社畜のススメ (藤本 篤志)
(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)
今のご時勢、とても挑戦的なタイトルですね。
戦後の復興期から高度成長期にかけて、日本企業を支えたのは「会社人間」でした。バブル崩壊のころからでしょうか、成長の行き詰まりから日本企業は西欧のマネジメント思想に傾倒し始めました。そこで登場するのが「個性人間」です。
本書での著者の主張は、安易な「個性重視」の否定です。
著者は、「自分らしさの追求」が、転職難民を生み出し、組織力を低下させ、かえって個人に対する精神的プレッシャーを高めるといった弊害を生起させたと考えています。
ただ、著者はずっと歯車のままでよしとしているわけではありません。
世阿弥の「守破離」を引用し、歯車(守)のステップを踏むことにより、次なる応用(破)・創造(離)のフェーズに進むことができると指摘しているのです。
「応用」や「創造」のレベルで初めて「自分らしさ」「個性」が顕れることになりますから、守の段階で「個性」を抑えることが、結果的には「個性」を開花させることができるという主張です。
本書での著者の主張は、多くのビジネス書に書かれているものと(表層的には)「正反対」のものが多く見られます。この点について、著者はこう語っています。
著者の立ち位置を明確に示したフレーズですね。本書のタイトルは、「『能動的な』社畜のすすめ」なのでしょう。
そして、最後にひとつ、本書の「あとがき」から、なるほどと思ったフレーズを。
P&Gらしい、静的ではなく“動的な思想”ですね。
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