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南北戦争と奴隷制度の歴史 【映画を楽しむための地理~アメリカ南部編】

映画の舞台となった土地のことを知って、より映画を楽しみたい、という「映画を楽しむための地理」アメリカ編の3回目はアメリカ南部です。

この土地にはどんな名作映画があるのでしょうか、見てみましょう。


アメリカ南部の概要

-http://www.craftmap.box-i.net/

アメリカ南部は16の州(デラウェア州・メリーランド州・ウエストバージニア州・バージニア州・ケンタッキー州・ノースカロライナ州・サウスカロライナ州・ジョージア州・フロリダ州・テネシー州・アラバマ州・ミシシッピ州・アーカンソー州・ルイジアナ州・オクラホマ州・テキサス州)と首都ワシントンD.C.(コロンビア特別区)からなる地域です。

特にサウスカロライナ州・ジョージア州・アラバマ州・ミシシッピ州・ルイジアナ州の5州(*異なる定義もあります)は「ディープサウス」と呼ばれ独自の文化的特徴がある地域です。

アメリカ南部各州のおすすめの映画

デラウェア州

南部地域のもっとも北側にあるデラウェア州。ニューヨークやワシントンD.C.にもほど近い工業都市です。

ここを舞台にした映画といえば、『ファイト・クラブ』(1999年)です。

映画『ファイト・クラブ』TwentiethCenturyFox/Photofest/MediaVastJapan

謎の男ジャックに惹かれ「ファイト・クラブ」の一員となる男を描いた「どんでん返しがスゴイ」系の映画です。

メリーランド州

独立戦争の中心となったメリーランド州は、、首都ワシントンD.C.とも関連の深い州です。

映画『わが心のボルチモア』TriStar Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

州の中心都市ボルチモアを舞台にした映画『わが心のボルチモア』(1990年)は、1910年代にこの地に移住してきたロシア系ユダヤ人家族を描いています。

バリー・レヴィンソン監督が出身地への思いを込めた作品です。

ワシントンD.C.

アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.は、メリーランド州とウエストバージニア州に挟まれたところに位置し、どの州にも属さない特別区です。

ワシントンD.C.には大統領官邸のホワイトハウスや連邦議会、連邦最高裁判所などが置かれており、政治や政治がらみの犯罪を描いた多くの映画の舞台にもなっています。

その中からおすすめしたいのは『大統領の陰謀』(1976年)です。

映画『大統領の陰謀』WarnerBros./Photofest/ゲッティイメージズ

ウォーターゲート事件の真相に迫ったワシントン・ポストの新聞記者を描いた作品で、ニクソン大統領が辞任に追い込まれた1974年から、わずか2年後に作られたこの映画のドキュメント感は必見です。

そしてもう1本は、コーエン兄弟監督の『バーン・アフター・リーディング』(2008年)

拾ったディスクがCIAの機密情報と思いこむ男女が引き起こすブラックコメディはいかがでしょうか。

ウエストバージニア州/バージニア州

独立戦争や南北戦争の中心となった地域で、バージニア州からは初代大統領のジョージ・ワシントン他多くの大統領を輩出しています。

ここを舞台にしたおすすめ映画は、1831年に起きた黒人奴隷の反乱を描いた『バース・オブ・ネイション』(2016年)です。

映画『バース・オブ・ネイション』© 2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

1915年の無声映画『國民の創生』(原題:The Birth of a Nation)と同名のタイトルは、「國民のー」の白人至上主義に対する明らかな批判です。

この土地が背負ってきた歴史の重さとともに必見の1本です。

ノースカロライナ州/サウスカロライナ州

アメリカ合衆国の南東部に位置し、ノースカロライナ州の西部には自然豊かなアパラチア山脈が広っています。

『セリーナ炎の女』(2014年)は、1930年代のノースカロライナを舞台に、製材所を営む夫婦(ブラッドリー・クーパーとジェニファー・ローレンス)がドロドロの愛憎劇を繰り広げます。

もう1本は、1970年代の紡績工場に勤める女性の自立を描いた『ノーマ・レイ』(1979年)

映画『ノーマ・レイ』20th Century Fox / Photofest / ゲッティ イメージズ

田舎の工場で低賃金で働かされる無学な女性が社会に立ち向かっていく感動作です。

ジョージア州

レイ・チャールズのカバーで知られる名曲「わが心のジョージア」のジョージアです。缶コーヒーの「ジョージア」のコカ・コーラ社の本社も、ここジョージア州にあります。

映画『人生の特等席』(C)2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

州都アトランタにはMLB最古の球団アトランタ・ブレーブスがあり、映画『人生の特等席』(2012年)でクリント・イーストウッドが演じたのは、ここ一筋の老スカウトマンです。

フロリダ州

フロリダ州は、メキシコ湾と大西洋に囲まれたフロリダ半島全域を占める州です。

ザックリいうと、ココを舞台にした映画は麻薬絡みのものが多い。
特に主要都市マイアミの開放的すぎる土地柄は、映画でもおなじみです。

キューバからアメリカに渡った男が、コカインやギャングに関わりながらのし上がっていこうとするアル・パチーノの代表作『スカーフェイス』(1983年)、密輸やそれに絡む抗争を追うマイアミ特捜刑事の『マイアミバイス』(2006年)、結婚前の女性たちが乱痴気騒ぎを繰り広げる『ラフ・ナイト 史上最悪!?の独身さよならパーティー』(2017年)など、娯楽作品が満載です。

一方、マイアミの貧困地域に生きる青年シャロンを描いた『ムーンライト』(2016年)は、悲しくて美しいマイアミの一面を見せてくれます。

ケンタッキー州/テネシー州

古き良きアメリカの象徴でもあるケンタッキー州。もちろんあのケンタッキー・フライド・チキン発祥の地です。

おすすめの映画は、そのケンタッキー州の南、テネシー州を舞台にした『ナッシュビル』(1975年)です。

映画『ナッシュビル』Paramount/Photofest/ゲッティイメージズ

大統領候補の選挙キャンペーンのために州都ナッシュビルに集まったカントリーミュージシャンたちと音楽業界を描いた群像劇です。

アラバマ州

アラバマ州には、アラバマと言えば『アラバマ物語』(1962年)と言われるほど、州を象徴する映画があります。

映画『アラバマ物語』Universal Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

1930年代、白人女性への性的暴行で逮捕された黒人青年を弁護する弁護士を描いた法廷ドラマの名作です。

ミシシッピ州

1960年代まで白人が有色人種と生活圏等を分離することが合法とされたミシシッピ州。

この地を舞台にしたおすすめ映画は『ミシシッピ・バーニング』(1988年)です。

映画『ミシシッピ・バーニング』Orion Pictures Corporation / Photofest / Zeta Image

1964年にミシシッピ州のフィラデルフィア(注:ペンシルバニア州のフィラデルフィアではありません)で、公民権運動家3人が暗殺された事件をモデルにした映画です。
公然と行われる人種差別や事件に関与しているKKK(クー・クラックス・クラン)など、事実の持つ重みに震える傑作です。

もう1本ご紹介。コーエン兄弟監督の『オー・ブラザー!』(2000年)は、1930年代のミシシッピ州を舞台にしたブラックコメディです。脱獄囚が大金の隠し場所を目指すお話ですが、ここにもKKKが登場します。

アーカンソー州

アーカンソー州はアメリカ南部の内陸の州です。州北西部には山地や森林地帯が広がる自然豊かな土地です。

映画『トゥルー・グリット』ParamountPictures/Photofest/ゲッティイメージズ

映画『トゥルー・グリット』(2010年)は1870年代のアーカンソー、フォートスミスから始まる、父の仇を討つ少女と雇われた男たちのロードムービーです。

ルイジアナ州/オクラホマ州/テキサス州

アメリカ南部の州、テキサス州はメキシコを国境を接する広大な州です。

どでかいステーキと砂漠とサボテン、といったイメージ(貧相でスイマセン)ですが、ここを舞台にした映画にはそんな雰囲気があります。

テキサスの砂漠で麻薬の取引と殺しの現場を目撃してしまった男が、殺し屋にしつこく追われる映画『ノーカントリー』(2007年)では、メキシコ国境近くで繰り広げられる恐怖をたっぷりとお楽しみください。

テキサス州最大の都市ダラスを舞台にした映画のこちらもおすすめです。

映画『ダラス・バイヤーズ・クラブ』Focus Features / Photofest / ゲッティ イメージズ

『ダラス・バイヤーズ・クラブ』(2013年)は、1985年、HIVで余命宣告された男が治療薬をめぐって国に戦いを挑むストーリーです。

激やせしたマシュー・マコノヒーと、彼女ジャレッド・レトの名演とダラスの暑さに魅せられる映画です。

まとめ

以上、映画を楽しむための地理 アメリカ南部編でした。

それにしても、この地域の映画は南北戦争や奴隷制度の歴史なくしては語れません。

そのあたりのおさらいは、また別の機会にー。


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