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大浴場で生と死を自問した話

死を意識した瞬間

この文書を書いているという事は生きているのですが、人生において何度か「これはマジで死ぬかも。」と意識した事があります。

生後三ヵ月で肺炎で死にそうになった事を皮切りに、海で溺れた事が2回、車を全損する程の事故を起こした事2回、ピックアップトラックの荷台で作業中、荷物を縛るロープが外れてアスファルトの地面に頭から落ちて意識を失った事、一緒にホテルに入った女性の背中に羽衣を纏った天女の彫り物があった事・・・、

そして、大浴場で命を落とし掛けた事。

この話は、自分が死にそうになったその瞬間、何を考えていたかにスポットを当て、自分が何を大切に生きているのかを考える事に重点が置かれています。


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真夜中の大浴場で、僕ひとり

25歳の冬、ある企業の寮で暮らして居た僕は、毎晩のように開催される仲間との飲み会で、その日は最後のお開きまで参加し、午前2時頃に自分の部屋に戻りました。

部屋の椅子でタバコを吸いながら、このまま寝てしまうか、お風呂に入るかを考えた末、僕はお風呂道具一式を持ち、地下1Fにある大浴場へ向かいました。

皆が寝静まった静かで薄暗い廊下を進み階段を降りて大浴場までたどり着いた僕は、大浴場に誰もいない事を感じつつ服を脱ぎ、タイル張りの大浴場に足を踏み入れ、洗い場で一通りの作業をこなし、湯船に浸かりました。

しこたま飲んで気分が良くなっていた事もあったでしょう。一通りの水泳を楽しんだ後、お湯の中に身を沈め、肺の中の空気を感じながら浮き沈みを楽しんでいました。

しかし、次の瞬間、湯船の中で何かが僕の体を拘束しました。それは鎖に繋がれたような感じがしました。

何故か浮き上がりません。僕の顔も体も湯船のお湯の中です。当たり前ですが、呼吸は出来ません。首が締まる感覚に気が付きました。


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お湯の中で考えた事

「ん?なんだこれ?」

「体が浮かないっ?」

「んんっ?なにこれ?」

「体、浮かない?」

「ナニ、コレ?」

「・・・・・・・・・・、(体を起こそうとしながら)」

「ナニコレ?」

「ドッキリ?誰かいる?」

「・・・・・・・・・・、ちょっと待てよ。」

「ちょ、まテよ。」

「(首にある違和感に改めて気が付き)なんか引ッかかっテル?」

「どゆコと?」

「マサか~。」

「えっ、・・・・・・・・・・、ヤバくね?」(ここまで5秒)


「・・・とりあえず、冷静になろう。」

「えっ、死ぬ?(ブクブクブク)」

「まぁまぁ、冷静になろう。」

「ん~、とりあえず、(首に手を当てながら)この首なんだ?」

「えっ?んっ、ネックレス・・・?・・・が、引っかかってる???」

「何にひっかっかっかっかてる?」

「なんで?マジっ?」

「いや、いや、いや。」

「・・・・・・・・・・・。」

「ふ~。・・・と、とりaえzuレイせいのなルお(とりあえず冷静になろう)。」(ここまで10秒)

あとでわかった事ですが、ネックレスの角度や長さがちょうどよく古い浴槽の床面のすり減ったタイル目地にすっぽりしっかりと挟まり、僕は囚われの状態になっていました。

「とりあえず、助けを呼ぼう。」

「いや、今、お湯のなか!」

「外れないか?(ガンガン上体を起こすようにしながら)」

「あっ、ぜんぜんムリ。(ブクブクブク)」

「いや、外れないかっ?(さらにガンガン上体を起こすようにしながら)」

「あ~、ぜんぜんムリ~。」

「しぬ?」

「いや、そんなことないでしょ?」(ここまで15秒)


「これ、ムリか・・・?」

「なんでこんなことになった?」

「夢だろ?(ブクブクブク)」

「まぁ、大人しく死ぬか。」

「いや~、でもな~。」

「死んでも、まぁいいか。」

「ダメダメ。何言ってんの?」

「案外、死ぬってこんなもん?」

「(笑)」

「息を全部吐いちまうか?」

「・・・・・・・・・・・。」

「そしたら、死んじゃうじゃん!」

「・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・。」

「やだやだやだやだっ!水死体を片付けるお手間を、寮長やみんなにさせるのは嫌だ。そんな迷惑を掛けるのは絶対ヤダ!!!」

「全裸の男が足だけプカーって浮かべて死ぬのも発見されるのも、あまりにダサすぎる!!!!!」(ここまで20秒)


そうして僕は、両手にネックレスを持ち、左右に力いっぱいひっぱり、シルバー製のネックレスを引きちぎる事に成功し生還しました。(いわゆる火事場のなんとかです。)


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考察

・酔っ払って、大浴場で泳いだり、沈んではいけない。

・死の危険を意識した時、時間の流れは遅くなり、思考時間は光の速さとなる。

・人生最大のピンチが訪れても、意外とある程度の冷静さは残る。

・死は日常生活のすぐ隣にある。

・死の間際に、家族や恋人、友人の事は考えない。

・人に迷惑を掛ける事を嫌だと死のふたつ前に考える。

・プライド、もしくは美意識について死のひとつ前に考える。

・火事場の馬鹿力は本当にある。


僕が人生で大切にしている事は、こういう事みたいです。



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