いまだからこそ必要な自分を守るリフレーミング技術
イスラエルーハマスの戦争が始まって
すでに1か月が経過している。
SNSやメディアでは、ガザ地区での悲惨な状況が日々流れており、いまなお停戦の兆しが見えない。
私の周りでは、パレスチナの人道支援の現場で
仕事をしている知人やパレスチナにゆかりのある友人が少なくない。
私自身もパレスチナに2回訪問し、
現地にも友人がいる。
そのような経験と自身の人的ネットワークの特性ゆえに
SNSの情報で日々心を痛める人やパレスチナに関する情報を集中的にリサーチすることで日常生活に悪影響を及ぼしている人(家庭関係の悪化、精神不安定)を
見聞きした。
私自身もこの現実に目を背けてはならないと感じて
集中的に記事をリサーチしたり、ガザのオンラインイベントなどに参加している。
そして、この問題に入り込みすぎること
(ズームイン状態)でメンタルが不安定に陥る
危険性を痛感した。
戦争が始まった直後の大学院のマスメディアの授業で
メディアの記事を正しく読み解く
社会科学分野における
「フレーミング、リフレーミング」という
理論・概念を習った。
この授業と教授の言葉が非常に印象に残っており
この紛争に対して考え方を深める一助になるだけでなく
自分自身を守る武器になるのではないかと思い
このテーマを取り上げたい。
フレーミング理論
リフレーミングを理解するために押さえておきたい言葉が「フレーム」、「フレーミング」だ。
フレームの具体的な定義は下記の通りだ。
※日本語でフレーム・フレーミングを検索して場合、ネット用語の異なった説明が出るため、原文と日本語訳を載せている。
つまり、思考する際の特定の枠組み、抽象的な考え方が「フレーム」であり
特定のフレームの解釈を促進するためのプロセスを
「フレーミング」と呼び、社会科学における重要な理論の1つである。
同じ事実やテーマでも、どのフレームを使うかによって、物事の見方が変わってくる。
例えば、コーヒー豆のビジネスにおいて
売る側と買う側にはそれぞれのフレームがあり
異なった視点を持つ。
売り手のフレームは、時間が経過している豆を早く販売して在庫を処分したいが、
買い手のフレームは、鮮度の良い豆
(直近で焙煎された豆)を探す視点で購入を検討する。
売る側のフレームからすれば、店側の事情を追求することで顧客の鮮度の良い豆という側面(フレーム)が省略される場合がある。
何かを考える時には、何かを省略されることがある。
特定のフレームとその省略の概念が
メディアを通じて得る情報、仕事・人間関係で非常に関連があると感じた。
フレーミングとメディア分析
このフレーミングをメディア分析に応用することで、より上位概念で物事をとらえることが出来る。
メディア分析におけるフレーミングの機能は何か?
特定フレームがある側面を際立てることに関して
リトアニア国内の移民問題を例にしてみたい。
2021年からリトアニアではベラルーシとの国境で
非正規移民の流入による国内情勢の不安定化を恐れ
国境の入国規制を強めている。(Joanna H,2021)
このニュースを事例に挙げれば
リトアニアの安全保障のフレームを使えば
移民受け入れの規制を正当化できる。
一方で人道や人権のフレームから捉えれば
リトアニアの政策を批判する記事になる。
中東紛争も同様に、イスラエルとパレスチナの観点から
人道、外交、自衛権等のフレームを
見ることで全く異なった見方になる。
同時にとあるフレームには、何かが省略されてる。
だから特定のフレームだけを見ていると
意見に偏りが出たり、物事の視野が狭くり
結果として、本質的な問題解決から離れてしまう。
フレームを変えるリフレーミング
この具体例をもとに大学院の教授が強調していたことが
なぜか非常に心に刺さった。
You need to change the frame. Step back !
フレームを変えなさい。今のフレームから離れなさい。
人は無意識に特定の見方をするし、特定のフレームの記事を集中的に見てしまう特性がある。
だからこそ、意識的に起きた事象に対して
現状のフレームを変えるリフレーミングが
今だからこそ本質を捉える武器になるのではないか。
そして、このリフレーミングは、物事の視野を
広げたりするだけでなく、自分自身を守る
メンタルヘルスの観点からも非常に有効だと確信した。
冒頭の例のように、中東情勢というフレームを
1日中考えていれば、精神衛生的に悪影響を及ぼす。
それは、自分自身だけでなく、
周りへの被害を与えかねない。
このとき、意識的に、強制的に特定のフレームを
一時的にも投げ捨てて、思考出来ない状態に持っていくことが重要だ。
私を例に挙げると、大学院の課題や就活、中東情勢のフレームを柔道の練習やサウナのとき、
完全に投げ捨てることができる。
なぜなら、柔道の練習中に相手を投げたり
抑え込んだりする方法を考えることに全神経を集中させるからだ。
100度のサウナと10度の水風呂を繰り返したら
一時的に幽体離脱状態(ととのう)に陥り
日常のアレコレを考える余裕が無くなるのだ。
これをサウナによる脳疲労の除去と呼んでいる。
先日、国連機関で人道支援に長年携わっている方と食事をした。その方の趣味である将棋をしているときは何時間でもゾーンに入るそうだ。
おそらく、将棋をしているときは、
人道支援のことを考える隙間がないと想像した。
特定のフレームに想いを馳せたり、情報収集や
実際に行動することは大事だが
自分や自分の身近な人の健康以上に大事なことがあるだろうか。
まとめ
リフレーミングは、メディア分析、メンタルヘルス、
仕事や人間関係などありとあらゆる場面で
非常に役に立つと感じた。
リフレーミングをまとめると
①メディア分析のように1つの事象に対して
複眼的に考える
②現状の思考を全く違うフレーム、
別世界に移動させることである。
意識的、強制的にフレームを変える(離れる)
リフレーミングは、自分を守るための
最強の武器であるとともに技術だ。
この技術を磨くために
You need to change the frame. Step back!
この言葉を意識すると同時に
多様な価値観を持つ人たちと対話を重ねていきたい。
PS:次回こそ、サウナ記事に着手しよう。。。
———End ———
参照文献・記事
・Gamson, W.A. and Modigliani, A. (1989) Media Discourse and Public Opinion on Nuclear Power: A Constructionist Approach
・Robert M,1993, Framing: Toward Clarification of a Fractured Paradigm
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1460-2466.1993.tb01304.x
・Robert M, 2007, Framing Bias: Media in the Distribution of Power
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1460-2466.2006.00336.x
・Joanna H, Lithuania’s reactions to the escalating migration crisis, OSW ,2021年11月10日 ,https://www.osw.waw.pl/en/publikacje/analyses/2021-11-10/lithuanias-reactions-to-escalating-migration-crisis
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※NOTEを書きながらリフレーミングは、
見えていないものを見抜く批判的思考とも共通点があるという気付きもあった。
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