静かな毒

毎日聞こえる母のため息。テレビの音より小さいはずなのによく聞こえる。就職に失敗したこと、父親が倒れたこと、ため息が聞こえるたびに何もかもやり直したいと思う。母のため息はだんだんと僕を覆い尽くし、僕が不幸そのものになり、静かに、僕は母を不幸にしている。そんな気がする。