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In my bag Ⅱ 学生カバン

 そんなペタンコなカバンに何が入るのって大人の人たちによく聞かれる。まあまあ入るんですよ、これが。

 生徒手帳、宿題プリント、下敷きとカンペン、バンドエイド、色つきリップ、ブルーベリーガム、家の鍵とサイン帳、財布とテレカも。

 なんでカバンを薄くしたかっていうと、3年になってからの友達がみんなやってるからかな。ヤンキーとかじゃないよ、別に。ふつうにみんないい子たち。

 2年の時、マジ性格悪い女子グループでハブにされてさ。そん時助けてくれたのが今仲いい子たちなんだよね。先生たちには嫌われてるっていうか、マークされてる子たちだけどさ。一緒にいると私、心から笑えるんだよね。

 この前ミサの家に泊った時に、ミサのお兄ちゃんが私のカバン見て大笑いして。カバンがぶ厚いって。それで「俺がなんとかしてやるよ」って言ってさ。芯を抜いてくれたんだよね。そしたらめちゃくちゃ薄くなった。私も早くカバン潰してしまいたかったから嬉しかったんだ。

 それでミサんちから帰ってきたら、ママがこのカバン見てめちゃくちゃうろたえてさ。「さなちゃん、どうしてそんなことしたの?」って泣き始めて。ただカバン薄くしただけじゃんね。別に校則に書いてないんだよ。カバンの厚さについてはさ。

 ママが新しいカバンを急いで買いに行って、そっちを持っていけって言うからさ。そんな1年が使うみたいなダサいカバンじゃ学校行けないって言い返したらひっぱたかれたわ。むかつく。私思うんだけど、ママが今の時代の中学生だったら絶対カバン薄いよ。ペタペタのペッタンコにしてると思う。ただあの人同調圧力に弱いからさ。いつも人からどう思われるかばっかり気にしてるから。娘がグレたとか思われたくないんじゃない?

 高校受験に差し障るって言うんだよね。いいよ別に。私成績いいからどっかには入れるでしょ。国家資格取れとか、英語勉強しろとかさ、これからの女性は、とかなんとか言ってるけど、だったらママが今から国家資格取ればいいじゃん。英語もやればいいじゃん。ママがやりたかったこと全部私におしつけんなよって感じ。ママだってこれからの女性じゃん?

 とにかく私は自分で自分の生きやすいように生きるから。今まで大人の言うことばっかり聞いてきてろくなことがなかったもん。

 それにこのカバンになってから、私は強くなれてる気がしてるんだよ。



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