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書評家の三宅香帆さんに学ぶ「"推し"の魅力を伝える文章の書き方」 #推しを伝える文章術 イベントレポート

6/10(木)に、文筆家・書評家として活躍する三宅香帆さんを講師にお招きし、読書感想文をはじめとした、“推し(好きなもの)”の魅力を伝える文章の書き方を教えていただく講座を開催しました。

三宅さんは会社員として働くかたわら、日々たくさんの本を読み、書評家としてメディアに寄稿したり、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』など、本や文章に関する多数の著書を執筆しています。

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講座では、三宅さんが普段どのように本を読んでいるのかなどの「読み方」について、また文章を書くステップや大事にしていること、そしてより多くのひとに届けるためのポイントなど「書き方」について教えていただきました。この記事では、当日お話しいただいた内容を、ポイントをまとめてお伝えします!
イベントのアーカイブ動画はこちらからご覧いただけます。

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感想を書きやすい「読み方」とは

1. マーキングしながら読む

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本の読み方に正解はないけれど、「感想を書きやすい読み方」はある、と三宅さんは言います。三宅さんのおすすめは、読みながら「おもしろいところ」「好きなところ」「違和感があるところ」をマークしておくこと。

感想を書くときは、「その作品の細部で自分の好きなところをいかに伝えることができるか」が重要です。細かいフェチの話というのは自分だけのオリジナルなので、それについて語れば語るほど、"推し"への愛情が伝わる文章になるのです。自分がどこにピンときたか、どこを好きだと思ったかを覚えておくために、マーキングしておくことは大事です。

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2. 他ジャンルにも手を出しておく

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自分の好きなジャンルと皆が知っているような他ジャンルの文脈とを組み合わせて書くのは、他ジャンルのひとにも届くので有効です。

たとえば、三宅さんのnote記事『2010年代、ネオリベアイドルの誕生―AKB48・乃木坂・欅坂・日向坂はなぜ流行したか?』では、「アイドルの流行」と「小説や漫画の流行」を組み合わせて書いています。文脈を横に伸ばし、そのアイドルと同時代の小説や漫画の話を取り入れることで、アイドルのことをそれほど知らないひとにも届けることに成功しています。

文脈を縦に伸ばし、同じジャンルの現在の話と昔の話を比較することも有効です。三宅さんの記事では「AKB48」と「松田聖子」の違いを語っており、「AKB48はよく知らないけど松田聖子なら知っている」というひとも納得させられる内容になっています。

書く前にやっておくこと

三宅さんが書評を書くうえで大前提としているのは、「記事単体としてもおもしろくありたい、そのうえで"推し"の魅力が伝わる文章でありたい」ということ。

そうした感想を書くためには、書きはじめる前に考えておくべきことがあります。

1. ターゲットを決める

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まず、だれに向けて書くのか、ターゲットを決めましょう。自分と同じようにそのジャンルが好きなひとに向けて書くのか、それともそれを知らないひとに向けて書くのか。その記事によって「間口を広げたい」のか、「同じジャンルを好きなひとに届けたい」のかを考えましょう。

「どちらも!」という場合は、「序盤では間口を広くして、中盤から狭くする」という書き方が効果的です。

2. どこをポイントに書くかを決める

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次に、どこをポイントに書くかを決めましょう。自分が一番グッときた部分、好きなシーンやキャラクターなど、「これをぜひ知ってほしい」ということをポイントにします。読みながらつけたマーカーが、ここで活用できます。「あれもこれも書きたい」と欲張ると書いているうちに迷子になってしまうので、ポイントを絞り、最終的な着地点を決めておくといいでしょう。

書き出しに迷ったら

1. 「自分の話」を書き出しに持ってくるのは有効

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書き出しは読者のつかみとなるので、とても重要です。ここで読むひとの興味を引くには、「自分の話」を持ってくるのが有効です。自分の話は共感を得やすいので、間口が広がります。

三宅さんのnote記事『ジェンダーSF文学としての最高傑作『大奥』――萩尾望都、山岸凉子、アトウッド、そしてよしながふみの文脈――』では、「私たちはなぜ産む性として生まれてきたのか」と書き出しています。三宅さん自身が感じている「出産に対するもやもや」を書くことで、間口が広がり、『大奥』という漫画を知らないひとにも興味を持ってもらえる記事になっています。

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2. 「問い」か「文脈」を探す

書き出しに迷ったら「問い」か「文脈」を探してみましょう。

三宅さんの『大奥』の記事では、最初に「なぜこの漫画のタイトルは『大奥』なのか?」と問いかけています。最初に問いかけをすると、読むひとは問いの答えを知りたくなるので、そのまま読み続けてもらえるでしょう。

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書くうえで気をつけるべき3つのポイント

1. あらすじに分量をつかいすぎない

本の感想を書く場合にやりがちなのが、あらすじを延々と説明してしまうこと。あらすじを説明しないと読むひとに伝わらないのではと思うかもしれませんが、あらすじは調べれば簡単にわかることです。あらすじの説明は必要最低限に抑え、自分がその作品で好きな部分についてしっかり書きましょう。読んだひとに「この本おもしろそう、どんなあらすじなのか調べてみよう」と思わせるほうが大切です。

2. 「ありきたりな言い方」は避ける

ありがちな言い方はなるべく避けましょう。たとえば、「最高」「傑作」といった言葉。雰囲気にまかせて書いているとついつかいたくなってしまいますが、それを自分なりの言葉に置き換える訓練をします。

「最高」と書きたくなったら、「どういうところが最高だったか?」と細分化してみるのがおすすめです。自分が最高だと思ったところはどこかと細かく見ていくと、「最高」に換わる言葉が見つかるでしょう。

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3. 書くのに詰まったら"推し"を読み返す

書くのに詰まって進まなくなったときには、原点に戻って"推し"(書きたい対象)を読み返してみましょう。自分がこの作品のどこが好きだったか、何を語りたかったかを考え直し、改めて書きはじめてみてください。

書き終わったら修正をしよう

書き終わったらきちんと読み返し、自分が一番伝えたいと思っていたポイントがきちんと伝わっているかを確認しましょう。修正する際には、以下の3点を意識してみてください。

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1. 文章の順番を変える

文章の順番を変えるだけで印象が変わります。たとえば、自分語りの部分を書き出しに持ってきたり、あらすじの説明を後ろに移動したりなど。読みやすさを意識しながら文章の順番を変え、リズムを整えましょう。

2. いらないところを削る

文章は短いほうがわかりやすいです。読み返してみて余分かなと感じるところは、思い切って削りましょう。三宅さんのおすすめは、削った部分だけ別の場所にコピペして置いておくこと。そうすれば、削ったあとで「やっぱりあったほうがいいかな」と思ったら、そこから引っ張ってくることができます。

3. 長かったら章に分けてみる

文章が長くなってきたら、話題ごとに章に分けて目次をつけましょう。章に分けずにただバーッと書いていると、自分でも何がなんだかわからなくなってしまうもの。目次をつけると自分のなかでも整理できます。

最後に

"推し"を伝える文章を書くうえで一番大事なのは、「自分の細かい愛情を伝える」こと。自分はこの作品のどこが一番好きなのか、伝えたいポイントはどこなのか。それを意識しながら、この記事を参考に、多くのひとに"推し"の魅力を伝えてみましょう。

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