ピアスの穴に秋風が抜けてゆく。
古い木の甘い匂いが、校舎を纏っている。
ある日の放課後。校庭の喧騒やテニスボールがコートで
跳ねる音に紛れて、聞こえてきたピアノの調べ。
その音に導かれるようにして、重い木の扉をゆっくり開けた。
グランドピアノの前に座って、ピアノを弾いているのは赤坂先生
だった。
ピアノの上にはなぜかピスタチオが一粒だけ乗っかっていた。
気が付くと、グランドピアノのそばまで行っていた。
なぜだかわからないけれど、終わると哀しくなるからおわら
ないでって思いながら聞いていた。
赤坂