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このムダな努力をやめなさい : 「偽善者」になるな、「偽悪者」になれ (成毛 眞)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 変わったタイトルが気になって手にとってみました。
 著者は、元日本マイクロソフト社長の成毛眞氏です。ちょっと前に同氏による「日本人の9割に英語はいらない」という本も読んだところです。

 本書で開陳されている成毛氏お薦めのアドバイスは、首肯でき実践できそうなものもありますが、ごく普通の会社勤めをしているビジネスパーソンには「ちょっとそこまでは・・・」といった類のものもあります。

 当たり前に重要な指摘という点からは、「チームワーク」についてのコメントが挙げられます。

(p115より引用) ビジネスにおいて、チームワークは重要だ。
 肉体労働でも知的労働でも、チームワークがなくては仕事は進行しない。
 努力嫌いの人間でも、チームワークばかりは軽視すべきではない。

 ただ、ここでも「チームの利益は自分の利益でもある」といった考え方が基底にはあるのですが・・・。

 他方、ちょっと難しいかなと思えるのは、たとえば、こんな割り切りです。

(p3より引用) 仕事は選べない、と思うかもしれないが、それは単なる思い込みだ。たとえば、自分が苦手な仕事は、それが得意な人間にやってもらったほうが効率的だし、生産的だ。会社にとっても、そのほうがいいに決まっている。
 極端なことをいえば、自分が苦手な仕事は放っておけばいい。そうすれば誰かがその仕事を代わりにやることになる。会社組織というのは、そういうものなのだ。

 確かに、適材適所を追求する考え方からみると、成毛氏のいう役割分担のほうが効率的なのかもしれません。
 しかしながら、現実的には、そういった仕事のやり方を「一社員」の判断でやるのはやはり無理でしょう。勝手にやったときのリスクは(個人にとっても所属する組織にとっても)それなりのインパクトになるのが通常です。
 ひょっとすると日本マイクロソフト社ではできたのかもしれませんが、少なくとも多くの会社では難しいと思います。

 ただ、本書で挑戦的に訴えている成毛氏の想いは、ある意味、誠実な姿勢の表れであり、私自身単純に否定すべきではないと思います。

(p12より引用) 努力をすれば必ず報われる。
ムダな努力などない。
昔からよくいわれる精神論だ。
とりわけ一定の成功を収めた経営者などが嬉々としていう言葉である。
もうそろそろ、真実をいってもいい時期ではないか。
努力をしても必ず報われるわけではない。
ムダな努力はこの世にあふれている。

今の日本では、努力をしても報われないことがあるのだ、と。
・・・
誤解しないでほしいが、人生をあきらめろ、といいたいのではない。
むしろ逆だ。
自分の人生を生きろ、といいたいのだ。

 これが、本書を貫いている成毛氏一流のメッセージの本意です。



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