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小説

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#事件

みどりちゃん a7

みどりちゃん a7

 わたしはすこし遅れて着いてしまった。カバンの紐が肩からずり落ち、下品に息をして中に入ったとき、おばばは無表情で椅子に座っていた。わたしは彼女の前に立ち、コクリと頭を下げて、準備をするために奥へひっこんだ。もう開店の時間であるのに、店の電気もついておらず、看板もでていない。これはひどい失態である。わたしは急ぎに急いで、開店準備を進めたのであった。

 平日の昼間、この時間に、この店に来るお客さんは

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みどりちゃん a6

みどりちゃん a6

 ・・・・・・

 ……わたしには一つの秘密がある。

 それは、わたしの命日のこと。カレンダーを見てほしい。実はきょうから四月が始まっている。そしてその日が終わった。つまりわたしの命はあとちょうど三十日なのだ。

 いったいどういうことか説明すると、こうである。

 わたしは、自分の死ぬ日を、決めているのだ。五月一日その日。その日をわたしは自分の死と決めているのだ。わたしは私を殺すのだ。だから、

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