金融リテール営業で悩んでいる君へ
こんにちは、NorM(ノーム)です。
このnoteを開いたあなたは、きっと金融リテール営業(銀行・証券・保険)の方か、NorMが何を書いているか気にしてくれている稀有なスーパービジネスマンでしょう。
この記事は、前者の悩める金融リテール営業職の若手〜中堅の方に向けた記事です。
勤務している方を前提にしてしまっているので、詳しいお仕事内容の記載は省いていますがその点ご了承ください。
私自身も証券リテール営業からキャリアをスタートし、現在は外資系ファンドに勤務しているわけですが、この記事では、まず「金融リテール職ってそんなに悪くないぞ。だからあんまり焦らない方がいいよ」という視点からお話ししようと思います。
最後に書きますが、それでも転職を考えるという話はまた別に書こうと思います。
1.金融リテール営業も実は悪くない
悩んでいる皆さんは、きっとこう考えているでしょう。
「こんな職場、もはやすぐにでも辞めたい」
「リテール営業なんて将来性ない」
「もっと大きな仕事がしたい」
20代の私もそうでした(だって、毎日辛かったし・・・)。
しかし、経験者である私はそこにちょっと待ったをかけたいと思います。
かつて勤務していた証券会社の同期(転職済み)と飲んだ際に、「転職したやつらの答え合わせをしようぜ」と言って、同期入社の転職組を成功・失敗の事例としてちょっとした分析をしたことがあります。
その中で得られたのは、
現職を否定して転職したヤツらは次でも似た失敗をしている
金融リテール職のキャリアや自身の特性を活かして転職したヤツらは比較的成功といえる道を歩んでいるケースが多い
だからこそ転職は美点・悪点をしっかり理解した上で、自己分析を行い、戦略が立てられる時に考えるべき
という結論でした。
転職を悩むからこそ、敢えて次のような今の職場・職種の良い点を冷静に振り返ってみることからスタートすることをお勧めします。
①安定した職務環境、少ない残業
安定した職場環境・少ない残業時間は、まずリテール営業職のメリットです。
「え?うち結構残業あるけど?」
「安定してるとかないでしょ?」
と思いましたか?
残業の話をしましょう。
私の証券会社勤務時代、月の平均残業時間は大体30〜40時間でした。20営業日で割ると、毎日1.5〜2時間の計算になりますね。
一方、私が次に転職した銀行のプロダクト部門では、月の残業時間は70時間越え(実態は100時間を超えていましたが、皆様ご存じの働き方改革により正直に申告すると問題が起きるので、いろんなテクニックで誤魔化していました)。
朝は8時には出社、夜は平均22時、遅い時には25~26時退社なんてこともありました。
(ちなみに、それでも本社ビル全体では一番遅い方ではなかったです)
※よく「人が足りないなら増やせばいいじゃない」と言われていましたが、大きな案件を必要以上の人数で回すと、「確認のための確認作業」みたいなものにすごく時間が取られます。
なので、金融のホールセールビジネスは最小限のチーム構成×ハードワークという組み合わせになっていることが多いです。
「花形部署に行けるならいいじゃないですか!」
「専門的な仕事ができるなら残業くらい覚悟ですよ!」
と言いたくなるかもしれません。
でも、よく考えてみてください。
仕事で必要な自己研鑽は、当然これ以外の時間でやるんですよ?
そして、切磋琢磨する仲間たちは平気でそれをやってのける奴らばかりです。
それに引き換え、金融リテール営業職は、日中の時間はストレスフルだとしても、終わる時間は概ね決まっています。
帰ってからの時間をどう使うか、自分で決められるのです。
私はある程度その環境変化を覚悟してから転職しましたが、それでも
「あぁ、前職の時にCFA(米国証券アナリスト)を取っておけばよかった。あんなに時間があったのに。」
と後悔しました。
取りたい資格
やり遂げたいこと
婚活・恋活
妊娠・子育て
これらに時間を割けるというのは、今の金融リテール職のメリットです。
また、仕事もみんな同じようなことをやっているので、あまり差がつかないなと感じているかもしれませんが、それは逆に、貴方が少し抜けても替えが利くことを示しています。
今までにそれなりに就活生からのOB訪問を受けてきましたが、このことを一番よく分かっているなと感じたやりとりを書いておきます。
女子学生「私は、金融の中でも特に金融リテール営業職(エリア職)を志望しているんです。」
私「貴方は今までの会話からすごく優秀に見える。本社の部署にいれば、もっと大きなビジネスができるし、スキルや専門性も身につくよ。総合職の方がいいのでは?」
女子学生「いえ、ダメなんです。私が目指しているのは『タフに働く賢い妻・母』なんです。
私には今彼氏がいませんが、社会人になったら出会ったりデートをしたりする時間が必要です。
じゃなきゃ結婚に至らない。でも、24時まで働いていたらそれはできない。
また、夫となる人は転勤族かもしれません。その時には私が勤務地を変更できないと別居になります。
それだと子育てが回らないはずなんです。
だから、全国に支店がある大きな金融機関かつ勤務地変更制度があるところを目指しています。
「ハードに働いてスキルを活かして外資に転職して年収2000万!」みたいなのは、私にとっての幸せではありません。そのキャリアは、要らないんです。」
ちなみに彼女は銀行・証券・信託・生保の大手どころから軒並み内定をもらった上で銀行に行きました。
②比較的高待遇
金融リテール営業は、世間一般の営業職に比べると高待遇です。
私が所属していた証券会社でいえば、総合職で20代後半〜30代前半で1000万、エリア総合職でも800〜900万は見えると思います。
銀行系は少しこれよりマイルドでしょうが、それでも、一般的な営業職に比べると非常に高待遇です。
転職を試みて止める同期のほとんどは「意外とうちの会社の給料悪くないってことに気付かされた」と言っています。
これはあまり言ってはいけないのですが、私が2社目の会社のプロダクト部門で働いていたときによく耳にしていた会話は「リテール部門の奴ら、いいよなぁ・・・早く帰れるのに、ボーナスも福利厚生も俺らと変わらないんだもんな・・・」でした。
また、福利厚生も整っている場合が多く、家賃補助や借上げ社宅、または独身寮などのアコモデーションはもちろん、良くも悪くも会社員を仕事に集中させるようなバックアップは手厚い。
もし転職を考えるのであれば、これらの福利厚生を数値化した上で、次の職場の年収と照らし合わせるのをお勧めします。
③身に付くスキルは他でも使える
この3点目は、ぜひゲキ推したいポイントです。
「どうせ転職するなら早い方がいい」
「何年やっても同じ仕事で、先、見えてちゃってるでしょ」
そんな転職エージェントの話に騙されてはいけません。
金融商品は、最も無味乾燥な(その意味で売りにくい)無形材という特性を持っています。
だからこそ、そのセールスにおいて培われる次のような能力は、他の職場でも活かせます。
物事を数字で語り、説得する力
金融に関する体系的な知識・知見(私の今いる不動産ファンド業界では、この体系的な知識があるかどうかで割と給料が変わります。)
無形材を売るための工夫
高い人間関係構築力
「間に立つ力」(これは別記事で書きたいと思っていますが、尊敬する先輩の造語です。多様な利害関係者の立場を理解しながらタクトを振るう指揮者としての能力です。)
上記は一例ですが、それぞれの力がどんな職で役立つのかは、別の形で記事にしたいと思っています。
とにかく言いたいことは。
貴方はまだ、今の職場から学びきっていないのかもしれないのです。
※ちなみに、私が最初の転職の時に評価された点で意外だったのは「メンタルタフネス」です。
「証券のリテール営業で耐えたなら、多少の無理は効くでしょ」
「君、理不尽なこと言われても、処理できるでしょ」
この二つについて、実証する必要なく信じて貰えたのは、私が証券リテールを一定年数続けたからだと思っています。
2. 金融リテール営業の何が嫌なのかをはっきりさせよう
1を読んでいただいた方には、少し金融リテール職のことを見直していただけたかもしれません。
それでも転職を考えるのであれば、今の現状分析、つまり不満な点や不安な点を考えてみましょう。
そのためには、営業という仕事をハック(=解像度高く、仕組みを理解)することが必要です。
世の中の営業に関する本を見ると、営業という仕事は以下の3つの軸で切ることができます。
①取り扱うプロダクト
②ユーザー(顧客)
③取引形態(BtoB /BtoC /BtoBtoC)
金融リテール職の場合は、①金融商品(株・債券・投信・保険)、②マス〜富裕層、③BtoC、になるわけですが、言い換えると、このうち一つを変えれば別の仕事になるのです。
良い例は、投資信託運用会社(アセットマネジメント会社、通称アセマネ)で、エンドユーザーという意味では、①投信、②マス〜富裕層、までは同じで③の取引形態がBtoBtoCになります。
まずは、この3つで切ってみて、自分がどこを不満・不安に感じているのかを考えてみましょう。
ちなみに私の場合は、②・③でした。
私自身、働くモチベーションは「より良い社会を作る」であるのに対し、個人投資家の資産を増やすお手伝いは、必要だとは思いながらも、どうしても「コレジャナイ感」が拭えなかったのです。
また、別の視点として、「そもそも営業が嫌い」「会社組織がイヤ」などの観点もあるでしょう。
いずれにしても、「今の自分の悩みを解像度高く理解すること」が出発点となるべきです。
3. それでもキャリアを変えたいなら、選択肢について考えよう
自分の悩みをハックでき、それでも「これ以上は無理だ」と感じたら、次のキャリアを考えましょう。ここでのカギは、「選択肢の取り方」と「軸ずらし」の2つです
①選択肢の取り方
次のキャリアを考える際には大きく
①社内で別の仕事を探す(社内転職)
②社外で別の仕事を探す(社外転職)
の二つの選択肢があります。
「なんだ、そんなのあたりまえでしょ?」
と思いましたか?
でも、これ、2つとも意識することがすごく大事なんです。
特に、社内転職の選択肢は多くの方が忘れがちな観点で、私がOB訪問を受けた際に大手の金融機関を薦める理由の一つでもあります。
近年の金融機関では、ビジネスモデルの変化によって、人材の配置換えが当然に行われるようになっています。
一方で、勤務している貴方の仲間の中には環境を変えたくない人もいるわけです。
そんな状況の打開策として「社内ジョブ公募制度」があります。
人手を必要としている部署のポジションに対し、やる気がある社員が手を挙げることで異動する。
会社としては、社員側に手を挙げさせることで、頑張る意欲を与え、頑張らない言い訳を排除し、ミスマッチな配属を防ぐ狙いがあります。
制度の成り立ちはこれくらいにして、社員側にとってのメリットは「履歴書を汚さずに転職できること」です。
この「履歴書を汚す」という観点、転職の時にすごく大事になるので覚えてください。
これは、(また別の記事にしようと思っていますが)転職においては「私が考えるキャリアストーリー」に乗っているかどうかという点が非常に重要になるからです。
短期で転職を繰り返すことが良くないのは、もちろん世で言われるように「忍耐力がない」「問題社員なのでは」と疑われるという観点もあるのですが、特にハイクラスの転職では「貴方のキャリアストーリー、実は失敗なのでは?」という疑いの目で見られるという観点もあるのです。
社内転職は、転職に近いトライが転職せずに得られるという貴重な機会です。
②軸ずらし
最後に言っておきたいのが、転職を考える際に大事な「軸ずらし」の考え方です。
私も転職をするときに本を読んで、当時とても評価が高かったMotoさんの『転職と副業のかけ算』を読んで初めてしっくりきた考え方なのですが、金融リテールセールスに当てはめて考えると、前記の
①取り扱うプロダクト
②ユーザー(顧客)
③取引形態(BtoB /BtoC /BtoBtoC)
という3つの軸を、一つだけずらしてみるのです。
経験上、2つずらすとハードルが上がり、3つともズラすとほぼ全くの新人からやり直す(=給与や待遇も同じような感じになる)ことになります。
とにかく、この3つの軸を少しずつずらしていき、自分の目指すキャリアに近づけることが重要です。
その際には、1で述べた、今の職で培ったソフト・ハードスキルをきちんと言語化し、ポータルなもの(他の組織でも使えると主張できるもの)に仕上げる必要があります。
これらの方法や作り込み方は、また次回の記事にしようと思います。
この記事では、「金融リテール営業は思っているよりも悪くないよ」という話から始めましたが、一方で私が経験したように、そこから飛び出て全く異なる領域に挑戦することで、新しい価値観やスキルを身につけることができます。
外資系ファンドへの転職は私にとって新たな視野を開かせてくれたもので、今までの所属企業にものすごく感謝もしています。
そういったキャリアの積み方は、別の記事でもお伝えしていこうと思っています。
この記事では、
金融リテール職も実はそんなに悪くない
金融リテール職の何がイヤなのかハッキリさせよう
それでもキャリアを変えたいなら、選択肢について考えよう
の3点をお伝えしました。
いいなと思ったらスキ、フォローボタンをタップ頂けると嬉しいです。
最後に参考図書のリンクを貼っておきます。転職するなら読んでおいて間違いはないです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?