
アメリカのカントリーサイド 【映画を楽しむための地理~アメリカ中西部編】
映画をより楽しむための課題の一つは「地理」です。
どこを舞台にした話なのか、土地の場所だけでなく、気候や歴史、文化など、物語に影響をあたえる要素の多くは「地理」にあるー、というわけで、映画を楽しむために苦手な地理を克服しようという試みの第2回「アメリカ中西部編」です。
アメリカ中西部の概要

アメリカ中西部は12の州(ミシガン州、オハイオ州、インディアナ州、ウィンスコンシン州、イリノイ州、ミネソタ州、アイオワ州、ミズーリ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州、ネブラスカ州、カンザス州)からなる地域です。
アメリカ中西部各州のおすすめの映画
ミシガン州
五大湖のうちの4つの湖に囲まれた水と緑が美しいミシガン州。
かつて自動車産業で栄えた都市デトロイトがあり、映画『デトロイト』(2017年)はその題名のとおりこの地を舞台にした映画です。

1967年のデトロイト暴動の最中に起きたアルジェ・モーテル事件を題材にしたこの映画は、アフリカ系アメリカ人労働者と白人の衝突、自動車産業の衰退といったこの土地が抱える問題が色濃く描かれています。
デトロイトはモータウンレコードの発祥地でもあり、伝説的のグループ、シュープリームスをモデルにした『ドリームガールズ』(2006年)もデトロイトが舞台となった映画です。
映画を彩るこの土地が生み出す音楽も必聴です。
オハイオ州
オハイオ州は水運に恵まれ古くから工業地域として発展した州です。
ここを舞台にしたおすすめの映画は『ウェルカム・トゥ・コリンウッド』(2002年)です。

失業者にあふれるクリーブランドのコリンウッドで起こる、ゆるい犯罪を描いた映画です。今やアベンジャーズで超有名なルッソ兄弟の初監督作品。ルッソ兄弟はクリーブランドの出身です。
そしてもう1本は未来から。
スティーブン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』(2018年)は、2045年のオハイオ州コロンバスが舞台です。環境破壊によってスラム化したオハイオ州が描かれています。で、もちろんスピルバーグ監督もオハイオ州の出身です。
TVドラマからもご紹介。
『Glee』の舞台となったのはオハイオ州の田舎町ライマです。
レイチェルはこの地からニューヨーク・ブロードウェイに旅立っていきます。
インディアナ州
インディアナ州を舞台にしたおすすめの映画は『ジャッジ 裁かれる判事』(2014年)です。

シカゴでやり手の弁護士となった息子とインディアナ州の田舎で暮らす判事の父との確執は、やがて一つの事件をめぐって法廷にー、というお話です。堅物な父はこの土地の象徴的存在なのかもしれません。
イリノイ州
イリノイ州は、アメリカ第3の都市シカゴがある州です。
古くから様々な産業の中心地として栄え、多くの移民を受け入れた都市です。
1930年代のジャズ全盛期のシカゴを舞台に、ジプシージャズのギタリストの自滅を描いた『ギター弾きの恋』(1999年)、家族崩壊の中、娘の同級生に恋をする中年男性を描いた『アメリカン・ビューティ』(1999年)など、多様性と崩壊のバランスが見ごたえのある映画はいかがでしょうか。
ウィスコンシン州・ミネソタ州・アイオワ州
自然が豊かで農業や酪農が盛んな地域。人柄も真面目で我慢強い人が多いと言われています。
そんなアイオワ州を舞台とした映画といえば『マディソン郡の橋』(1992年)です。

平凡な中年主婦と中年カメラマンの4日間の恋は、アイオワの大自然あってのものでしょう。
ジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオという後の大スター2人が若い兄弟を演じた『ギルバート・グレイプ』(1993年)は、閉塞感がありながらも希望が持てる田舎の姿を描いています。
ミズーリ州
ミズーリ州はミシシッピ川沿いの内陸の州です。
人種差別が残る保守的で強硬な土地柄から「Show Me State(疑い深い州)」とも言われています。

『スリー・ビルボード』(2017年)は、娘を殺害された母親が、警察を批判する目的で建てた3つの看板が引き起こす怒りの連鎖を描いています。土地柄ゆえの「怒り」がえぐり出された映画といえるでしょう。
ノースダコタ州
ノースダコタはアメリカ中央の最北部の州です。人口密度が低く冬は極寒の地となります。その様子がはっきり分かるのが『ファーゴ』(1996年)です。

狂言誘拐が引き起こす狂気の連鎖が、ミネソタ州のミネアポリスやブレ―ナード、そしてノースダコタ州のファーゴで繰り広げられます。
サウスダコタ州
サウスダコタも人口が少ない州です。が、有名なこれがあります!

マウント・ラシュモアに刻まれた4人の大統領の彫像です。
1927年から41年にかけて彫られたもので、写真左からワシントン、トーマス・ジェファーソン、ルーズベルト、リンカーンです。
恥ずかしながらアメリカの地理に疎い私は、これがどこにあるかピンときてなくて、どうかするとハリウッドのこれ

と、ごっちゃになっていました。
が、もう大丈夫です。正しくはこうです!

で、サウスダコタ州を舞台にした映画といえばヒッチコック監督の『北北西に進路を取れ』(1959年)です。

人違いされた男が巻き込まれる往年の名作サスペンスです。
ネブラスカ州
アメリカ大陸のほぼど真ん中のネブラスカ州。アメリカでもっとも保守的な地域のひとつです。
ここを舞台にした映画には『ボーイズ・ドント・クライ』(1999年)があります。

ネブラスカ州に暮らすトランスジェンダーの若者に起こった1993年の実際の事件。もし彼が、ほかの土地で生まれていたならここまでの悲劇にはー、と思わされる映画です。
カンザス州
アメリカの地理に疎い私でも「カンザスは田舎、ド田舎」ということは知っていました。
『オズの魔法使い』(1939年)やTVドラマ『大草原の小さな家』のイメージがそうさせたのでしょう。
『カポーティ』(2005年)は、そんなカンザス州の小さな町で起きた事件をもとに代表作「冷血」を書き上げたトルーマン・カポーティを描いています。

オスカーを受賞した亡きフィリップ・シーモア・ホフマンの名演もぜひ。
まとめ
以上、アメリカのカントリーサイド、中西部を舞台にした映画でした。
ではまた、「映画を楽しむための地理」でお会いしましょう。
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