楠木 スグル

言葉で表現すると直接的すぎて、絵画だと抽象的すぎる。 そんなちょうど真ん中にあるような…

楠木 スグル

言葉で表現すると直接的すぎて、絵画だと抽象的すぎる。 そんなちょうど真ん中にあるような物語を描いてみたいです。

最近の記事

ミレニアム・コンプレックス#1

いつからだろうか。なににも満足できなくなってしまったのは。美味しいものを食べていても、好きな映画を見たとしても、好きな子といても、満足できない。どんどんどんどん次のものに手が出てしまい、抑えることができない。その行為はもはや吸収しているのではなく、単なる消費を繰り返しているのにすぎない。次がら次へと、新しいものが登場しそれはものすごい速さで通り過ぎていく。先月新しかったものは、今月もうすでに古い。 やるせない日々をひたすらに送っているのである。 別に仕事に不満があるわけでは

    • 「100文字小説」

      ガシャ、ガシャ。ゴロゴロゴロゴロ、ポトッ。 小さく息を吸い、出てきたカプセルを開く。 父:年収1千万。趣味、バイク・スポーツ観戦。 母:専業主婦。趣味、ピアノ・芸術鑑賞。 兄弟:弟2人。 彼は、そのかみを捨て、またレバーに手をかけた。

      • 不安の正体 【740字】

        午後五時をすぎたあたりだった。まだ夏の暑さが残る時期だというのに、この辺りはもうすでに長袖を着こまないといけなかった。もちろん辺りに人影は見当たらない。太陽はかろうじて照らしていたが、あと1時間もすれば真っ暗になるだろう。風はなかった。 そろそろ今夜の寝床を見つけなければならない。9KGの荷物を持ち、12時間も歩いていた身体は、すでに限界を迎えていた。あと、1キロメートルほど歩けば休憩所があるはずだ。力を振り絞り、少しずつ進む。道が下り坂になってくる。休憩所は山と山の丁度

        • 花火と海、少しのビール

          最悪な1日だった。 大学2年の夏、当時付き合っていた彼女と花火大会に行く予定を立てていた。彼女は気が強く、気分屋なところがある。 よく振り回されることが多かった。 その日も突如 「私、浴衣きていくからあなたも着てね」 と言われた。 一人暮らしの私はそんなもの持っていない。 朝から友達に聞き周り、やっと貸してくれる優しい友達を見つけたのは昼をすぎてからだった。 花火大会の会場に着くまでに、お酒とおつまみを買っていく。会場の周りのコンビニはもう混み合っていた。海岸から見るこ

        ミレニアム・コンプレックス#1

          協奏曲 [1000文字小説]

          何気ない言葉が人生を決めてしまうことがある。 相手はなにも思っていなくても、ただの無味乾燥なこたえであったとしても。 大学四年生のとき、大人になる直前にそんな言葉をかけてもらった。 それまで私は教師に対して、信頼や尊敬の念を抱いたことがなかった。中学校、高校と男性特有の思春期が長引き、「教師なんか」と話を聞くようなタイプでは無い。 だから、大学に行ってもどうせ教師にはロクな人はいないと思っていた。部活が忙しく、大学では授業にほとんど出ていなかったように思う。出ていても真

          協奏曲 [1000文字小説]

          アサガオ

          私が幼稚園に通っていたとき。 アサガオを育てて、生命の大切さ・育てるということを学ぶのだ。 どこの子どもでも一度はやったことがあると思う。 そして、それは男の子ならわかるかもしれないが、気乗りはしないものだ。 毎日欠かさず水をあげたとしても芽すら出てくれない。 我慢の連続。すぐには反応してくれない。 水をあげすぎると、枯れてしまう。丁度いい具合というのが存在するらしい。 そんなこと、5歳の私には気づかえない。 1週間か、2週間か定かではないが、芽が出るまで時間をかけない