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シン・MaaS(2):マネタイズするためのビジネス構造

こんにちは。某会社でMaaS事業を推進しています。

前回の記事で、アズアサービスで見直すMaaSのコンセプトについて記載しました。

今回は、MaaS業界がどんな構造をしているのか、をテーマに記載したいと思います。

MaaS業界のプレーヤー

3つのキープレーヤー

MaaSのプレーヤーというと、自動車メーカーやシステムベンダーなどを思い浮かべるかもしれません。

確かにそれらの企業は巷のMaaS業界マップなどに登場しますが、あくまでサプライチェーン上のプレーヤーとなり、縁の下の力持ち的な存在です。

その力持ちに支えらながらMaaS業界の構造を決めるキープレーヤーは、大きく3つの業界の企業群となります。

運行事業者 
交通サービスを提供する運行事業者です。この事業者がいないと始まりません。鉄道、バス、タクシー、飛行機などの会社で、モビリティサービスを直接ユーザーに提供できるプレーヤーです。

MaaS用語でモビリティプロバイダなどと呼ばれたりもします。最も重要なプレーヤーとなります。

MaaSオペレーター
複数の運行事業者が提供するサービスを束ねて、情報検索や決済を一元的に代行する事業者です。

情報の横断検索ではGoogleやYahooなどが代表かと思います。

前回の記事でも記載した通り、この事業形態はビジネスモデル上、経済規模を取るる事が難しく、並大抵のプレーヤーにとって、この事業を単体で行うことは困難かと思います。

事業会社 
運行事業者以外のサービスをユーザーに提供する会社です。スーパーやレストラン、ファッションリテール、はたまた病院、マンション経営会社、動画配信サービス会社などあらゆる業界です。

MaaSのビジネスモデルにおいて、モビリティに関する資産、リソースを直接は持たずにユーザーに交通サービスを提供するプレーヤとなります。

MaaSで変わる交通サービス

向上するユーザーの利便性

アズアサービスで見直したMaaSにより、交通サービスを運行事業者以外のプレーヤーが提供できることが大きなメリットです。

クレジットカードでは、VISAやMastercardなどのブランドがありますが、カードをつくる際は、VISAで直接作るのではなく、自分がよく使うコンビニや携帯電話会社などが発行するクレジットカードを比較してカードをつくると思います。

クレジットカードのお買い物ではポイントが溜まったり、決済方法が楽になったり、ベネフィットを受けています。

「お金を支払う」という行動は生活の上で必ず必要になるため、いろんな業界のプレーヤーがクレジットカードを発行してメリットを享受しようとしています。

「移動する」という行動も同様に生活の上で必要になるため、クレジットカードのモデルと同様の構造が期待できると考えられます。

例えば、どうせ定期券を買うなら、イオンでの買い物が安くなったりポイントがついたり、イオンへの寄り道移動が特典でついてくるイオン定期券があれば、ユーザーにとってもメリットがあるのではないでしょうか。

好きなテーマパークのアプリでファストチケットなどを購入しつつ、帰りの電車もそのチケットが使えたりすると便利かもしれません。

カギとなる運行事業者の機能開放

運行事業者は、地域の足としてすでにモビリティサービスを提供している強みがあります。

移動するためにはユーザーは運行事業者が提供している交通サービスを利用せざるを得ません。

運行事業者はある種の独占権を持っており、運行事業者の保有する集客場所や提供する情報には、非運行事業者にとって価値があると考えられます。

「時刻表データの提供」、「モビリティの運行委託」などについてはすでに実現しているビジネスモデルですが、これは運行機能のアズアサービス化であり、MaaSの一部としてみることができます。

まだ開放されていない運行機能を運行事業者が開放しサービス提供することで、ユーザーにとって利便性の高い交通サービスが生まれる可能性があります。

そのような状況が実現したとして、各キープレーヤーがどのような価値を提供しあうのかをビジネス構造をみて考えてみます。

MaaSのビジネス構造

全体俯瞰図

各プレーヤーを交えたビジネス構造のピクト図は下記のようになります。

一番左のモデルは、運行事業者がユーザーにモビリティサービスを直販するモデルです。

鉄道会社が自社のアプリ(運行事業者I/F)で列車の予約や、実際に列車運行を運営するモデルで、一般的なビジネスモデルとなります。

真ん中のモデルは、複数の運行事業者を束ねたMaaSオペレータが提供するサービスを通じてユーザーにモビリティサービスを提供するモデルです。

例えば、Yahooが複数の運行事業者の時刻表データを用いて、Yahooのアプリで乗換検索を提供していますが、これはこちらのモデルとなります。

一番の右のモデルは、非運行事業者である事業会社が、運行事業者やMaaSオペレータが提供するサービスを通じて、ユーザーにモビリティサービスを提供するモデルです。

例えば、IKEAは自社ブランドの送迎バスを運行していますが、これはこちらのモデルとなります。

図の中で右側に向かうに連れて、ユーザーは間接的にモビリティサービスを受けることになり、運行事業者の存在を意識しない状態になります。

各プレーヤーのメリット

このようにビジネス構造を考えてみると、全てのプレーヤーにメリットがあることがわかります。

ユーザーメリット
ユーザーは自分がよく利用するレストランやショッピングモール、動画サブスクなどのサービスを通して交通サービスを受けることができます。

モビリティサービスを利用する際に、運行事業者のサービスを直接利用する必要がなく、また各社が提供する付加価値サービス受けられるようになる可能性があります。

事業会社のメリット 
自社向けの独自のモビリティサービスの提供による囲い込みや、定期券の購入、運行情報の閲覧などの交通サービスを使うタイミングを通じた新たな顧客接点を持てます。

運行事業者のメリット 
事業会社などからの手数料など新たな収益源を獲得できます。また、交通サービスの利用とは違ったタイミングでの顧客接点を持つことができ、新たな顧客層を獲得することができます。

まとめ

現在、運行事業者があまり機能を開放しきれていないため、アズアサービス化された運行機能によるモビリティサービスはYahoo乗換検索やIKEAの送迎バスなどの範囲に留まっています。

運行事業者が自社の持つサービスを機能開放する方向に踏み切れば、世の中のいろいろな企業と提携された多種多様なサービスが生まれるのではと思います。

まさにオープンイノベーションが交通サービスを変えるチャンスになると思います。


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