろう。だが実際には、我々は26時間

私がnoteを始める切実な理由。

乙武洋匡です。このたび、noteを始めることにしました。 さて、どこから書こう。ネットニュースなどでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、今年4月まで海外を放浪していました。一年間かけて、37カ国・地域。「見聞を広めるため」などと言えば聞こえはいいけれど、正直に言えば逃げたかったんです。日本から。 1998年に『五体不満足』が出版されて以来、ずっと“障害者の代表”のように扱われてきました。もちろん批判の声もないわけではなかったけれど、おおむね好意的に受け止められてきま

金髪にしてよかった話

先日、生まれてはじめて髪をブリーチした。染めること自体はお初でもなんでもなく、18歳で上京してからしばらくは明るくて、でも20歳で働き出したバイト(無印)が茶髪NGだったのでいそいそと髪色を戻し、そこから留学したりなんだりと忙しく、5年間髪の毛は黒いままだった。 わたしの顔はとても薄い。主張の少ない顔である。 温厚そうな顔をしているので、歩いていると、よく道を聞かれる。そして宗教勧誘に遭う。渋谷の旧ドンキ前は有名なキャッチゾーンだったので、そこをひとりで歩いていると、「幸せ

青山住民が考える児相問題と「青山」のふしぎ

 この度、南青山児童相談所関連のニュースを見て考えたこと、思ったことをお話させていただきます。note初投稿なので至らない部分はご勘弁。長く、拙筆ですがぜひ最後まで読んで拡散お願いします。※一部表現の訂正を行いました ※新聞に封入されている広報などで児童相談所計画は示されており、私も当時それを確認してはいますが、その後南青山へ決定してからの告知チラシ等は一切投函などがなく認識していませんでした。 さて。盛んにニュースに取り上げられているこの問題。 恐らく話題が爆発したのは

国籍と遺書、兄への手紙

 なぜだろう。30代になってからふと、亡くなった家族のことを思い出すことが増えたように思う。もしかするとそれは、当時の兄の年齢を、私が追い越してしまったからかもしれない。  兄が亡くなったのは、中学卒業を間近に控えた春だった。「前を向いて歩きなよ。過去は変わらないんだから」。当時の友人たちが、私にそんな言葉をかけてくれたのを覚えている。落ち込んでいる私を、何とか励まそうという精いっぱいの言葉だったと思う。その気持ちには今でも大きな感謝を抱いている。  けれども「過去は変わ

東京からバンコクからカトマンズ。

はじめての場所ってやっぱり、たのしい。 今日はどこにいってどんなものを撮るのだろう、たのしみ。

1214「あまり承認欲求をいじめてくれるな」

昨日は終電前に会食が終わって、ぎりぎりで間に合いそうだったので、JRに乗って世界で何番目かに尊い場所である三宮の神戸サウナに駆け込んだ。よもや、神戸サウナに立ち寄ることができるとは、これで平成という時代に思い残すことはない。 そして朝から東京にトンボ帰りして、またずっと人に会っていた。全体的に私のする話に関心を持っていただいてありがたい。なかなか手は動かせないが、楽しいなあと思う。 渋谷の駅で、ホンダのかっこいい広告を見た。たぶんきっと日本では話題になっているのだろうけ

ピースオブケイクのパーティーのこと(前編)

もう一週間経ってしまったのだけど、去る12月6日、ピースオブケイクの新社屋お披露目パーティーに出席した。 受付で、シールに名前を書いて服に貼るよう言われる。cakesは顔出ししていないクリエイターも多いから、名札があるのはわかりやすい。 会場に入るとさっそく、cakesで「豆しば こつぶ」を連載しているイラストレーターのキリさんとばったり会う。 「ばったり」といっても初対面。しかも、お互いに顔出ししていないから顔を見るのは初めて。 だけど、事前にキリさんからDMで服装

「性教育」の提案 後編

前回は「年頃の娘に父親からコンドームを渡すか、否か」という問いに対しての、皆さんの反応をまとめました。大半の方が否定的であり、私もそのつもりはないことはお伝えしました。 ただ同時に、性教育に関しては保守的だということが分かりました。 今回はなぜそのような問いかけをしたかも含め、その話の中で出てきた「性教育と現場との乖離」について、何が問題なのか考えていきたいと思います。 今までも「生命の神秘」としての“性”は教育の対象であり、今後もそうでしょう。 「このままでいいじゃん?

1129「ここ数年で一番うまかった食い物」

朝から飛蚊症みたいなミジンコピンピンが激しくて悩ましい。面倒だけれど病院に行かなければならない。明日病院に行こう。気になるが、あんまり気にしすぎると仕事にならないのでがんばるしかない。今日は朝からロンドンのPR会社の人が来ていて、今後の英語圏での営業に関してヒアリングをしたりした。例によってブリティッシュ英語なんで、たまにわからなくなってしまって落ち込んだ。 私は放っておくと過食になってしまうところがあって、なぜ食うのかというと、食っている間は他のことを考えなくて良いからな

好奇心の残骸を見つけて

「むずかしいのは、はじめることじゃなく続けること」 ——この言葉、多くのひとが耳に、もしくは目にしたことがあると思う。そしてきっと、多くのひとにとって耳が痛く、身に覚えがある言葉だろう。 このnoteを書いているいまは、オフィス引っ越しのまっただなか。となりの部屋では、アート引越センターのお兄さんとお姉さんが鋭意作業に取り組んでくれている。 「すごいねえ、はやいねえ」と言いながら社長の古賀さんと社員のわたし、そして心強い助っ人であるツドイの今井さんはコーヒーを飲みながら