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不安の正体 【740字】


午後五時をすぎたあたりだった。まだ夏の暑さが残る時期だというのに、この辺りはもうすでに長袖を着こまないといけなかった。もちろん辺りに人影は見当たらない。太陽はかろうじて照らしていたが、あと1時間もすれば真っ暗になるだろう。風はなかった。

そろそろ今夜の寝床を見つけなければならない。9KGの荷物を持ち、12時間も歩いていた身体は、すでに限界を迎えていた。あと、1キロメートルほど歩けば休憩所があるはずだ。力を振り絞り、少しずつ進む。道が下り坂になってくる。休憩所は山と山の丁度、谷間に合った。すぐ横を川が流れている。あまり綺麗な川ではない。そのままは飲めなそうだ。休憩所と言っても、豪華なものではない。かろうじて屋根がある。風は凌そうにないが、雨は凌そうだ。ベンチもガタついてはいるが、横になるスペースはある。ここでなら一夜は過ごせそうだ。

夕食のパスタを食べ終えると、少し風が出てきた。あたりはそろそろ暗く、雲も出てきた。寝支度を整え、横になる。仕事をしていたら、今はまだ働いている時間だということに気づく。それにしても和歌山くんだりまできて何をしているのか。明日も日が昇ると同時ぐらいに起きるだろう。眠りについた。

どれくらい眠ったかはわからない。なにか大きな音に、起こされた。一定のリズムでなる音。まだ暗い。
パチン、パチン!
風はもう止んでいた。代わりに小雨が降ってきていた。
パチン、パチン!
目を擦りながら、時計を見る。時刻は3時45分を指していた。まだ眠れると思い、横になる。
パチン、パチン!
だんだん近づいてくる。
パチン、パチン!
勇気を振り絞り、ライトを当てる。人影はない。

ゆっくり、ゆっくり音のなる方に近づいていく。

そこには小さな小さな虫けらが、草を切っていた。
パチン、パチン。

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