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エシカルフードを知る手がかりは、「チョコレートとコーヒー」にある | プレス発表会レポート

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」公式note担当の東樹です。

「世界食糧デー」である2022年10月16日(日)、1ヶ月限定のセレクトショップ「Hello,エシカル!~お買いものから地球を考える~」が代官山の蔦屋書店内にオープンしました。

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売り場には、「Tカードみんなのエシカルフードラボ」が作成した「エシカルフード基準」を満たす、「おいしくて、エシカル」なコーヒーとチョコレートが計39商品並んでいます。

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オープンに合わせて、10月17日(月)にプレス発表会を行いました。エシカルな取り組みを推進する有識者やメーカーの方々がトークセッションを行なった発表会の様子を、noteでご紹介していこうと思います。

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はじめに、「Tカードみんなのエシカルフードラボ」のリーダーである、CCCMKホールディグス株式会社の瀧田希さんより、ラボの紹介がありました。

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瀧田さん:
1年半まえに立ち上がった「Tカードみんなのエシカルフードラボ」は、「未来につながる食の循環をみんなでつくる。」というミッションを掲げて取り組みを進めています。1社、1地域ではなかなか解決が難しい社会課題を、共創で解決していくプラットフォーム、という位置付けです。フードチェーンに関わるメーカー様、流通企業様、そして生活者の方々との共創によって、エシカルフードアクションを促進することを目指しています。

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企業向けの「エシカルフード基準」は、約1年の検討期間を経て、500以上の項目を整理して完成しました。次は、生活者のエシカル消費の動機づけとなる「エシカルフードアクションスコア」のサービス作りに取り組んでいきます。

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瀧田さん:
生活者の方がエシカルフード消費をする際の指標やモチベーションとなるサービスを目指して、「エシカルフードアクションスコア」を開発中です。これは認証システムではなく、「エシカルフード基準」に則った食品を推薦するシステムです。私たちにできることは「入り口を作ること」なので、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでも気軽にエシカル消費を始められる環境をつくっていきたいと考えています。

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瀧田さんからは、ラボが大切にしている考え方の紹介もありました。

瀧田さん:
とても大切にしているのは、「これはエシカルですよ。買ってみませんか?」という「バイコット」のコミュニケーションのみを行うということです。「これはエシカルではないから、買わないでください」という「ボイコット」のコミュニケーションは一切しない、ということを決めています。

今回オープンした期間限定セレクトショップ「Hello,エシカル!~お買いものから地球を考える~」では、「エシカルフード基準」を満たしたエシカルなチョコレートとコーヒーを取り扱っています。

瀧田さん:
カカオ豆とコーヒー豆を取り巻くエシカルイシューは多いため、エシカルなチョコレートとコーヒーがもたらすことは、児童労働・強制労働の阻止、適正価格かつ継続的な取引、森林・生物多様性の保全など多岐に渡ります。少し価格が高いエシカルフードをエシカルなストーリーとともに生活者の方々に伝えたらどのような反響があるのか、この取り組みを通じて確認しながら、他の食品にも広げていきたいと思っています。

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続いて、有識者としてラボに参加されている、株式会社グッドテーブルズの山本謙治さんから、エシカルフードについてお話いただきました。

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そもそも、「エシカルフード」という言葉は、どのように定義すればよいでしょうか。直訳すると「倫理的に配慮された食品」ですが、倫理は国や地域によって、あるいは宗教によっても異なるものです。したがって、言葉が意味するところを掘り下げていく時、「まず、どこの誰の倫理なのか、ということを考えないといけない」と山本さんは言います。

山本さん:
SDGs的世界観が広がる中で、エシカルに関する議論は欧米が先行しています。ですので、ラボで「エシカルフード基準」を検討するにあたっては、まず欧米で議論されているエシカルイシューを理解することが必要だと考えました。ですが、欧米と日本では置かれている環境も違いますし、価値観も違いますよね。欧米の価値観を鵜呑みにはせずに、参考にしながらもアジア、日本のエシカルを考える、ということをラボでは行ってきました。

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「環境」「人」「動物」に等しく配慮することがエシカルである、と話す山本さん。ただ、エシカルフードに関する日本の取り組みは残念ながら遅れていると言います。

山本さん:
友人であるアメリカの記者から「日本のレストランは”おいしい”が市場価値になっているけど、それって日本だけ。欧米では、"おいしい"は当たり前で、そこに"どのようなエシカルイシューを解決しようとしているか"が加味される」と言われました。確かに、エシカルを意識したレストランは日本にはまだ少ないと思います。

それでは、日本でどのようにエシカルフードを広げていけばよいのでしょうか。山本さんは、そのヒントとなる考え方に言及されています。

山本さん:
社会においては、「時々エシカルなものを買う」という「普通の人たち」のボリュームが60〜75%と一番大きくて、エシカル消費はそこで支えられているんです。なので、「普通の人たち」が、5回に1回買うエシカルフードを3回に1回買ってくれればインパクトが大きい。そのアクションを促す方法が「見える化」です。自分の買った商品がどれだけエシカルか可視化されることが、購入の動機になり得ると私たちは考えています。それを実現するのが「エシカルフードアクションスコア」です。

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さらに、発表会には、セレクトショップに商品を置いている9社の中から3社が登壇しました。各社のお話から、チョコレートとコーヒーを取り巻く社会課題、そして、私たちがとるべきアクションが見えてきました。

大手食品メーカーの株式会社明治は、「アグロフォレストリーミルクチョコレート」と「明治ザチョコレートブラジルカカオ」をセレクトショップで販売しています。カカオマーケティング部 CXSグループ長の木原純さんが、明治のエシカルな取り組みについてお話をしてくださいました。

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木原さん:
現在、明治グループ全体で、「サステナビリティ2026ビジョン」を掲げています。土台にあるのは「持続可能な調達活動」で、項目の一つとして「カカオ調達ガイドライン」を公開しています。2026年に向けた具体的な目標は、「明治が農家支援を実施した地域で生産されたカカオ豆の調達比率を100%にする」です。また、2006年からは、カカオ産地を明治の社員が訪問し、よりよいカカオを作るために農家さんとディスカッションする「メイジ・カカオ・サポート」も展開しています。

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木原さん:
15年以上訪問を続ける中で、栽培方法の支援だけでは持続可能にならないということもわかってきました。栽培技術の支援に加え、農家さんの生活を安定させることを目的としたコミュニティ支援も実施することで、持続可能なカカオ豆を生産することを目指しています。

木原さんは、「明治単独で取り組みを行うのではなく、生産者さんやお客様も一緒になって取り組んでいくことが大切」と語ってくださいました。

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続いてお話されたのは、Dari K株式会社 代表取締役の吉野慶一さんです。2011年創業のDari Kは、吉野さんのインドネシアでの経験が元となり生まれたチョコレートメーカーです。

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吉野さん:
おいしいチョコレートを作るには、収穫した後に発酵させる、というプロセスが大事です。ですが、インドネシアには発酵のプロセスがないんですよね。発酵させてもさせなくても、買取価格の差がないからです。頑張る人が報われない現実をインドネシアで目にして、Dari Kを立ち上げました。

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吉野さん:
Dari Kは、事前に農家さんに買取価格を提示して、きちんと発酵させた品質のいいカカオ豆を栽培してもらって高く買う、という取り組みをしています。また、生産性向上のための技術指導も行っています。今はインドネシア以外にも活動を広げています。

「サプライチェーンに関わる人たちが、一つの同じ船に乗ることが大切。原料がなければメーカーはチョコレートを作れないし、消費者はチョコレートを食べられない。農家の問題はメーカー、流通、消費者の問題でもある」という吉野さんの言葉が印象的でした。

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最後のスピーカー、小川珈琲株式会社 総合開発部企画開発課課長の三輪欣悟さんのお話は、「コーヒーは農作物です」という説明から始まりました。

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三輪さん:
コーヒーは農作物なので、できた原料の品質が最終製品に大きく影響するんです。おいしいコーヒーを安定して調達する上で重要な要素は「環境」と「人」です。まず、コーヒーの木は自然の中で栽培されますが、農園は引っ越しができないので、その場所で作り続るには「環境」がサステナブルである必要があります。次に、収穫するのは「人」なので、働きがいがなければ品質が高いコーヒーが作れなくなります。

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小川珈琲は、たくさんの認証プログラムに取り組んでいます。三輪さんのお話を伺って、コーヒーにまつわる認証がこれほどあることに驚くとともに、それだけの認証が必要なほど、解決すべき課題が多い分野なのだということに改めて気付かされました。

三輪さん:
これらもすべて、「おいしいコーヒーを安定して届ける」という私たちの想いに合致するものとして取り組み始めたものです。2006年には取り扱っているコーヒーのうち10%ぐらいが認証のコーヒーでしたが、2019年には20%超になっています。

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チョコレートとコーヒーをはじめとしたエシカルフードについて、学びの多い発表会でした。本レポートを通じて、みなさんにも何か発見がありましたら何よりです。

そして、ぜひ「Hello,エシカル!~お買いものから地球を考える~」に立ち寄って、「エシカルであること」にこだわったチョコレートやコーヒーを手に取ってみてくださいね。

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■ 「Hello,エシカル!~お買いものから地球を考える~」について

■ 「エシカルフードアクションスコア」「エシカルフード基準」について

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