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アル代表・けんすうさん流SNSのつづけ方。発信で大事なのは相手の目線に立つこと

noteプロデューサーの徳力基彦さんをモデレーターとして毎月開催しているトークイベント「ビジネスに役立つnoteやSNSのつづけ方」シリーズ。このイベントでは、SNSをフル活用している企業の方にご登場いただき、そのノウハウと心構えをお話しいただいています。

このスピンオフ企画「インタビューシリーズ」では、「Startup Hub Tokyo」協力のもと、スタートアップの代表や先鋭的な企業で活躍しているビジネスパーソンに、SNSとの出合いや自身がビジネスでSNSをつかいこなすようになったきっかけ、現在の活用法などをおうかがいしています。

6月28日(月)に開催されたシリーズ第4回目では、アル株式会社代表取締役・けんすうさんが登場。学生時代にインターネットでコミュニティサービスをつくりはじめ、現在はさまざまな事業を手がけているけんすうさんに、「起業に役立つSNSのつかい方とは?」をテーマにお話をお聞きしました。

ゲスト紹介

けんすう(古川 健介)さん

けんすうさんプロフィール写真

1981年生まれ。浪人時代に受験情報掲示板「ミルクカフェ」を開設。その後、学生時代に掲示板システム「したらばJBBS」を運用するメディアクリップの社長に就任。同システムは後にライブドア社に売却。新卒でリクルートに入社、同社在職中の2007年にロケットスタート社(2012年にnanapiに社名変更)を起業し、2009年にはnanapiをローンチする。2014年にnanapiをKDDIへM&Aし、翌2015年にKDDI傘下に設立されたSupership社の取締役に就任する。2019年1月にローンチしたマンガ情報共有サービス「アル」を手がける。
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「起業のために頑張ってSNSをはじめる」のはおすすめしない

──けんすうさんはいま、どんなSNSをつかわれていますか?

起業に関係するものだと、Twitterとnote、あと自社サービスの「00:00 Studio」の3つが多いです。

──00:00 Studioはどんなサービスなのですか?

「作業中を配信する」というコンセプトのライブ配信サービスです。漫画家さんが作画を配信したり、ハンドメイド作家の方が作品をつくっている様子が配信されています。

──けんすうさんはほかにもマンガ情報共有サービス「アル」、デジタルデータ販売サービス「elu」を手がけられている文字通りの起業家ですが、やはり新しいサービスを多くの人に知ってもらうためにSNSをずっとつかいつづけているのでしょうか?

事業のためにSNSをつかっているというよりも、もともと発信するのが好きだからやっている感じですね。いまFacebookで「アル開発室」という有料のオンラインコミュニティをやっていて、毎日3000字くらいの文章を投稿しているんですが、それでも抑えているぐらいなんです。ツイートも一日30回くらいしていますが、これも情報発信のためにやっているというより、投稿を我慢してこの数、という感じです。なので、我慢できなかったぶんが投稿されているという感じなんですよ。

ですから、「いまはSNSをやっていないけど起業するために頑張ってはじめよう」というひとがいても、SNSでの情報発信はあまりおすすめしていません。発信が苦手なひとが無理して何かを発信しようとするのは大変だと思います。

──確かに。そういうひとは苦手な発信に力を注ぐより、そもそもの事業を頑張ったほうがいいですよね。

おっしゃる通りです。逆に言うと、発信できなかったからといって落ち込む必要はないということです。SNSを流入元にしたいのであれば、自分が発信をする以外にもやり方はあるので、そのへんも併せて考えるといいのではと思います。

イベント風景1

インターネットで横のつながりが広がった

──けんすうさんがインターネットで情報発信をはじめたのは高校1年生のときだそうですが、なぜはじめたんですか?

それまではマスメディアしか情報発信できなかったのに、高校生でも自分のアイデアや考えたことをひとに伝えられるという体験がめちゃくちゃおもしろく、感動しました。当時はSNSや日記サービスもなく、交流したければ自分でホームページをつくって掲示板を設置するほうが手っ取り早かったので、自らサービスづくりをはじめました。

──起業をしたかったのではなくて、「ネットでコミュニケーションできるってすごい」というところから入っているんですね。

そうです。僕は「起業家になりたい」と思ったことはたぶんないです。起業仲間も1社目を辞めるまではいませんでした。確かライブドアにサービスが事業譲渡された後くらいに、SNSができて、そこではじめて起業家との横のつながりができました。

当時の象徴的な出来事としては、2004年に友達がGREEやmixiなどをつかって素人を集めてつくった「劇団ブサイコロジカル。」を手伝ったことです。当時はSNSで知らないひと同士がつながって劇団を立ち上げるということがすごく珍しかったんです。ポッドキャスティングや劇団員のブログを公開して情報発信し、スポンサーを募って費用を集めたりしました。ショートムービーをつくってYouTubeで流したり。いまだと当たり前だと思うかもしれませんが、そのころは珍しくて話題になり、公演も成功しました。

──けんすうさんは自らサービスをつくっている側ですが、ご自身もそこに可能性を感じてたのしんでいて、みんなにもたのしんでほしいと思っているんですね。

はい。プラットフォームというか、そういうみんなでたのしめる場所をつくるのは好きですね。

イベント風景2

サービスの過程を見せて顧客を巻き込む

──ご自身の起業、事業に対してどういうふうにSNSを生かしているかをお聞きしたいと思います。いま重要視しているSNSのこだわりのつかい方は?

起業ということで言うと、最近よくnoteに「未来こうなると思ってます、いまこういうのつくってます」という投稿をすることが多いです。予測を書いた上で「こういうのつくってます」と発信すると、読んでいるひとが「これどうなるんだろう」と継続的に気にしてくれたりするので。

──いわゆる「プロセスエコノミー」ですね。サービスの過程を見てもらってみんなを巻き込んでいくという。

はい。いかにも宣伝の投稿ってあんまり読まれないので。あとは、SNSをやっているひとはほぼ全員が自分の宣伝をしたいとか投稿を見てもらいたいと思っているので、そこを刺激してあげるほうがいいなと考えています。去年、「#私を構成する5つのマンガ」というハッシュタグをはやらせたんですが、これは「私」を入れることでみんなが自分語りをしたくなるところがポイントです。

また、僕のブログやnoteも、「自分がモヤモヤ考えていたことを言語化してくれた」という感じで紹介されることがすごく多いんです。自分自身の考えを発信するというよりは、みんなが思っていることを代弁しているというような書き方にすると、結果的に読んでもらえるのではと思います。コミュニティサービスにしろ起業にしろ、お客さん目線に立つことが一番大事なので。

──けんすうさんの『「何者かになりたくなる」SNSはそろそろ衰退していくのかな?という予感』というnote記事は、読んでいてまさにストンと腹に落ちる感じがしました。初心者の方へ文章を書く上でのアドバイスは何かありますか?

上手に書こうとしないことが大事だと思います。僕も難しい表現は一切捨てていて、結構単純な接続詞を多用したりしていますね。そうするとだいぶ楽になります。Webの場合はとくに長い文章は読みづらいので、最初は斜め読みされやすいように単語を並べるぐらいの感じで書くほうが楽な気がします。

──視聴者のみなさんが発信する上で「ハードル高いな」と思っているところをどう乗り越えるか、今日のけんすうさんのお話にはヒントがあるように思います。本日はありがとうございました。

次回は、Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長の伊藤羊一さんが登場する予定です。

interviewed by 徳力基彦 text by 渡邊敏恵

*この連載は、ダイヤモンドシグナルにも寄稿しています。


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