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門前町とモダンなコーヒーが、ミスマッチなのに溶け合ってなじむ。HOUEI COFFEE and STORE NEAR THE SHINSHOJI TEMPLE   [#レトリカル食レポ(37)]

「成田」駅・参道口を降りて、
左手にのびる参道に入り、
通り沿いの店々に
視線を投げつつ進めば、
ようやく「成田山新勝寺」の
総門が見えるが、
参拝を後に、そのまま

右へとゆるやかにカーブする道に身を任せると、
この名高き寺の門前町からは想像できない、
オープンなコーヒー専門店が手を振る。
「ホウエイコーヒー」成田山門前店。
私は、ドアも開けず暖簾もくぐらずに入った。

豆はエチオピア一辺倒の私が、
焙煎度合いを訊ねると、
「中煎り」という答えが返る。
カウンターに運ばれてきた紙カップを、
スリーブに印字された「HOUEI」の
文字を眺めながら傾けると、
ずっしりとした厚みで、
まるで力強い握手を交わしてくるかのように、
コーヒーキャラメルの如き艶めきを残す。
それは、酸味と苦味のバランスが
絶妙に溶け合って生まれる感覚。
同時に、ほどよくミディアムに煎られた
豆から抽出された香りが、
やわらかく鼻をとらえたかと思えば、
数秒ほどして、エチオピア独特の酸味が、
パッと放たれるのをイントロに、
じわじわと舌を包み込むように強さを増し、
果実味が舌の脇から奥へと広がっていく。

そのまま口にふくみながら待つと、
舌先にパッパッと酸味がはじけ、
なめらかな甘みが苦味のなかに溶けだして、
口のなかいっぱいにコーティングするように広がる。
それを喉の奥にすべらせて、
またひと口、ふくんで味の行方を追うと、
舌の奥にうっとりとシルキーな
酸い味の跡がずっと、
心地よく口に残った。
とがらず、とろりとした、陶酔、

新勝寺の

総門をくぐった、
後で
さえも。


新勝寺の裏手境内には広大な「成田山公園」が広がる。
私を置いて、およそ40年の友人関係を紡ぐ女、二人。

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