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眠れない子ども

子供の頃、ぜんそく持ちで病弱だった。

夜中に発作が起きて、眠れない夜をたくさん過ごした。

「目、赤くない?」といつも友達に言われてた。

だって寝てないんだもん。万年睡眠不足。

ちょっと体を動かすとすぐ発作が起きるから吸入器を持ち歩いてた。

健康な友達が羨ましかった。

小児ぜんそくで中学生以降はすっかり良くなったけど、大人になってから一回だけ発作が起きた。

本当に息ができなくて苦しすぎて、命落とすんじゃないかと思った。

小さかった頃の自分、よくこんなの耐えてたな。



眠れない夜は長い。とてつもなく長い。

私の部屋には高窓があって、二段ベッドの上段からいつも窓の外を眺めてた。

月、星、かすかに見える好きだった男の子の家の灯り。

妹の寝息、通り過ぎる車、たまにポコンとなる加湿器の水の音。

光も音も存在するのに、本当はこの世界に自分ひとりしか存在してないんじゃないかなんて気がしてた。

その不思議な感覚は今もずっと続いてたりする。


神様は私に考える時間を与えすぎた。

宇宙の果てを想像して、いつも途中で挫折した。

地球が滅亡する日を想像しては怯えた。


思考は止まらない。

おじいちゃんのおじいちゃんってどんな人だろう?

なんで動物は教わらなくても子育てができるんだろう?

どうして人は嘘をつくんだろう?

どうすれば戦争がなくなるの?


もちろん答えにたどり着いたことはない。

そんなことを考えてるうちに朝日が昇る。

朝になると発作も落ち着く。

VIVA 太陽

ぜんそくに一番効くのは、きっと太陽だと思うよ。


とにかく私は眠れない子どもだった。考える子どもだった。

夢の中で過ごす時間がもう少し長かったら、私はもっと違う人間になってたんじゃないかと思う。


幼い日の私、よく頑張りました!

大人になった私はちゃんと頭使って仕事して、磨いてきた思考で人生切り抜けてきたよ。

思考は誰にも奪われない私だけのもの。

もう、ぜんそくにはなりたくないけど、眠れない夜ありがとう。

哲学少女は風邪ひとつ引かない健康体になったよ。

めでたし。


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