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絶対に「旅」に出たくなる⁉︎ 沢木耕太郎『天路の旅人』を読んでみた

はじめに

「クローズアップ現代」で久方ぶりに沢木耕太郎さんを拝み、新しい本が出ているってことで、手に取って読んでみた。
仕事が落ち着き、ゆっくりする時間ができたので、自分のペースで読んだらあらよあらよとラストまで…
ちょっとだけ、自分で旅をした気分になりつつ、
「旅に出たい!」
と思った。

ちなみに、沢木耕太郎さんってこんな人。

1947年東京生れ。横浜国立大学卒業。ほどなくルポライターとして出発し、鮮烈な感性と斬新な文体で注目を集める。1979年『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、1982年『一瞬の夏』で新田次郎文学賞を受賞。その後も『深夜特急』『檀』など今も読み継がれる名作を発表し、2006年『凍』で講談社ノンフィクション賞、2013年『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞を受賞する。長編小説『波の音が消えるまで』『春に散る』、国内旅エッセイ集『旅のつばくろ』『飛び立つ季節 旅のつばくろ』など著書多数。
https://www.shinchosha.co.jp/writer/1666/


沢木耕太郎さん
https://www.shinchosha.co.jp/writer/1666/
より

どんな本なの?

『天路の旅人』がどんな本なのかを超簡単に言うと、戦時中の密偵として、現在のモンゴルからインドまでを、基本徒歩で、ラマ僧に扮して旅した鉄人の話。

今だったら、バスや電車、飛行機だって船だって使えるが、かれこれ70~80年くらい前だから、そんなものも十分なければ、100均で手に入るような便利グッズなんかももちろんない。

とはいえザクっとしすぎているかもしれないので、もう少しだけ内容を書くとすると…(↓サイトからの引用)

第二次大戦末期、敵国の中国大陸の奥深くまで「密偵」として潜入した若者・西川一三。
敗戦後もラマ僧に扮したまま、幾度も死線をさまよいながらも、未知なる世界への歩みを止められなかった。
その果てしない旅と人生を、彼の著作と一年間の徹底的なインタビューをもとに描き出す。
著者史上最長にして、新たな「旅文学」の金字塔。
https://www.shinchosha.co.jp/book/327523/

「郷に入りては、郷に従う」

僕は沢木さんの『深夜特急』が大好きだけど、『天路の旅人』って…沢木さんが20~30年前に生きてたら同じことしてたんじゃなかろうか…?と思ってしまう。
内蒙古から始まり、敵地である中国の奥深くに入り、さらにチベット、そしてインド、ネパール…
当時、過去にそのルートを進んだ人はたった一人。ヒマラヤを何度も超え、荷物を運んでは、凍傷になったり。
確かにその鉄人ぶりには驚くのであるが、この本で最も驚くべきは、西川一三という人間の”世界への溶け込み方”。
もちろん、スパイではあるが、それ以上に”旅人”。

文明社会(その頃の日本は、やっぱりアジアの中では進んだ国)から、言ったら”何もない国”に入る込むことはめっちゃ勇気がいる。知っている人もいない。しかも、敵地。自分が日本人だと知られたら、どうなるか分からない。
もちろん、文化に溶け込む訓練はしていたけど、トレーニングと実際うまくできるかは別物でもある。

そんな状況のなか、ゆっくりと着実に進んでいくのだが、”溶け込む”ことで、疑いを回避していく。
「郷に入りては、郷に従う」
スーパー当たり前で、最も有効なことなのだろう。
完全なる「ラマ僧」として、8年生きていく彼。言語、所作…料理の仕方、食べ物、おしっこの仕方、使う道具…そうしないとならないということはもちろんだが、徹底的にラマ僧「ロブサン・サンボ―」になりきる。
ぼくだったら、3日ともつまい…

目的達成、そして日本の敗戦を知ってなお、もうちょっと進んでみようか。なんて、もう完全なる旅人…彼にとって、生きるということは、旅をすることだったのだろう。

「旅」をする理由

そんな8年の旅の話を読んでいると
「生きる」ってなにか?
「幸せ」ってなにか?
ということを考えずにいられない。彼の道中は過酷ななかでも、僧ということで施しを受けたり、仲間との助け合いもあった。もちろん一人で乗り越えることもあったが、何より幸せそうな感じを受けたのは、「自分のことのように心配してくれる存在」に巡り合ったとき。

現代社会、日本で例えばヒッチハイクとかを利用してたら、なかなか乗せてくれないだろうし、おうちの倉庫を貸してなんていってもなかなか貸してくれないだろう。
時代と場所、宗教へ信仰は違えど、そうした温かさがこの時代、この世界には存在していた。

そんな世界、どこに行ってしまったんだろう?
これから先、もっとなくなっていくのではないだろうか?

旅の楽しさは、見たことのないものに出会うということだと思う。でも、景色とかだけじゃなくて、人や、そのときの感情(つらいこともうれしことも全部)…すべてをひっくるめている気がする。
「かわいい子には旅をさせろ」
その言葉は、これから先もずーっと存在してほしいものである。
ネットで旅する世界より、「生」「リアル」な世界の方がよっぽど楽しい…
そんな想いを熱く感じる本だった。
あー!旅に出たい!!

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