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自分の中に毒を持て ― あなたは“常識人間”を捨てられるか (岡本 太郎)

(注:本記事は、2011年に初投稿したものの再録です)

 今年(注:2011年当時)は岡本太郎氏生誕100年にあたります。
 私が岡本太郎氏の名前を初めて目にしたのは、1970年大阪で開催された万国博覧会の記念モニュメント「太陽の塔」の作者としてでした。
 そして、その後、岡本氏は、「芸術は爆発だ!」との強烈なフレーズとアクションでマスコミにも登場し、さらに広く一般の人々にも大きなインパクトを与え続けました。

 岡本氏の生き方は、一言でいえば「闘い」だといえるでしょう。

(p16より引用) 人々は運命に対して惰性的であることに安心している。・・・
 これは今でも一般的な心情だ。ぼくはいつもあたりを見回して、その煮えきらない、惰性的な人々の生き方に憤りを感じつづけている。

 天才・奇才としての岡本氏が、社会通念に反旗を翻し自ら「危険な道を運命として選んだ」のは、25歳、パリで芸術活動をしていた時だったそうです。
 自らの心に忠実に生きることは、そうでない人々の集まりの中では大きな軋轢を生み出します。そのプレッシャーに抗することは、まさに「闘い」であり、岡本氏は自らの気持ちに正対して、その道を突き進もうと決意したのでした。

(p60より引用) 人間は自分をきつい条件の中に追い込んだときに、初めて意志の強弱が出てくる。・・・
 ・・・何かをやろうと決意するから意志もエネルギーもふき出してくる。
 何も行動しないでいては意志なんてものありゃしない。

 「今この瞬間の行動」が大事です。「いずれそうします」とか「昔はこうだった」と言う人は現在の生き方をごまかしているのだと岡本氏は語ります。

(p61より引用) 自信はない、でもとにかくやってみようと決意する。その一瞬一瞬に賭けて、ひたすらやってみる。それだけでいいんだ。また、それしかないんだ。

 こういう感じで、本書では、岡本氏の「爆発の姿勢」が自らの言葉で熱く語られています。

(p98より引用) あらゆる場所、あらゆる状況で、孤独な、「出る釘」であったのだ。そして叩かれても叩かれても、叩かれるほどそれに耐えて自分をつき出してきた。・・・いや、むしろ、出ずにはいられなかった。それが情熱であり、生きがいだからだ。

 まさに岡本氏の生き方の「原点」ですね。

 最後に、もうひとつ、「芸術」に関する岡本氏のことばです。

(p202より引用) ぼくはこう考える。コミュニケーションを拒否するコミュニケーションをこそ人間存在の真ん中に主役としてすえなければいけない。情報化社会だからこそ、単なる理解を越えた超情報にもっと敏感に、真剣になるべきだ。ここで、とりわけ無目的な情報を提供する呪力をもった「芸術」の意味が大きく浮かびあがってくる。

 本書を通して発している岡本氏のメッセージはとても刺激的であり挑戦的です。
 恥ずかしながら私には到底真似できませんが、岡本氏が貫いた「独立不羈の気概」のひとかけぐらいは持ち続けたいと思います。



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