B線TNS日記43 柴田元幸先生の朗読会「いま、これ訳してます」
某月某日 TNSにて
10月31日、ハロウィンの日、数年来仕事でお世話になっている手紙社さん主催の、ワークショップや講座等さまざまな番組をzoomを使用して配信するGood Meetingという企画のひとつ、柴田元幸先生のオンライン朗読会「いま、これ訳してます」に参加した。
(Good Meeting、他にも面白そうな番組がたくさんです!)
柴田先生といえばご存知のとおり、アメリカ文学の研究者、翻訳家でいらっしゃる。日本で一番有名な現役の翻訳者だと思う。
直接先生の授業なりを受けたことはないのだけれど、ずっと心の中で柴田先生と呼んできたので、柴田先生と書かせていただく。
高校時代の(今もだけど)私が敬愛していた小沢健二氏が、東京大学の柴田ゼミ所属だったと知り、私は東大を目指して猛勉強するのではなく、柴田先生の翻訳書を地元の書店で探し求めた。これが柴田先生と私の出会いである。
当時、柴田先生訳のポール・オースター作品が話題になっており、地元の書店でも売っていた文庫版「ムーン・パレス」を読んだ。
日本語に訳されているのに、なぜか原書で読んだような気持ちになった。原書でアメリカ文学が読めるほど、英語力があったわけでもないのになぜかそんな風に感じた。今思えば、原作の『空気』のようなものも完璧に、かつ自然に訳されていたからこそこのような感想を持ったのだと思う。
この「ムーンパレス」でオースターにハマり、「幽霊たち」や「鍵のかかった部屋」を続けて読んだ。そして、のちに映画化もされた「スモーク」と「ブルーインザフェイス」が一冊になった文庫を買った。
映画を観た時に、自分が頭の中で思い描いていたブルックリンという未訪の街が、柴田先生の訳文から想像していたものとそう遠くなかったのに驚いた。
そこからも、書店で偶然出会ったレベッカ・ブラウンの「体の贈り物」が先生の訳であったり、話題になった「翻訳教室」を読んだりと、おりおり柴田先生の訳書や著書に触れてきた。
そんな私の中のカリスマが、ご自身の仕事場からの中継で朗読会をされるというのだ!これは参加したい!と思っていたのだが、告知が出ると毎回開催日に用があって断念。今回6回目にして初めて参加することができたのであった。
朗読のタイトルどおり、先生が最近訳した小説を、先生自らが朗読してくださる。感情を込めた大きな声で。今回は、ミルハウザーの新作と、エヴンソンのハロウィンにちなんだ短編ホラー、もうひとつ原作者を聞き逃したのだけど、これまたホラーの短編。1時間に3本も読んでくださった。正直1時間も朗読を集中して聴けるのか自信がなかったのだが、あっという間に時間は過ぎ、3作を堪能させていただいた。
先生の朗読を聴きながら、20ウン年後におばさんになった私がこんな朗読会に参加できると高校時代の自分が知ったとしたら、驚き、未来に希望をもつだろうなと思った。
質問コーナーも準備してくださっていたのだが、恐れ多くて発することができなかった。
柴田先生ファンの方、アメリカ文学が好きな方には超おすすめである。(しかも参加費500円!!)
次回もぜひ参加させていただきたいと思う。
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