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エッセイ「もう1人の名付け親」


名前も衣替えしたい




私は筋金入りのおじいちゃんっ子だ。

子供の頃は大体祖父母と一緒に過ごしていて、
祖母は厳しい人だったので甘えるとかは
かなり難しく、そういうときは祖父に
擦り寄りに行った。

祖父には兄弟も親も親戚もいない、
歳をとって、会う友人が一人もいない。
孫も沢山いるけれど私以外は、
祖父を怖がって近付かず、
祖母との仲も良いとは言い難い。

女性は歳をとっても孤独になりにくいと
いうが、男性は仕事が終わると
孤独になりやすいと
なにかの本で読んだ。

男が〜女が〜と括るのは良くないと
思うのだけれど、
祖父を見ていると、
「そうかもなぁー」と思う。

定年後コミュニティを自ら
作ろうという様子が一切なく、
趣味も特にない。

でもそんな祖父だから私は安心して
近付けるのだとも思う。


確か18歳の時に
祖父に「私に名前をつけるならどんな名前にする?」としつこく聞いた。

祖父はもう目が見えない、
そんな祖父につけて欲しかった。

祖父は散々迷っていた。
父と母が決めた名前が一番だから、
代わりの名前をつけるのは
ダメだとも言っていたけど、
私はどうしても聞きたくなって、
何度もしつこくしつこく聞いた。

祖父はまた考え込み、
ポツリと「……メイ」と言った。
そして、「よく分からんなぁ」と笑った。

ジブリを思い出した。
田舎のおばあちゃんが
「めぇぇぇいちゃぁぁぁん!!」と叫ぶ
あのシーン。

それと同時に私の苦手な人に「メイ」という
名前の人はいないよなと確認した。

いなかったので安心した。

元々はペンネームも「かが りねん」ではなく、
祖父の付けた「メイ」という
名前にしようと思っていた。
でもなにか私が知識や配慮不足で
何か人を傷付けて炎上なんてした時に
祖父からつけてもらった名前が検索されたり、
ツイートされたりしたら、
それは大切な宝物が汚されていって
しまうようなきがしてしまうと思う。

「メイ」

祖父の思い付きを多分私は忘れないと思う。
祖父はもうどんな名前を付けたのか覚えていないかもしれないけど、
もうそんな事はどうでもいい。

名前をつけて欲しかった。

今日のエッセイおわり。

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