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266.東京地方裁判所が「入れ墨は著作物である」という判決を下した。

1.入れ墨は著作物か?


 
2009年7月29日、東京地方裁判所が「入れ墨は著作物である」という判決を下した。この裁判は「入れ墨」が著作物として認められるかどうかが争われた判決である。
東京地裁の岡本岳裁判長は入れ墨に「思想が創作的に表現されている場合」は著作物にあたると判断した。

この裁判はある男性が自分の出版した自叙伝の表紙に自らの身体に彫られた入れ墨を彫師の名前を掲載せずに勝手に使用したということで、使用した男性とその本を出版した出版社を相手取り、「著作者人格権を侵害された」として彫師が訴えを起こし、裁判所は彫師に万円支払うように命じた事件である。

つまり、この男性はお金を払って自分の身体に入れ墨を入れたのであるから、自分のモノだということを主張したが、裁判所はその入れ墨は著作物であり、著作権、著作者人格権があるものと認定した。

また、その本の表紙の扱いは画像処理が行われており、セピア色に加工されていたため、勝手に改変したとされ「著作者人格権侵害」とされた。

この判決は日本中の入れ墨を入れている者たちにとって衝撃を与えた?
昔は入れ墨といえば特殊な世界の人達の専売特許だったが、現在はファッション?

この入れ墨が良いか、悪いかではなく、入れ墨を入れる者の心理は何かしら他人に見せたいという考えがある(自己満足の人もいるが)。

そのため写真に撮影したり、本や雑誌に掲載している者たちもいる。
さらに映像の世界でもその入れ墨が写されている場合もある。

その場合、すべて著作者である入れ墨師の許可が必要になる。
そのため今後、入れ墨を入れてもらう者は彫師に彫ってもらう前に使用許諾を取る必要がある。

もちろん代金を支払い、著作権を正式に譲渡されていたとしても、何らかの使用する場合は彫師に許可をもらう必要がある。

裁判所の判決文には、
「下絵の作成に際しての構図の取り方や仏像の表情等に創意工夫を凝らし、輪郭線の筋彫りや描線の墨入れ、ぼかしの墨入れ等に際しても様々な道具を使用し、技法を凝らして入れ墨を施したことによるものと認められ、そこには原告(彫師)の思想、感情が創作的に表現されていることができる。したがって、本件入れ墨について、著作物性を肯定することができる。」
、という。

さて、あなたの入れ墨は、今後使用する場合彫師(著作者)に必ず許可をもらう必要があります。



2.サンリオがキャラクター模倣?に販売停止?


左「ミッフィ」右「キャシー」


 
2011年6月11日。オランダの作家ディック・ブルーナーといえばウサギの女の子のキャラクター「ミッフィ」の生みの親で有名人気作家だ。

そのブルーナー氏がサンリオのウサギのキャラクター「キャシー」が模倣したとして訴えを起こした。

サンリオの関連商品の生産停止を求めた。

訴えを起こしたのはブルーナー氏の著作権を管理するオランダ企業のメルシスという会社だ。

アムステルダムの裁判所は作家側の主張をほぼ全面的に認め、サンリオにオランダでの生産、販売の即時停止を命じた。

同裁判所ではサンリオのキャラクター「キャシー」の細部に至るまで「ミッフィのコピー」と認定した。また、この判決に応じない場合、1日25000ユーロ(約280万円)を支払うことになった。

サンリオの「キャシー」は「ハローキティ」の友達という設定になっているキャラクターである。

サンリオ側は、
「当社としては判定を不服としており、原告の権利を侵害していないことを今後も裁判を通して主張していく」(東京新聞11月4日号記事でのコメント)。

しかし、この争いは困ったものだ。

「ミッフィ」をフアンに持つ多くの子供たちや「キャシー」を愛する多くの子供たちにとってはこの争いはまったく関係ない出来事であり、どちらが勝っても、負けてもある意味悲しい出来事のひとつだからだ。

しかし、「ミッフィー」のキャラクターを管理している著作権管理会社は驚いた和解案を持ちだしたことを知る人は少ない。

同年3月日に起こった未曾有の東日本大震災に心を痛めていた「ミツフィー」側が、サンリオに対して、「訴訟するよりもその費用を被災地の復旧にあてよう」と和解を持ちかけた。

その結果、両者は係争中の訴訟を取り下げて、共同で万ユーロ(約1760万円)を義援金として被災地に贈ることを決めた。

「ミッフィー」と「キャシー」が二人で力を合わせたことも素晴らしいことだが、互いが係争中に関わらず、被災地の復興支援による解決に結びつけたのは凄いことでもある。

しかし、残念ながらサンリオ側からは「キャシー」は今後使用しない方針を発表した。

「キャシー」君は、これからどこに行くのだろう・・。




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