noteで1年間に数千万円の収益!『近代麻雀』が活路を見出した有料記事のサブスク販売とは
麻雀漫画専門誌として根強いファンを抱える月刊誌『近代麻雀』(竹書房)。漫画のほかグラビア、コラム、Mリーグ(*)情報など、麻雀に関するあらゆる情報を掲載しています。
2021年からはnoteで有料記事の販売をスタート。紙の雑誌に掲載している漫画などのほか、「近代麻雀ノート」だけで読める書き下ろし記事を販売し、1年でなんと数千万円の収益を上げました。
既存メディアがnoteをはじめる意義や、有料noteで収益を伸ばした手法を、編集長の金本晃さんにうかがいました。
収益を上げる方法を模索していた先に、noteがあった
——竹書房には自社Webメディアとしてすでに「近代麻雀 THE WEB」「キンマweb」があります。その上でnoteを始めたきっかけは?
金本 晃さん(以下、金本):noteは、フリーライターの福地誠さんがきっかけで知りました。福地さんは自身の有料記事の売り上げランキングなどを赤裸々に公開していて、その様子がおもしろかったので1年くらい眺めていたんです。
しばらくして、日本プロ麻雀連盟の黒木真生さんからnoteをはじめたいと相談がありました。麻雀の正しい歴史を書き残しておきたいが無料だとしんどい、だから編集部で原稿の取りまとめをお願いできないか、という内容でした。
そこではじまったのが「近代麻雀黒木」noteです。記事の収益は黒木さんと編集部で折半しています。
「近代麻雀黒木」noteがうまくいったので、1年ほどしてから本誌のnoteをはじめました。せっかく紙の雑誌を作っているので、その資産を生かす意味もあります。
——運営体制は?
金本:編集部員は私を含めて6名。原稿入稿などの作業を全員で行っています。
実験しながら収益につながる有料記事を模索
——3種類のマガジンを販売していますが、どういう意図があるのでしょうか?
金本:現在「近代麻雀ノート」では、「Mリーグ記事特化型note」(月額500円)、「麻雀マンガ特化型note」(月額500円)、「近代麻雀note」(月額980円)の3つのマガジンを用意しています。
noteをはじめた当初はMリーグ、麻雀最強戦(*)、戦術、漫画、小説などすべてが読める「近代麻雀note」マガジンしか用意していませんでした。しかし同時に、「もしかしたら最強戦だけ、あるいはMリーグだけの記事が読みたい読者もいるのではないか?」などと仮説を立てて、コンテンツの出し方をいろいろと実験したんです。
結果的に、Mリーグ関連の記事が売れたので現在の形になりました。とはいえ一番売れているのは全部入りの「近代麻雀note」マガジンです。
——値付けはどのように考えましたか?
金本:「近代麻雀note」マガジンは、紙の本誌の定価890円にならいました。「Mリーグ記事特化型note」「麻雀マンガ特化型note」は実験の結果、月額500円くらいが適正という感触を得たからです。
——どういう記事がnoteと相性がいいのでしょう?
金本:Mリーグ関連の記事ですね。より正確にいうと、Mリーグを観戦している層が読むコンテンツが売れています。体感的に、麻雀を観戦するファンの9割がMリーグ、1割が麻雀最強戦を観ていると感じていて、それがそのままnoteでの売り上げにも反映されているのかな、と。
おもしろいことに、売れる漫画の傾向もハッキリ分かれています。たとえば、Kindleでは今年で連載25周年を迎える『むこうぶち』(天獅子悦也)がすごく売れているんです。noteではMリーグファンが読みやすいプロ雀士をテーマにした漫画『ピークアウト』(塚脇永久)の売れ行きが絶好調。塚脇先生ありがとうございます!
どちらも『近代麻雀』の連載ですが、読者層がまったく違うんですね。接するメディアも違うのかもしれません。これもコンテンツの出し方を試行錯誤して分かったことです。他の出版社も実験してみるといいと思います。
——noteだけで読める書き下ろし記事もありますね。
金本:はい。書き下ろし記事のおかげで売り上げが伸びました。やはりnoteなら、Mリーグの昨日の対戦結果といった速報性を求められる情報をすぐに載せられますから。紙だと、どうしても1ヶ月前の内容になってしまいます。
なお、紙の『近代麻雀』の読者層は50代がメインで9割が男性です。70代の方が読者ハガキを送ってくれたりするんですよ。そして、コンビニでの購入が8割。「近代麻雀ノート」で売れている記事の傾向を踏まえると、紙の雑誌は往年のファンが購入し、noteはMリーグを観ている層に受け入れられているのだと思います。
noteのおかげで『近代麻雀』が生き延びている
——記事の宣伝で工夫されていることはありますか?
金本:noteの記事をXで宣伝しているくらいですが、宣伝するXアカウントは麻雀最強戦公式アカウントを利用しています。新しく公式アカウントを作るよりも、すでにフォロワーがついているアカウントで宣伝した方が効率的かな、と。
また、冒頭でお話しした黒木さんや安藤りなさん、橘哲也さんといったプロ雀士の方々が、すでに形成されているコミュニティーで自発的に記事を拡散してくれているので、それぞれの発信も流入元になっています。
——noteをはじめて感じている効果や良かったことはなんですか?
金本:noteの売り上げのおかげで、『近代麻雀』が生き延びていることです。noteがなかったら『近代麻雀』は赤字を補えなくてつぶれていたと思います。なのでnoteには、僕もそして竹書房もすごく感謝しています。
「近代麻雀黒木」に原稿が溜まり、そこから単行本を2冊刊行できたことも、よかったですね。noteで利益が上がり、さらに単行本でも利益を出す、という全員が幸せになる仕組みを作れました。
そしてこれは雑誌の収益化とは異なるnoteの使い方ですが……。プロ雀士の庄田祐生さんが令和6年能登半島地震で被災してしました。そこで彼をサポートするため、黒木さんに急遽「プロ雀士スーパースター列伝 庄田祐生 編」を執筆していただき、記事の売り上げとサポートされた全額を、庄田さんに企画協力費として支払うという取り組みを行っています(2024年1月末まで)。たくさんの反響をいただき、2024年1月12日の時点で約46万円もの売り上げを得ることができました。こういう使い方ができるのも、noteの魅力だと思います。
——今後の展望を教えてください。
金本:Mリーグのおかげでプロ雀士の認知度は5年前に比べて5倍に増えました。しかし、ファン層が広がったかと問われると、個人的には単純に「はい」とは言えないと思っています。
というのも、麻雀アプリやオンライン麻雀のプレイヤーは増えていますが、リアルに対面してプレーを楽しむ昔ながらの雀荘(麻雀をする場所を提供するサービス)は減っているんです。たとえば、かつて早稲田大学周辺にたくさんあった雀荘は激減しています。安くていい雀荘がたくさんあったのですが、いまは麻雀をする学生が減っているのでしょう。その現状を見ると、素直にファン層が拡大しているとは言い難いと感じています。
ですから麻雀界の活性化のためにも、私たちはさまざまに工夫を凝らし、noteの読者を増やして業界を盛り上げたいと思っています。
定期購読を申し込んでくれた方は初月無料にしたり、noteのイベントスペースで麻雀イベントを開催するのもいいかもしれません。noteでのコンテンツ販売をさらに強化して収益を上げ、読者や麻雀界に還元できればと思います。
近代麻雀ノート https://note.com/kinma
近代麻雀黒木 https://note.com/kinmakuroki