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支援ツール6 リズム表現(運動会)

毎日暑い日が続き、お盆になっても暑さが収まる気配もありません。
世間は夏季休業期間で登園してくる子どもの数もパラパラです。
秋に運動会を開催する園ではプログラムや、内容を検討し、保育準備をする時期になりました。

今日はリズム遊び(ダンス)について述べたいと思います。
子どもたちに運動的な動き(スウィングスキップや、縄跳び、ダンスの振り付け)などの運動動作を伝えるときに私はオノマトペを使います。


1.オノマトペってなんでしょう

オノマトペとは擬音語と擬態語の総称です。
「ニャーニャー」「ドンドン」「ザーザー」といった動物の鳴き声や物体、物理的な音を例えて表現した擬音語と「キラキラ」「シーン」「ワクワク」といった実際には音のしない状態や心情の様子を音に例えて表現した擬態語があります。
英語のオノマトペ数は1000~1500程度、仏語で600程度あるに対して、日本語のオノマトペ数は『日本語オノマトペ辞典』(小学館)に約4,500語が掲載され、辞典に掲載されていないものも含めると10000語以上ではないかと言われています。これらのことから日本語にはオノマトペが自然と組み込まれているといえるでしょう、

2.スポーツオノマトペ

保育の中でこれらの擬態・擬音語のオノマトペも使いますが、私が今回特に伝えたいのは、運動動作を言葉で表現するいわゆる「スポーツオノマトペ」です。
有名なところで長嶋茂雄さんが指導の中でよく使っておられました。
例えば野球の動作を「球がこうスッと来る」「そこをグゥーッと構えて腰をガッとする」「あとはバッといってガーンと打つ」と指導してくれたとしたら、なんだかどんな動作なのか容易に想像できるのではないでしょうか。

スポーツオノマトペの活用についての論文があります。

運動・スポーツ領域でオノマトペが使用される場合,運動の「コツ」を表現する際の言葉として使用されることが多い。具体的には,動きに関して,パワー(動きの力の強さの程度,たとえば,腰を落として「グッ」と押す),スピード(動きの速さの程度,相手の懐に「サッ」と体を入れる),持続性(動きの持続時間の長短,「ポーン」とボールを打ち返す),タイミング(動きの実行効果を最大にするための時間的調整,「ピタッ」とタイミングを合わせる),リズム(一連の動きの時系列的調整,「トン・ト・トン」と足を踏み込む)を表現する言葉として使われていることが,分析の結果明らかになった )
   『運動のコツを伝えるスポーツオノマトペ  吉 川 政 夫』 引用

保育の中のオノマトペを分析し、深く考えたことはありませんでしたが、この論文を読んで納得して、理解が深まりました。

3.ダンス(リズム表現)での取り入れ方

私がいつも行っているダンスの振り付けを決める時の手順は
① いくつかピックアップした音楽の中で子どもの気持ちがノル曲を選ぶ。
② 子どもたちが自由に音楽に触れられる環境を構成し、子どもたちの様子を見守ったり、少しヒントとなるような動作を保育者が踊ったりする。(面白い動きや、子どもたちが気に入っている動きをチェックしておく)
③ 曲を4拍、に区切ったスコアを作る。
④ 振付を決める。
⑤ オノマトペを使いながら振付を子どもに伝える。

4.オノマトペの使い方

例えば、年少幼児の振り付けで、おしりを左右に振るとてもキュートな動作を左右8拍で交互に入れる時に
「みーぎ、1・2・3・4・5・6・7・8、ひだりー1・2・3・4・5・6・7・8」と声掛けをしたとします。
理解できる子どもはついてこられると思いますが、理解が難しい場合や、自信が持てない場合には友達や保育者の振りを見てから動作に入るので、遅れてしまいがちになるでしょう。

こんな時に(厳密にはオノマトペとは言えないと思いますが・・)私は子どもが喜び、覚えやすい言葉で動作を伝えます。
「おしりー、おしりー、おしりー、おしりー」と8拍で左右交互に伝えると・・・。

私の経験では、ほとんどの子どもが喜んでなおかつピョンピョン笑顔で飛び跳ねます。そのうえ、この動作をしっかりと覚え、自信をもって表現することができます。

子どもが笑顔になれるオノマトペ

例えば、片手をグルグル回す振り付けは、仮面ライダーをイメージして
「へーしん(変身)、へーんしん、へーんしん、へんしんトウッ!」としたこともあります。

ぐるぐるぐるぐるーん!

オノマトペらしい振り付け動作としては
手を体の前でくるくるとまわしながらしゃがみパッと立ち上がる動作を
「グルグルグルグルグルグルグルグルグルーン(下までしゃがんで)花火ぃー!(パッと飛び上がる)」

いかがでしょうか?
子どもが喜んで表現できると思いませんか?
一点、   オノマトペを使って動作を伝えるときに気を付けることは言葉が「被らない」ことが大切かと思います。言葉がかぶってしまうと子どもはどこでその振り付けをするのか混乱してしまうことがあります。
(繰り返しのフレーズでは同じオノマトペでよいと思います。)

5.『止める』を意識する。

最後にリズム表現にメリハリをつけるために重要な動作
動きを止める。動きではないですが、この「止める」は重要です。
動作と動作をダラーっと繋いでいくとメリハリのないリズム表現になりがちです。
私はこの「止める」を特に子ども達には伝えるようにしています。「止まる!」や「ピタ!」
「グルグルグルグル、ピタ!」など一連のオノマトペで伝えると、呪文のように覚え、オノマトペを使うことで容易に動ける、覚えたことできたことを認められる、益々やりたくなる、の好循環が生まれます。

この「止める」の動作は獲得するのに少し時間が必要となります。ですから、年少児や新入園児など動作獲得が未熟な場合、運動会のリズム表現でいきなり「止まる」の動作を取り入れるのは少し難しいかもしれません。運動会では体を止める場面も多くありますから入園したときから保育の合間の隙間時間を活用して「止まる」と楽しい遊びに取り入れると良いでしょう。

隙間時間の遊び
 保育室移動時の『だるまさんがころんだ』

楽しい雰囲気を大切にして遊びながら止まる!を獲得

保育室と遊戯室などの移動時に、引率保育者が「だるまさんが転んだ」の要領で声をかけながら振り返る。その瞬間子どもたちは止まる。隙間時間に動作獲得につながる遊びですが、これをやって許される園かどうかはご自身で判断してくださいね。また、あまりふざけすぎて子どもの気持ちが高ぶりすぎないようにすることにもご配慮ください。

スポーツオノマトペの要領でオノマトペを使うことで振り付けを楽しんで覚え、動作と動作の間に一瞬止まることでリズム表現にメリハリが出てきて、子どもたちの楽しんでいることや頑張っていることがより輝いて見えると思います。
子どもたちが笑顔で楽しんでいる様子を見ることで保護者もうれしい気持ちになってくれるのではないでしょうか。
参考にしていただけたら幸いです。

オノマトペとは関係ないかもしれませんが、子どもはコツさえわかればもっと動きたくなる。もっとやってみたくなる。やってみたら上手にできた。の好循環サイクルにつながると思います。
狭山市のお近くの方興味がありましたら参加してみてください。

最後までお読みいただきありがとうございます。
明日も楽しい保育でありますように♡

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