(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
朝のNHKの番組で紹介されていたので手に取ってみました。
著者の服部正也さんは1918年生まれ、太平洋戦争に従軍後日本銀行に入行。その後、1965年にルワンダ中央銀行総裁として出向したのですが、本書はその時の奮戦記録です。
着任にして早々、服部氏は銀行の実態を見聞きしそれが予想を超えた状況であることに衝撃を受けました。そこからのスタートです。
銀行の経営状況はもとより、組織内の人間関係にも問題がありました。行内に派閥の悪弊があるとの情報への対処。服部氏はそのひとつひとつの事象の事実関係を確認して、こう判断しました。
この対応に見られるように、服部氏は何事においても自分自身で事実を確認することを疎かにしませんでした。そして、そこで把握した情報に基づき的確に個々の問題に対処していったのです。見事な姿勢ですね。
さて、本書を読み通してですが、上述のエピソードの他にもとても勉強になるくだりが山ほどありました。
その中から2・3、書き留めておきます。
まずは、改めて、政策決定を行う上での服部氏の基本姿勢についてです。
服部氏は、事実に基づく通説・俗論の評価・検証を踏まえ、本質的な判断の基軸を設定したうえで具体的な解決策を策定します。そして、その実現方法を多角的・段階的に整えていくのです。
と基本的方針を整理したうえで、その実現に向けた施策に取り組んでいきました。
服部氏が採った具体的なアクションは次のような段取りで進められたのです。
また、特に海外からの技術顧問らとのやり取りでしばしばみられる彼らの人種的・民族的偏見も、服部氏は理性的に一刀両断に切り捨てます。
当然の態度ではありますが、これをどんな状況下でも貫徹し切るというのは誰でもできることではありません。
そして、通貨改革・経済再建計画を何とか軌道に乗せていよいよルワンダを離れることとなったとき、服部氏はこう述懐しています。
さらに、服部氏の自宅で大統領も出席した送別会での大蔵大臣の送別の辞とそれを受け止めた服部氏の想いは本当に感動ものでした。
久しぶりにしっかりと実の詰まった骨太の本に出合えました。
評判どおりの名著だと思います。