映画『ミシシッピー・バーニング』(1988年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『ミシシッピー・バーニング』は、
1964年、ミシシッピー州の小さな町で3人の公民権運動家が行方不明になる事件を描いた作品です。事件を追うFBI捜査官が直面するのは社会に巣くう人種差別。衝撃的な実話をベースに、アメリカのタブーを描いた社会派サスペンス映画です。
キャスト
・ジーン・ハックマン(ルパート・アンダーソン)
たたき上げの捜査官
・ウィレム・デフォー(アラン・ウォード)
司法省から派遣されたエリート捜査
・フランシス・マクドーマンド(ベル婦人)
ベル保安官の妻
・ブラッド・ドゥーリフ(クリントン・ペル)
事件への関与を疑われる保安官補
映画『ミシシッピー・バーニング』の見どころと感想
公民権運動の嵐(フリーダム・サマー)が吹き荒れる1964年のミシシッピー州フィラデルフィアで、3人の公民権運動家が行方不明になります。
捜査にあたるのは、元郡保安官のたたき上げ捜査官のアンダーソンと、司法省から派遣されたハーバード大卒のエリート捜査官のウォード。ふたりの捜査手法はことごとく対立します。
事件の捜査で明らかになる公然とした人種差別と町全体を包む閉塞した空気。市民の多くは捜査に非協力的で敵意を向けてきます。
有力な手がかりが得られないなか、保安官のペルらが事件に関与している情報が浮上します。ペルの妻に接触したアンダーソンは、妻は何か知っていると感じ捜査協力を求めますがー。
評)暴力以上にゾッとさせられる ”黒人を差別することを植え付ける”社会
アメリカの人種差別問題は、年代や地域を超えて多くの映画で描かれています。この映画の舞台は、1964年のアメリカ南部ミシシッピー州。
南北戦争(1861-65年)に敗れた後も、白人による黒人の分離を合法的に認めた「ジム・クロウ法」によって公然と人種差別が行われていた土地です。が、反人種差別運動はアメリカ全土に広がり、1964年7月、公民権法が制定。法の上での人種差別は終わりを告げます。この映画で扱っている事件は、その直前の出来事です。
捜査に協力的な証言をすれはKKK(クー・クラックス・クラン 白人至上主義団体)による凄惨な(家を焼かれ絞殺)報復が待っており、黒人のみならず白人も誰も口を閉ざした社会。ドキュメンタリー風に描かれている事件捜査の報道シーンでは、「黒人は悪」「黒人を排除しなければ」「殺されて当然」と語る市民が登場し、暴力シーン以上にゾッとさせるものがあります。
捜査はたたき上げオッサン捜査員のアンダーソンが、事件に関与していると思われるペル保安官の妻の証言を引き出すことから急展開します。
妻(まだ若いフランシス・マクドーマンド)が「この土地では黒人を差別することを植え付けられてしまう」と嘆くシーンが印象的。エリートのウォード捜査官(ウィレム・デフォーも若いっ!)が、ただの堅物ではないことがわかるところもグッときます。
そして、悪徳保安官のペルを演じたブラッド・ドゥーリフ。
『カッコーの巣の上で』(1975年)で不幸な死を遂げる若い精神病患者ビリーですよ。ビリーさながらに不安をたたえたその「目」は、加害側であっても人種差別が巣くう社会の被害者なのかもしれない、とさえ思わせてしまうのです。
オッサン捜査官演じるジーン・ハックマンがちょっとザキヤマに見えてしまうのが唯一の難点ですが、この映画は必見です!
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