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webメディアの「継続」は毎日の食事づくりみたいな

宣伝会議の「自社メディアやnote、メルマガ等で発信する企業の担当者のためのコラムライティング基礎講座」でコラム企画の考え方を講義しました。「コラム企画で大切なのは、テーマや切り口、準備段階が9割です」という準備の話がメインで、「継続は毎日の食事づくりみたいなものです」という継続のイメージを付け加えたのですが、コラム記事の継続を食事づくりに例えるのは我ながら上手いなぁ、小さなトラブルも食事づくりに置き換えると気持ちがラクになるなぁと思うので、noteでもシェアします。

毎日、三食三度、誰かのために食事をつくっている人には、いたく共感してもらえる例えです。そう、一人暮らしの食事づくりは少し違います。三食三度でなくても毎昼食、毎夕食つくっている人にはわかってもらえるかもしれません。「毎日」というのと「誰かのために」というのがポイントです。

食事をつくるというのは、包丁とまな板を出して食材を切って、似たり焼いたり調理をする、その部分だけフォーカスされますが、実際には買い物をする時から、もっと言うと、買い物に行こうと考えている時から始まっています。「冷蔵庫に賞味期限ギリギリの牛肉があるから豆腐と長ネギを買って肉どうふにしよう。長ネギは明日の昼のうどんと明後日の昼のラーメンにも使うから3本買おう」などと、複数の献立、複数の食材の組み合わせを考えながら、買い物をします。コラムでいえば、ネタ集めです。

買い物に行けない時は、冷蔵庫にあるあまりもので、とにかく一食、何かをつくります。時間がない時は、スーパーでお惣菜を買ってきます。ケータリングで1回分、済ませることもできます。三食三度のことですから、上手に手抜きをしないとやっていけません。スーパーのお惣菜も3日続くと飽きますが、たまに取り入れるのは、かえって美味しかったりします。

手抜きと同時に工夫も必要です。肉じゃがを多めにつくって翌日はシチューに、その翌日はカレーにと味に変化をつけます。コラムも同じテーマでも切り口や味付けによって、伝わり方はまったく違ってきます。

逆に、ものすごくいい食材が手に入った時は、できるだけ素材を生かして、シンプルな調理にします。

話が逸れますが、ウン十年前、「料理のセンスがない。料理本を見て一生懸命つくっているけど彼が来る日に限って失敗する。彼に料理上手と思われたいのに」と嘆く後輩にアドバイスしたことがあります。「青山の紀ノ国屋で食材を揃えれば何をつくっても美味しくなるよ。1万円かかるけどね」と。食材が良ければ、調理法がどうであれ、必ず美味しくなります。ちなみに、その彼女はその彼と結婚しました。

コラムも、とびきりのネタがあれば、それは必ず読まれます。でも残念ながら、とびきりのネタは、そうそう揃いません。毎日の食事のように、普通のネタでどう組みわせるか、どう調理するか。思いのほか上手くいくこともあれば、失敗することもあり、失敗しても何かしら出さなくてはいけません。

誰かのために食事づくりをしていると、失敗と思ったものが意外と好評だったり、手間暇かけたものが喜ばれなかったり、そういった反応があります。コラムでいうPV、読者の反応です。その反応を見て、また献立づくりに反映していく、その繰り返しです。PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Action)というとビジネスっぽいですが、もっと感覚的なものかもしれません。

献立にあわせて必要な食材を配達してくれるサービスもありますが、そういったサービスに欠けてしまうものは、「その日の気分」です。その日の天気、その日の仕事や体調、自分の気分も、食べる人の気分も、そればかりはAIにはできない微調整になります。コラムでも最後の最後は、その日の気分、社会の空気感を加味して仕上げられたら理想的です。

手抜きや工夫、失敗を繰り返しながらも、誰かのために食事づくりを毎日続けていれば、当然慣れてくるし、アベレージが上がってきます。「お揚げは蕎麦つゆで煮て小分けに冷凍しておけば便利」などと外から得た知識も実践しながら自分のものになっていきます。レストランで食べた味をアレンジしたり、たまには楽しみも見出せます。そんな楽しみを見出せると毎日の食事づくりが苦痛ではなくなります。一番の楽しみは、食べる人が喜んでくれること、それは間違いないですね。

コラム、コラムに限らずweb記事、webメディアを継続するというのは、まさにこんなイメージです。週刊や月刊の紙のメディアにはなかった感覚で、私も日々「食材をひとつ無駄にしちゃったな…」とか「これ久々のフルコースじゃない?」などと食事づくりに例えています。

毎日の食事づくりは、後片付けも大切です。ささっと手短に、その都度、済ませておきます。もちろん次の食事づくりを考えながら。

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