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考える時間をつくる

コンテンツをつくるには、1秒でも早く1秒でも長く考える。コツは、できるだけ早い段階で、「◯◯の企画を考える時間」を1時間スケジュールに組み込むことだ。ぼーっと思いにふけるのではなく、ひとりデスクに向かい、紙と筆記具をもって集中して企画を考える。企画を提出する日までに数回、この「企画を考える時間」を持てるといい。

「企画を考える時間」。まず、テーマについて思いつくことや疑問に思うことを、ありったけ書き出す。付箋を使い、1つの付箋に1つずつ、次々に言葉にしていく。良いことも悪いことも、単語でも文でもいい。行き詰まったら、こんな視点で自問自答しながら付箋を増やす。

◯(商品などの場合)五感を使って、よく観察する
  見た目は? 匂いは? 音は? 味覚は?触感は?

◯「言葉」を増やす、自分の言葉で言い換える
 「かわいい」ではなく、どこがどうかわいいか、よりふさわしい言い方はないか

◯ テーマについて、何が知りたいか疑問をどんどん出す

◯5W1H(what,which,when,who,where,how)を考える

◯立ち位置を変えてみる
 子供の頃だったら、未来だったら、異性だったら、別の地域だったら…

言葉をひとつ書いたら、「で?」「なぜ?」「他には?」と繰り返し、どんどん付箋を増やし続ける。ここで大切なことは、(付箋でなくノートでもいいので)紙に書くこと、すぐにネット検索をしないことの2点。ネット検索したい疑問は疑問のまま書き出しておく。素の頭で充分に考えたあと初めて、ネット検索をして、さらに付箋を増やす。ネット検索を始めると新たな疑問、考えも浮かんでくるので、それらも次々と付箋に書き出す。

付箋に書き出すだけ書き出したら、それらをグループに分ける。近い発想のものをまとめながら、グループごとに名前をつける。近視眼的に見たり俯瞰で見たり、グループを解体したり合併させたり、分析したり感覚的に眺めたり、そこから何かが見えてくるまで考える。付箋1枚1枚がコンテンツだとしたら、コンテキスト(文脈)、繋がり、ストーリーを見つける作業だ。

そうして1回目の企画を考える時間を持ったら、次は「体験」をプラスする。付箋の疑問を解決するために、下取材、ロケハンに行く。例えば、競合する商品を専門店に見に行く、そこで話を聞く、人にサンプルをあげて反応を見る…。90年代『Hanako(ハナコ)』のロケハンのように、この「体験」がとても大事で、体験を通した「気づき」がコンテンツになることが多い。また、この「体験」を通して、明確な強い「想い」を持つことも多い。

インターネットは言うまでもなくとても便利なものだが、同じ目的で、同じテーマを検索し始めると、不思議とほぼ同じようにネットサーフィンしてしまう。近年は、雑誌の企画を出してもらうと、見事に同じような企画が集まり、「あ、この人もこの人も同じブログを読んだな」とわかったりする。ところが、ネット検索する前に充分に考え、疑問を疑問のまま書き出しておくと、検索ワードが変わり、収集できる情報も変わってくる。ネットなしで徹底的に考える→ネット検索して情報を集める→体験をして気づきを加える、この繰り返しで企画を練っていく。誰でもネット検索が前提の今の時代こそ、検索前の考える時間、検索後の「体験」が、オリジナルの企画をつくるポイントになる。ここまでやって初めて、提出できる「企画」になる。

以前、月刊誌『文藝春秋』の編集者に聞いたら、10本提出する企画のうち、少なくとも5本は渾身の企画だという。1本の企画をつくるまでに、下取材やリサーチを重ねて、新書を一冊書けるぐらいのエネルギーをかけているそうだ。「そりゃそうだろう」と、『文藝春秋』の重層的なコンテンツを読んでいると納得できる。

紙に書く理由は、グループ分けしやすいこと。付箋ならグループの解体、合併がより簡単だし、グループとグループの距離も変えられる。ノートを使う場合は、小さいスペースに書き足したり、線で繋いだり、太文字で強調したりもできる。マインドマップ(ネット検索してください)のように書き出すのもいい。

『メモの魔力』によると前田裕二さんは、ノートを見開きで使い、左ページに「日付」「タイトル」「ファクト」(自分が興味を持ったことや発見した具体的な事実)を、右ページに「抽象化」(左ページのファクトから導き出せる応用可能な法則や概念)「転用」(抽象化した法則を他に応用すること)をメモするそうだ。「ファクト」が付箋に書き出したこと、「抽象化」がグループ分けしネーミングする作業、「転用」がそこから見出したストーリー、企画になる部分といえると思う。

紙に書き出した言葉や文は、プロジェクトが進んだ後も、保存しておくといい。最初に書き出した言葉や文が、後々コンテンツのキャッチーやタイトルに使えることも多い。時間が経って見返すと、初めて、その商品を見た時の感覚を思い出し、初心に戻されることもある。

わりと最近、ダイエット(仮)のwebメディアをつくるプロジェクトに参加したことがある。そのメディアの編集長をやってほしいとオリエンを受けたのだが、「ウェルネスに注目している企業は多い。ダイエットのwebメディアをつくり企業の社員健康管理を請け負う」というビジネスモデルだけが先行し、肝心のメディアコンセプトがまるでなかった。もちろん、そこをどうにかするのが私の仕事だが、メディアコンセプトもメディアタイトルも決まっていないのに、「紺色をベースにシャープなデザイン」とトンマナを見せられて、椅子から滑り落ちそうになった。

以降、週1回、数時間のミーティングをするのだが、メディアについては見事に誰も考えてこないのだ。みな当然「ダイエット」「健康」と検索し、話題のダイエット法、監修者のリストアップ、イメージするwebデザインなどはslackで日々情報を共有するのだが、「ネットなしで考える」時間をとらず、「体験をして気づきを加える」こともない。私は私なりに上記の方法で1週間考え体験による気づきのようなことも提案する。「そもそもダイエットという言葉がどうなんだろう」と動議を出し、具体的なコンセプトや骨子もプレゼンする。だが、みな具体的に考えていない状態なので可否も意見も言わず(言えず)ブレストにもならない。結局、「どのダイエットの何をどう伝えるメディアをつくれば企業の担当者に注目されるのか」という核の部分を議論することなく、そのプロジェクトは流れてしまった。

せっかく「想い」ありきのメンバーなのに、漠然としたイメージのまま、ただ集まるだけでは進まない、いい例だと思う。1週間の間に、ひとりひとりが、「企画を考える時間」をつくり、イメージを具体的に言語化し、メディアコンセプトを考えて、例えば読者になるであろう企業の担当者に会うなどの体験と気づきを持ち寄ってこそミーティングが意味を持つ。

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フリー編集者、コンテンツディレクター。マガジンハウスで『anan』『ポパイ』『Hanako』『ターザン』『Casa BRUTUS』など雑誌や書籍の編集を30年間していました。ヨガや瞑想などライフ・プラクティスの探究と、日本語教師を入り口に教育と社会に関わることが今のテーマです。

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コメント (2)
わかりやすくて助かります(^^)/
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