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リトアニアで震えた虐殺の歴史とウクライナ全面支援に対する小さな違和感

リトアニアに到着して2週間が経過した。
私が住む首都のVilnius は
生活には不自由ない環境に加えて、
自然豊かな場所が多く、とても快適だ。
(学生はバス代8割引き、月に920円で乗り放題!有難い!)

今回は街を探索する中でこの国の
ウクライナ支援に対する姿勢からの
違和感(情報のノイズ)を感じたことを書きたい。

リトアニアに住み始めて間もない新鮮な期間だからこそ
新たな考えや違和感を逃さないよいよう
自身の備忘録も兼ねている。

主要なポイントは、
リトアニアの支援内容、過去の歴史を辿りながら
「ウクライナ全面支援が正しいのか?」
この点について批判的に見ていく。


リトアニアのウクライナ支援に対する本気度

リトアニアの首都Vilunis を歩くと、そこら中に
ウクライナの国旗が掲げられている。
バスには、こちらのようにVilunis🖤Ukraine の文字が
掲載されている。

Vilunisのバス

私の在籍するVilunis大学でも建物ごとに
ウクライナの国旗があり
この国のウクライナ全面支援に対する本気度が垣間見える。

具体的にどの程度力を入れているか、
ウクライナ避難民のソーシャルサポートと
軍費額から紐解いていく。

リトアニアのウクライナ受け入れ・ソーシャルサポート

リトアニアには、現在多くのリトアニア人がロシアとの戦争前からの移住者や留学生、そして避難民として受け入れられている。

リトアニアの国際移住機関(2023)によれば、
ウクライナ戦争勃発以来、76,000人のウクライナ人がリトアニアに到着し、現在44,000人以上のウクライナ人が一時的な保護に基づく有効な滞在許可証を持っている。

リトアニア国内のウクライナ避難民に対するサポートは
下記のように非常に手厚い。

・ウクライナ避難民には1年間の一時的滞在許可書付与
 必要に応じて延長もできる。
・収入がないウクライナ人は、暖房、飲料、給湯の補償
・児童手当(児童手当を含む)、住居手当(1回限り)
 賃貸料の一部補償、その他の社会的給付
・ウクライナ人学生はバス代無料

他の国々から逃れている避難民の支援内容と比較すると
リトアニアのウクライナ支援の充実度は
諸外国でも同様と考えられる。

小国リトアニアの高まるウクライナへの軍事支援

このようなリトアニアのウクライナ支援に対する
本気度は軍事支援額をみれば、より顕著に理解できる。

ウクライナへの軍費額は現在に至るまでに
4億ユーロ(634億円)以上で、歩兵を保護したり
輸送したりすることができる装甲兵員輸送車や
武器が多くを占める。
(Lithuanian National Radio and Television,2023)

この規模感はNATO加盟国の軍事費や
日本のGDP防衛費と比較すれば理解しやすい。

NATO加盟国(31か国)の多くが国防費を
国内総生産(GDP)比2%以上に増やす目標を
達成できずにいる中で、リトアニアは、
2019年にNATOが定めたGDP比2%の軍事費を達成した。

2023年にはGDP比2.52%の防衛費を支出する予定だ。
さらに、国家予算は、年間を通じてGDPの3%まで
防衛予算を増やすことを認めている。
(Co-Creatice Lithuania,2023)

日経新聞2023年1月29日記事から図を抜粋

一方で日本は、2023年度予算はウクライナ支援、台湾有事を鑑みて増額している防衛費は
6兆7880億円と国内総生産(GDP)比で
1%を超える程度だ。(日経新聞2023)

人口約300万人、北海道より少し小さい国土の
小国リトアニアが
いかにロシアへの脅威、そしてウクライナへの支援に
力を入れているかわかるだろう。

なぜリトアニアがロシアへの脅威の対抗、
ウクライナ支援に全面的に取り組んでいるか?

その答えは、この国の悲しい過去を
学ぶことで納得する部分があった。

50年間ソ連に占領された悲しい歴史~KGB博物館で震えた拷問の爪痕~

リトアニアは、50年間ソ連に占領されていた。
独立までに数多くの血を流し、1991年にようやく独立を果たした。
※正確には1918年に一度独立をしているが、
第二次世界大戦後にソ連に再占領された。

この悲しい歴史こそがウクライナ支援に力を入れている理由だ。

私は、リトアニアの占領から独立までの歴史を学べる
KGM博物館(旧ソ連の秘密警察KGBが総本部として使っていた建物)にて痛切に感じた。

この博物館には、1941年から1991年まで
50年にわたり実際に使用された建物を一部改装し
様々な展示を行っている。

亡くなられたリトアニア人の個人にもしっかり焦点を当てて展示されている。

私が最も衝撃を受けたのが、
こちらの実際の収容、拷問部屋

収容後、手続き完了までここで3時間待機あるいは撃たれた場所


こちらの写真は、KGBの中でも最も過酷な拷問部屋。
扉が分厚く、どんなに叫んでも防音されるとか。

実際に収容、拷問、虐殺されていた地下室を訪れて
身体の震えが止まらなかった。

「もうこれ以上この場所にいたくない。」
「人間の嫌な臭い。ここの空気を吸いたくない。」

残虐行為が行われていた爪痕がまだ残っていた。
僅かだが、収容で苦しんでいた人の悲鳴・苦痛が
残っているような感覚を感じ取った。

自身の五感が動物本能的に拒否反応を起こした。

それでも、歴史から目を逸らしてはいけないと思い
地下室やほかの展示場所も全て目に焼き付けた。

着目すべき点は、
この占領、虐殺の歴史は、何も遠い昔の話ではなく
今からたった30年前まで起きていたということ。

私と同い年のリトアニア人の両親世代は
ソ連の占領を経験しているということだ。

美しい自然や魅力が多いリトアニアの裏には
これほどまでに悲しい歴史があることを
肌感覚で痛感した。

だからこそロシア軍がウクライナを
占領しようとしている昨今、
リトアニアは自分たちが次に占領される可能性があると
大きな脅威を感じているのだろう。

それはつい僅か30何前まで起きていた痛ましい歴史から
ウクライナへ軍事支援を強化しているのは
想像できる。

しかし。
リトアニアや世界的なウクライナ支援
とりわけ軍事支援の拡張が「正しい」のだろうか?
そのような小さな疑問が頭から離れない。

それでも勇気をもって疑問を投げかけたい。軍事拡張が正しいか?

リトアニアの方々が経験した悍ましい歴史を理解して
私自身、感情面、倫理面から
ウクライナ全面支援側に傾きそうになる。

しかし、勇気をもって疑問を呈したい。
批判的に考えたい。

リトアニアや各国の軍費支援を目的とした
ウクライナ支援が戦争を長期化させないか
あるいは重大な軍事的決定を
見逃すきっかけにならないか?

そのような疑問が離れない。

その一例として、劣化ウラン弾をウクライナ軍によって
ウクライナ国内で使用される可能性があることを
どの程度の人々が理解しているだろうか?

イギリス公共放送局BBCの情報をもとに抜粋すると劣化ウランとは
''天然に存在するウランから放射性物質を取り除いたものであり原子力発電所や核兵器に使用するためにウランを濃縮する過程で生じる廃棄物である。''

国際原子力機関(IAEA)によれば、劣化ウランは
「化学的および放射性毒性」を持つが、自然界に存在するウランよりはかなり放射性物質が少ないと発表している。

言い換えれば、ウランより少ないが
放射物質は存在するということだろう。

一方で国連環境計画の2022年のレポート
「 The Environmental Impact of the Conflict in Ukrain」では
劣化ウランの人体、環境への影響について
下記のように報告されている。

:一般的な爆薬に含まれる劣化ウランや有害物質は、
 皮膚刺激や腎不全を引き起こし、がんのリスクを高める可能性がある。
:劣化ウラン弾は局地的な堆積物や土壌の汚染を引き起こし、水生種と陸生種の両方に影響を及ぼす可能性がある。


イギリスとアメリカで開発された劣化ウラン弾は
2003年のイラク戦争でも使用されており
現地で重大な健康被害が出ている。

残念なことに、この記事を書いている2023年9月7日
イギリスに続き、アメリカもウクライナへ
劣化ウラン弾の供与が発表された。

現実問題として、この兵器がウクライナ国内で
使用される日が刻一刻と迫っている。

あくまで劣化ウラン弾は、軍事強化の流れによる
弊害の一例だ。

私が違和感を感じたのは
ロシア「悪」ウクライナ「正義」の構図が西側諸国で
構築しリトアニアや多くの国で軍事強化
ウクライナ全面支援が戦争の助長が
よからぬ方向に進むのではないか
ということだ。

一方的な視点からの見方、支援、肩入れこそ
大国の劣化ウラン弾の供与といった
重大な決定を見逃すのではないか?

まとめ~これからリトアニア留学で大事にしたいこと~

リトアニアのウクライナ支援、過去の辛い歴史を辿り
軍事強化、ウクライナ全面支援に対しての違和感に
触れた。

やはり日本で忙殺される日々で感じなかった視点が
リトアニアで情報のノイズとして違和感や疑問が
発生している。
この感覚を大事にしたく、様々な視点から疑問を
批判的に捉えてみた。

この疑問に対しての明確な答えは
リトアニア留学でじっくり探りたいが
これから
「表面的に見えていないことを見ようとする」ことを
心掛けていきたい。

例えば、今回触れることが出来なかった
ウクライナ戦争によるロシア難民の視点
少数派ロシア人コミュニティによるリトアニア国内の分断問題など
広い視野と批判的目線を大事にしていきたい。

私の学部にはウクライナ人やロシア側のベラルーシ出身の学生、その他にも多様な経歴を持つ学生が多いので
今回のテーマについても考えを深める。


今回のテーマは、情報源によって内容が変わる
可能性を鑑みて抜粋した情報を下記の通り掲載する。
なお、劣化ウラン弾のイラクでの被害記事は
直視出来ないような写真ばかりだったため
この場で引用先は控えたい。

参照情報
:BBC(2023), アメリカ、劣化ウラン弾をウクライナに供与へ

https://www.bbc.com/japanese/66737439

:BBC(2023), Depleted uranium shells: Why are they used and are they harmful?

:IAEA(2023), Depleted Uranium | IAEA

: UN Environment programme(2022), The Environmental Impact of the Conflict in Ukraine, environmental_impact_Ukraine_conflict.pdf (unep.org)

:IOM Lithuania(2023), What is the first thing Ukrainians need to do when they come to Lithuania?

:Ignas Jačauskas(2023),Lithuania presents next military aid package for Ukraine

: Lithuania Co-create(2023), NATO Summit host Lithuania strengthens defence capabilities 
https://lithuania.lt/governance-in-lithuania/nato-summit-host-lithuania-strengthens-defence-capabilities/#:~:text=In%20the%20wake%20of%20the,GDP%20on%20defence%20in%202023.

:The Office of the Government of the Republic of Lithuania(2022), Ukrainian war refugees in Lithuania: what social support are they entitled to?
Ukrainian war refugees in Lithuania: what social support are they entitled to? | Ministry of Social Security and Labour (lrv.lt)

:日経新聞(2023) ,防衛費、27年度にGDP比2%、非防衛省予算は2兆円規模

:日経新聞(2023) ,23年度予算成立 過去最大114兆円、防衛費GDP比1%超


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